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皇帝とサキュバス  作者: テクマ
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停滞

一か月前、魔王城ではルーシーが頭を抱えていた。ソフィアから男児を預かって来たがどう手をつけていいのか分からなかった。


「どうする、デリア、人族に魔法を教えたことはあるか」

「ありません、教えてくれと言われたら殺しますよ」

「まあそうだよな、そうするよ。だがそれではダメなんだ今回は、うーん、どうする、魔族の魔法能力を植え付けるか、いや、それだと内部で女神の付与した魔法能力と喧嘩して死んでしまうかもしれん」

「こういうのは呪術にたけた長老たちが得意ですよ、やらせますか」

「いや、あいつらに頭を下げたくない、私が申し付かった仕事だ、わたしがやり遂げなければ意味がない」

「魔界の城から持って来た本を調べてもそれらしいのはありませんね。そもそも魔法の属性は決まっている前提ですから」

「どれも使い物にならんな、もっとなかったのか、わが父上は芸術家肌だから何も書物にしていないし、唯一あるのが、魔法を使った人族のおいしい食べ方、こんなもん役にたつか。

しかしこの子は楽しそうに走り回っているなぁ、ここは魔王城だぞ、恐れることを知らんのか、それにケリーもなついている。・・意外と魔法に差が無いのかもしれない」


  ルーシーは腹を決めた。男児を呼び寄せて、ケリーを浮かせてみせた。男児は驚きながら飛び上がって喜び、自分もやりたいと言った。


「浮いてくれと願え、そうだ、そして今度はケリーをおろしてあげるんだ」


  はじめはルーシーの魔力を男児を通して流してケリーをあやつり、そして徐々に男児に主導権を握らせた。


「うまくコントロールできているよ、これでいいんだな、うちらも小さいときこうやって遊んだよ」

「属性は魔族なら火ですがこの子はどうでしょうね、爆裂魔法はあるとしても火の延長ではなさそうですし、雷とか氷そして風に土ならまあ教えられますが、水だとエルフとか龍の得意分野になります」

「まあやってみるさ、あとは飛行魔法とできれば空間移動に魔法無効化の防御とあとなんだったかな」

「傀儡、虫使い、石化そして召喚系、ネクロマンサーなんてのもいましたね」

「石化はあいつの加護があるだろうから無理だろうし、まあいいや、あとはせいぜい強化系かな。これだけあれば後は自分でやりたいことを覚えられるだろう」

「一通り覚えたら実践ですね、魔界で適当な相手のいる場所を探しておきましょうか」

「ああ、頼むよ。いきなり強いのはダメだ、この子を即死させたら私達の命もない」

「はじめは動きの遅い地蟲ってところでしょう、殺すことに慣れさせないと。ところでこの子の名前はなんというのですか」

「知らないな、お前の名前はなんだい」

「・・・」

「無いみたいだな、忘れているのかもしれないが。ソフィア様も決めてないみたいだし、名が無いと呼ぶとき困る、皇帝に似ているが髪も目の色も黒いから、とりあえず黒帝こくていとでも呼んでおくか、お返しするときに名前の記憶を奪えばいい」

「いい名ですね、とても強そうだ」

「名に劣らぬ強い戦士に仕上げるさ」

「では奥義もさずけますか」

「黒帝の能力しだいだが、死龍の騎行でも授けるか、もしかするとエルフの、聖霊達の騎行と同時発動するかもしれない、そうなるともう何がなんだか分からんだろうな」


基本の魔法は1か月ほどでつかえるようになり、ルーシーとデリアは黒帝を連れて魔界の森に行くことにした。


「ここら辺に地蟲の巣があるはずですが」

「ああいるな、この臭い匂いは間違いないあいつだ」


ルーシーよりも一回り大きい虹色の芋虫がもそもそとはいずりながら花を食べていた。


「妖精たちが育てたお花畑を食い散らかす害虫だ、思う存分退治するといい」

「さあ、黒帝様、火の玉をあいつに向けて投げつけてください」


黒帝は手のひらに作った火の玉を地蟲にやさしく投げつけた。火の玉は地蟲にあたってはじけ飛んだ。


「おおいいぞ、嫌がっている。もっと強く投げつけると風穴があいて殺すことができる」


今度はおもいっきり投げつけた。


「ハハハッ、いいぞ貫通した。だがこういうのは中心でとめるのも覚えておいたほうがいい」


  ルーシーは小さめの火の玉を作って瀕死の地蟲に投げつけた。火の玉は地蟲の中にとどまり沸騰して地蟲は爆発した。


「ああ、よく子供のころやったな、懐かしい」

「私は斬りきざんでましたね」

「ハハハッ、デリアらしいな」


そこに妖精が飛んで来てルーシーの肩にとまってささやきかけた。


「ルーシー様にデリア様が来てくれたのですね、ここの地蟲はこれだけじゃありません、なんとかしてください」

「この子、黒帝が退治してくれる、地蟲のいるところに案内してあげるといい。いま色んな魔法を試したがっているから。お礼はキスをこの子にしてあげてくれ」

「まあそれでいいのですか、私達が何千何万としてさしあげますとも」 


  黒帝が顔を真っ赤にして下を向いているとルーシーが


「こういう殺し方もあるぞ、まず土属性の魔法でグランドスピアを作って地蟲を串刺しにして動けなくする、次に氷魔法で冷凍すると地蟲は節の部分でちょん切れるんだ、これで棒にささった大きな氷菓子が出来上がる。だが食べちゃダメだぞ、まずいからな」


黒帝は楽しみながら魔法を学んでいった。


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