オアシス
暗黒大陸には多くの冒険者たちがギルドの依頼を受けて化物を討伐に来ていた。海岸側の砂漠では冒険者グループのイントロンが化物を探していた。
「ありゃなんだ、化物の群れかなんかか」
「なんだろう、幻獣の群れじゃないかな。だとすると我々には危害を加えないが」
群れの中から一頭が冒険者たちにむかって走り寄って来た。
「おい、安全なんだよな」
「危害を加えないはずだ、こちらに危害を加える意思が無ければだが」
身の丈よりも大きな幻獣は冒険者たちの顔に自分の顔を近づけてじっと眺めながら、匂いを嗅いで、何かを納得したように群れに帰って行った。
「リーシャ、見るからに冒険者ですよ、調べる必要はないでしょう」
「人を食って高い知能を得て人に化けている可能性があります。用心にこしたことはありません」
「しかし、この幻獣の数は」
「用心にこしたことはありません」
「・・そろそろですかね、ここら辺から岩石砂漠になるようです、この先に本体がいるはずなので徒歩で行きましょう」
「うまく岩に隠れているのでしょう、まあ化物は草を食べないから岩場に隠れなくともいいのですが、用心にこしたことはない、と言ったところでしょう」
リーシャは大型の幻獣をリュックにしまい、かわりに蛇や鷹に似た幻獣をたくさん取り出した。
「さあ先頭に立って化物を退治しなさい」
蛇は岩の間をすり抜けて見えなくなった。鷹は上空から地上を見ながら化物を探した。しばらく歩くと、蛇が化物に巻き付いて絞め殺していた。
「やっぱり待ち伏せしていたようね、用心しておいてよかった」
蛇が捕らえた獲物をリーシャのもとへ持ってくると。
「やめてちょうだい、持ってこなくていいから、ペッ、して、ペッって」
蛇は、化物を投げ捨てるとまた先頭に立って進んでいった。
「いやあ、楽ですね、鷹も化物を狩っているようですし」
「でしょ、でもちょっと心配ですね」
リーシャはさらに幻獣をとり出した。
「・・いや、まあいいか。ところで雰囲気が変わりましたね、植物のような匂いがしませんか」
「うん、これはさっきの薔薇にも似た匂い」
岩の後ろにサボテンのような多肉植物の群生地があった。腰の高さほどの多肉植物に薔薇のような花が咲いておりしゃべりだした。
「本当に来るとはな、なんという行動力だよ」
「あなたが本体なの、どうなの」
「ああ俺が本体だ、お前がエルフだから教えたんだ、この場所は黙っていてくれよ」
「もちろんよ、それであなたの種族はこの大陸だけにいるの?」
「ああ、俺が知っているのはここだけだから、俺たちだけだ」
「なんでそう言えるのかしら」
「よそにあれば根を伸ばして情報を共有するためにつながるからだ」
「本当かしら」
「ここにある株をどこかに置けば数日から数カ月で根がつながって瞬時に知識の共有が出来る」
「へえ、この株を」
リーシャの目が光った。
「でもそんなすぐに情報伝達できるのかしら、ちょっと信じられないわよ、ねえサーシャ」
「信じないのか、あそこの株は1か月まえに風で飛ばされた株だよ、浜辺にいるお前の兄弟に伝えたいことはあるか」
「とりあえず兄の名前をきいてもらえるかしら」
「ああいいぞ・・ガイルだ、ガイル・アスカムそして花をペシペシするのをやめるように言うがいいな」
「もちろん。ついでに沖にいる海の龍の名前はなにかしら」
「・・ウズだ、どうだ」
「まあ信じてもいいでしょう。でも海は超えられないようね、これがあなた達の限界かしら」
「そんなことは無い、ただ誰も株を持って行かないだけだ。結界を張る前は王国の連中が海の向こうに持って行って連絡に使っていたぞ」
「ちょっと信じられないな、まあ試せばわかるんだろうけど」
「ああ、それじゃあ・・」
「サーシャ、株を3っつ袋に入れなさい」
「俺はまだ何も、まあいいが、すぐ花が咲くからそれの言うとおりに管理してくれよ」
「ええ分かったわ、土でいいのね砂じゃなくて」
「はじめは砂で水はいらない、日の当たるところに植えておけばそのうち花が咲く」
「すみませんねリーシャはせっかちで、ヘヘヘッ」
「まあいいさ数万年ぶりかな、俺も外を見たかった。そうだ王城にまだ生きてる株がある、誰か呼んでみるか」
「おい、おい、そこの男女」
「ん、ああ、海岸にあった薔薇に似た花か、なんか用か」
「リーシャが皇帝がいたらかわれと言っている」
「何言ってるかわからんが、リーシャ殿は初代皇帝の母親のエルフだったか。ああ、皇帝様だ、この花がリーシャ殿であなた様と話したいそうです」
「ああ、つながっているんだっけ、なんか聞いたような気がする。それでリーシャ殿はどこにいるんだ。
サーシャと一緒に暗黒大陸の岩場か、迎えに行こうか、こっちにはまだ何も無いけど、と伝えてくれ」
「いらないそうだ、すぐ帰国して俺を植えるってよ。お前らも株を持って帰って植えろと言ってる」
「えーと、つまり電話だな、この横にある小さいのを持って帰ればいいのか。分かったよ、と伝えてくれ」
「もういないわ、それじゃあな」
「そうか、元気そうでなによりだ」




