戦争
「なんだ面白くないな。こんどいつ行くんだ」
「数日後迎えに行くって言ってた」
ルーシーは化物の人的被害がゼロなので当てが外れてイライラしていた。しばらく遠巻きにしていた妖精も安全そうな雰囲気を察して黒帝の後ろ頭にしがみついた。
「黒帝、お前は活躍できたのか」
「うん、一発かましてやったよ」
「今度は見に行くか、なんで今回のは見にいかなかったんだっけ」
デリアが爆笑しながら。
「人族が殺されるのをニヤニヤしながら見ているのはマーラ様に不敬だ、とかなんとか思っていましたから」
「ソフィア様は見学しに来ていないのだろ」
黒帝はすこし考えてから、たぶん来ていない、と答えるとお菓子を食べた。
「じゃあ特等席で見学だ、血のような酒とオードブルを用意して出かけよう」
数日してボイスが迎えに来ると、ルーシー達も一緒に出掛けた。
「皇帝は寝てないのか」
「いえ、魔導団に抱えられながら飛んだ状態で寝ていました」
小高くなった場所に机と椅子を置き、テーブルクロスをしいてグラスを置いて酒を飲みながら見学していた。
「おお、黒帝を抱きかかえて皇帝が飛んで行くな」
「黒帝は飛ぶのが上手くないですからね」
「・・そうだったな、転移ばかりして飛行は教えてなかったか、帰ったら練習だな」
一回目同様一番最後を歩いてくる化物を雷撃して倒したが、その時、大きな地響きと共にけたたましい土埃が起きてルーシー達の机を吹き飛ばした。
「これはいい見世物だな、今度はベーゼル達も連れてこよう」
東の魔女の城では兵士たちが槍をクワにもちかえて耕作をはじめていた。東の魔女の後継者は楽しそうにミアと話していた。
「化物の亡骸をはいで土に加えるとやせていた土地がゆたかになりますね」
「本当はワラとかに混ぜて腐らせる方がいいらしいのですが、これでも見た目がまるで違いますね」
「雨も適時降ってくれるし」
「これはインバが降らしているらしいです、すごく便利です」
「さて、私は残っている敵の兵隊と戦ってきますよ」
「どうしても王様に忠誠を誓いたい馬鹿な騎士がいるんですね、ビックリですよ。頑張ってもほとんどを王様と貴族に持っていかれるのに」
「問答無用ですからね、自分に酔っているのがわかります。これはもうしょうがないです」
東の魔女の後継者は剣を持って闘技場にむかった。左の部屋を選んだ兵士たちに名誉の死を与えるために一対一の戦いの場を与えるためだ。
「まだ船が残っています、帰るなら後ろから刺したりしません。船に乗ってお帰り下さい。ここに残るなら私達と戦って死んでいただきます」
「クビをとらずに帰ることは出来ない、ここでお前のクビをとってやる」
「農耕をして平穏に暮らす道があるのに、死ぬことに意味などありませんよ。まだ間に合いますがどうしますか」
「うるさい、お前のクビを持って帰れば貴族になれるんだ、なぜ農奴などになるものか」
「奴隷ではなく自分の土地を持てるのですが、どうしてもと言うならしょうがありませんね」
何人かは船に乗って別の場所に行くと言って立ち去ったが、10人の兵士が戦いを希望した。
「剣の勝負でいいですね、魔法はいませんか」
「ああ剣でいい、魔法は大魔法士様達以外使ってはいけないから誰も知らん」
「では、はじめの者から」
大きな男が剣を振りかぶった瞬間、心臓を突き刺し、男は絶命した。
「わが国の土になりますよう。みなも無駄な死ではありませんから安心をしてください」
次々に男たちを倒し最後の一人になった。その男はおびえたふうもなく剣を抜いて言った。
「お前の腕がその程度と知って安心して死ぬことが出来る。我が師である剣士ならお前を簡単に倒すことができるだろう」
「その強い剣士は国で震えているのではありませんか」
「そのようなことはない、貴族は国の外に戦いにはいかんだけだ、国まで行って戦ってみるがいい」
「私は自分達の国を取り戻せればそれでよいので対岸の私達の城にでもいたら戦いますがそれ以外の場所にいたら会うことはないでしょう」
「臆病者が」
「ではあなたが帰って連れてきなさい、あるいは対岸の城にいるように言えばいい。あなたはその後で死になさい」
その剣士を船に乗せて王国に送り返した。一部始終を見ていた東の魔女は驚いたように
「あなたにそのような冒険心があるとは思いませんでした。相手の力量は分かりませんよ、もし強ければどうするのですか」
「私にもなぜああいったのか分かりません、短期間のうちにあまりにも大きなことが起きたから気持ちが高ぶっていたのかもしれません。ですが国を守るために戦わなければいけないと思いました」
「その騎士が私の知っている者なら本当に強い、魔法を使わなければ勝てないかもしれない。本来、対岸の城に来ている可能性はなかったかもしれないが、こうなってはお前と戦うために来ると思っていいでしょう。それに大魔法士、あの化物を作った者たちも我々に肥やしを与えたと知れば怒り狂うに違いない。何がしかの策を用意しているであろう」
「これ以上、帝国の皇帝様達のお世話になれませんから。自分たちの国を取り戻すのは私の手で行いたいのです」




