オアシス
帆船は風の魔法を動力に進んでいく、どんな荒波をもものともせず、そのはずだったが。
「べた凪だな、ネネ様のご機嫌しだいで、常時3mでご機嫌斜めなら10m越えのはずだから、かなりご機嫌がいいってことか」
「ヴァレンティーナ様、本当の帆船なら遭難です、動きがとれなくて」
「そうだな、ドワーフの技はすぐれている。
しかしこのべた凪のなかでも酔うやつは酔うんだな。
インバ殿大丈夫か、すこし水を飲むといい、のだったかな、ブリジッドの情報だからあまり信じちゃダメか。まあすぐ慣れるさ、平衡感覚がすぐれていると酔うとか言うから、ああ、これもブリジッドの情報か。金が絡まないといい加減だからな」
「いやあ、大丈夫、親父に2発ぐらい殴られたときのように吐き気がして目が回っているだけだ」
「そうか、厳しく育てられたのだな。むこう側につくまでの辛抱だ、まあ海の苦しみだよ。ハハハッ」
そういいながらヴァレンティーナはインバに気付かれないように酔い止めの魔法を試してみた。見た目、楽になったような気がするが、効き目の方がはっきりとは分からなかった。龍にはきかないのかな。
一番心配していた幼女は元気に走り回っている。海の神に愛されているのだろう。
「先ほどから探しているのだが、ゴズ殿はどこかにいるのかな」
「ゴズ様は我々がネネ様と手を結んだ段階でこれにかかわらないと決めたようです」
「つまり、喧嘩がしたかっただけか」
インバの状態も良くなったので快適なクルーズをしながら料理を食べるのが楽しみになっていた。ある日、遠くにカルブディスが見えると言うので見てみると何かと戦っているようであった。
「ガイル殿かな、我々ではとてもではないがあのような巨大な化け物とは戦えないな」
7日目のこと。
「おーい陸が見えるぞ」
ドワーフの船員がマストの上で叫ぶと皆が甲板に出て遠くを眺めた。
「ん~世界は丸いから下からだとなかなか見えないんだったか。これはブリジッドじゃなく宰相殿だったか。・・おお見えたぞ陸だ」
インバは我慢できずに翼を生やして陸にむけて飛び立ったかが途中結界にふれて海に叩き落された。助けあげられたインバは
「すまない、まさかここまで結界が強いとは・・、皇帝殿はホントに飛んでこられるのだろうか」
「まあ、大丈夫なんだろう、あの人は人知を超えているから。しかし海はネネ殿が操作しているようだが上空は大陸側の何かかな、あまり歓迎されていないようだ」
沖に船を停泊させてドアーフ達にまかせてヴァレンティーナ達は小舟で砂浜に降り立った。そこは何もない砂浜でところどころに薔薇のような花が咲いているだけであったが。しかし突然
「貴様ら何しに来た」
薔薇が話しかけてきた。
「我々は、海の向こうにある国の使者で、こちらに国があったら友好関係をむすんで交流をしたいと考えている」
「エルフとか魔族ではないのか。それならすでに交流する意思がないことを伝えているはずだが」
「我々はそれとは別の国だ、国があるなら国王にお目通り願いたい」
「そんなものは無い、帰れ」
「国が無いならここは我々が所有しようか、さっそく測量をはじめよう」
「なにを言っているのだ、ここには所有者がいる、帰れ」
「その所有者に合わせてくれ、国があるなら特に何かする気はない」
薔薇はしばらく考えているようだったが
「ああ、お前らあいつの仲間か、あっちに行け、内陸にむかって歩いて10分ほどだ」
「そのあいつとは誰だ、私達を知っているのか」
「それはどうかは知らんが、あいつも同じことを言っていた」
ヴァレンティーナは内陸にむかって砂漠の中を10分ほど歩いて行くと砂嵐の中に人影が見えた。
「数人いるようにも見えるが、一人ではないのか・・いや一人か」
「やあ、早い到着だったね、ネネ様に感謝しなければ」
「皇帝様ですか、もしやソフィア様もいらっしゃったのでは」
「ソフィアもいるように見えたのか、ヴァレンティーナは目がいいね、でもいないよ」
今日は皆を集めてここでキャンプすることにした。テントを張ろうとしたが皇帝の創造魔法でトンネルが出来ていたのでその中で一晩すごすことになった。インバの作った食事をとりながら、一人増えているね、と言って幼女を抱き上げると、名前は、と問いかけたが。レイが
「この子は答えません、ネネ様もおっしゃいませんでした」
「なにかあるのかな、このような子供に旅をさせるのも気になる。しかしこの子はインバの料理が好きなのだな、ものすごくおいしそうに食べている」
「はい、肉が好きそうですね、龍は調理のレパートリーがすごく広いようです」
インバは褒められてまんざらでもなさそうであった。この幼女もインバになついていた。常にレイとヴィオラかインバの間を行ったり来たりしていた。皇帝は
「今日はここに泊まって、あすはトンネルの中を歩いて行こう、外を歩くよりもかなりましだ。時間も短縮できる」




