彼岸
「・・と占い師に言われたのだが」
翌日、ヴァレンティーナは神官長に引き出してもらうよう頼んだ。
「前から小ぶりなのがあるのは知っていましたが、なんですかこれ大きく肥大していますよ。城下に魔王級の魔法を使う魔族がいると噂がありますが、そのおじいさんが・・、まさかね」
「引き出して大丈夫ですか。うまく使えるとも思えないのであやしければそのままでいいのですが」
「属性をつければなんとか、まあ今でも悪意は感じないのですが。聖俗性では神官のような治癒や医療系が得意なのでそっちなら安全性も高いのでどうですか。それでも余るでしょうから防御に振り分けるとか・・」
「それはいいですね、それでお願いします」
「ですが寂しくなりますね、これであなたがケガをしてここに来ることもなくなるでしょう」
そういうと神官長は片膝をついて平伏したヴァレンティーナの頭に手をかざし金色の光を浴びせた。
「終わりましたか・・何も変化を感じませんが」
「もともとあるので変化は感じないかと。発動条件は願うことですね、治癒したい、あるいは治癒させたい。損傷の疑念のある場所を特定したいときは心のなかで問いかけると教えてくれるでしょう」
半信半疑のままソフィアのところに行くと
「ああ、ヴァレンティーナ、あなた街で占い師に会いましたね、まあいいのですが、何かと絡んで来ようとするのはなあ、でも神官長はいい選択をしてくれました。アルバンさんの不敗の剣を身にまとったようなものですよ、どんどん剣のうでがあがると思います」
「はあ、分かりますか」
「ただ、発動条件があるので即死や気絶級の損傷があるとそこで退場です、願うことが出来ないので・・・
あ、ヴァレンティーナおはようございます。いらしていたのですね気付きませんでした」
「・・・」
ヴァレンティーナは試しに、肘の古傷よ治れ、と願ってみた。そもそもほとんど治っているのであまり変化を感じない。使うような状態にならないのが最善だな、そう思った。遠征用の支度をしてその日は家に帰った。
「ラキア、なにか体に悪いところとか無いか」
「最近、腰が痛いかな」
「おまえ成人してないのにばあさんみたいに・・あ、すまん、ちょっと治してやろう」
「また何かへんな魔法もどき覚えてきたんじゃないでしょうね」
「終わったぞ、どうだぐあいは」
「んー言われてみれば良くなったような」
「もっと何かないのか、悪いところは」
「無いな成人してないので」
「・・ところで最近行く部署行く部署で、おまえがアルバン殿と付き合っているのか、と聞かれるんだが」
「おねえちゃんには関係ないでしょ」
「そうなんだが、姉としていわしてもらうと、節度を持って付き合いなさい」
「うそだ、いま言い負かされたから言ってるだけだ、そもそも何回か食事しただけだし」
「ふふぅ~ん、私の聞きたかったこととはちょっと違うが、まあいい、そうか食事したのか」
「おねえちゃんはやく結婚しなさいよ、あとがつかえてるんだから」
「そこまで話が進展しているのか。安心しろ、わたしは剣と結ばれているのだよ、さっさと先に行くがよい妹よ」
「グググググッ」
「そ、そうだ何か困ったことがあると街の占い師にたのむといい、ソフィア様からもらったお菓子をあげるとかなりいろいろやってくれる、だぶんソフィア様のファンだ」
何もなかったかのように出立の日が来た。
「長かったような短かったような休みだったが、さてとむこう側の大陸に向けて出発するか」
「当初のメンバーから2名加わります、インバ殿とネネ様のところから一人」
レイが報告すると、ヴァレンティーナは
「インバ殿をよく口説き落としたな、かなり戦力があがる」
「料理長がメインでどうしようもなくなったら戦うそうです。向こう側は障壁が強くて行けなかったから行きたい、とのことです」
「そうか、でネネ殿のところの一名というのは」
「ネネ様から連れて行った方があとあと災難を回避できるだろうと」
「あの宰相どのか」
「そこを走り回っている幼女です」
また幼女か、とヴァレンティーナは思った。
「えっと、化物なのか」
「その子供は人族です」
そこにはネネがいた。
「でもまあ100年後には化物になってますが、どこかでそうしないと生きていけないので」
「そうでしょうな。しかし船旅とか大陸についた後も砂漠を歩かないといけないし耐えられるとは思えませんが」
「そのへんの耐性をつける魔法は使えるので大丈夫ですよ、それに強い治癒魔法がつかえる人もいるようですし」
「では断る理由もありませんが、従者は何人つけますか」
「その子だけです」
「治癒魔法は神官殿が、あれ神官殿はいずこに」
「今回は異教徒の地なので正式な神官は帯同しません、かわりに冒険者が加わります」
そう話すレイの後ろのすこし離れたところに曙光のメンバーとそのレンとハナが大きく手を振っていた。
「たのしい旅になりそうだ」
ヴァレンティーナはそうつぶやいたがネネがクビを振って城の方に帰って行った。




