停滞
数カ月たって黒帝は花魔王を軽く始末できるようになっていた。
「ここはもういいだろ、花魔王は花畑の番人の役目もあるから絶滅させるわけにはいかない」
「では花畑の所有者に会いに行きますか」
「そうだな、黒帝は年齢的にも何もすることは無いが会いに行くとするか」
ルーシーとデリア、そして黒帝は花畑の中央にある修道院の建物の近くに転移した。
「ここはマーラ様の守護下で建物内に直接転移できないから覚えておけ」
黒帝はルーシーを見上げてうなずいた。建物の手前では市が開かれて花の蜜や様々な特産品が売られておりそれらを魔族の観光客が買い求めていた。そこに妖精が飛んできて黒帝のクビに足をからませて頭に抱き着いた。
「こくていちゃーん、とうとう大人の階段のぼるんだね、私が見届けてあげる」
「それはしないよ、それは魔族の儀式だし、年齢的にもできないよ」
「なんだ残念、そろそろ来るかと思って待っていたのに。私達で面倒見てもいいんだよ」
「マーラ様がお前の花畑ごと焼くぞ」
「えー、むしろ感謝されるはず、おたがい減りはしないし」
「ない」
妖精は頭に抱き着いたまま離れないのでそのまま建物の中に入って行った。
「やあ、ミア殿。今日はこちらでお勤めですか」
「ああ、ルーシー様にデリア様、それに黒帝くんと妖精?こんにちは。
黒帝くんの儀式はダメですよ。ソフィア様が良く思いません」
「心得ています、それで修道長はおられますか」
「今日はメイド会議なので修道長は忙しくしていますが、すぐここに来られます。デリア様は出席するために来られたのですよね」
「・・もちろんそうですよ」
「レイエとボイスが、デリア様がどこかに行かれた、と言ってかわりに来ていますが」
「なにかの手違いです」
デリアが苦笑いをしながらそういうと、修道長があらわれた。
「みなさんようこそおいでくださいました、魔族教会の修道長に就任しました、以前皇帝様の居城でメイド長をしておりましたマーシャです」
「修道長、ご無沙汰しております。今日は花の試練を通過した黒帝を連れて参りました」
「これはこれは、人族でこの試練を通過されるとは、お見事です。それで最後の花の試練はいかがなさいますか、ミアはやらないだろう、と言っていますが」
「そうですね、魔族の雄ならばあなたの眷族相手に雄らしいところを見せるでしょうが。なにぶんまだ幼いので無理かと」
「前の皇帝のようになっても困りますし、では祝福のみにしておきましょう」
修道長は黒帝を抱き上げると顔を近づけた。離れようとしない妖精と目が合った修道長は
「妖精さん、よろしいかしら」
「どうぞ、私は何万回としましたから」
「では遠慮なく」
ほほにキスをして黒帝をおろして頭をなでた。ミアは
「アスカム皇帝と同じ顔でくんずほぐれつを見せられるのは耐えられなので助かりました」
「その場にいるものは‘勇姿’を見なければならないのでしたっけ、私も見たくないですね」
ルーシーがそう言うとみな笑った。
「ところでメイド会議の議題はなんですか」
「暗黒大陸のメイドをどうするか、その先の王国にメイドがいないのでどうするか。ですね」
「東西南北の魔女は自分の領地から出たがらないので統一国家は無理なようですね、ネネ様のところはメイドをとってもいいと言っていましたが、積極的ではありません。候補はいるのですが男でして、執事ではダメなのですか」
「会議の時はここに来ることになりますね。ここは基本男子禁制ですが、まあ、特別許可してもいいでしょう」
「具体的に言うと龍族の青年でして、帝国の人族やネネ様の後継者ともうちとけたかと思ったのですが。王国で城に火を放って今どこにいるか分からないのです」
「まあ元気のいいこと、あそこの宰相と気が合うでしょう、ねえミアさん」
「龍族にしては自制心があるますね、王国はメイド云々の以前に貴族と奴隷の色分けしか出来ていない野蛮な国だからいっそ焼き尽くして滅ぼした方がいいのです」
「あなたはゴズ様とクリカラ様と気が合いそうです。インバさんのおかげでワイバーンを食べていたことが分かって消極的だった龍族がやる気になったと龍族のメイドから報告がありますが、しばらく出方を見ることになりそうですね」
ルーシーはデリアを会議に残して黒帝と妖精を連れて魔王城に帰った。
「ヴァレンティーナ殿が結婚出産となると、あと長くて2年だろうか。素質はあるが体の成長はどうしようも無いな、ベーセルのダンジョン試練をさっさと終わらせて、不在のモーの暗黒の試練をなんとかすれば、後はルシファーの残忍さはいらないだろう。幾つかはしょれるからなんとかなるか」
魔界では目が座っていた黒帝だが魔王城ではリラックスしてケリーと遊んでいる。残忍さの試練には黒帝はなかのいいケリーを殺さなければいけないが、殺し屋まではいいだろうと思って少し安心した。
数カ月後、ヴァレンティーナは結婚して新居に引っ越していた。ソフィアは勝手に決めた結婚相手とうまく行っているかどうか気がかりなのでそれとなく聞いてみた。
「一緒に生活してどうですか」
「はい、最初はお互いに初めてなのであまり要領が得なかったのですが、一度はまると悪くないなと」
「そうですか、気が合った、ってことですね」
「は、もちろんそうです。気が合わないとあんなことできません」
ソフィアは、これはすぐに子供が授かる、と思った。




