彼岸
帝国の要求を受け入れたエイドでは城の前で正式調印の儀式を行うことになり儀式用のテントを設営していた。エイドに訪れていた皇帝と宰相は準備が整うのを待っていた。そこにネネが近寄って行った。
「お初にお目にかかります、皇帝様。エイドの女王、ネネともうします」
「初めまして、アスカムの皇帝でありますアスカム9世です、ネネ様よろしくお願いします」
テントの中に用意した祭壇の上でお互い契約書に目を通して書面にサインと印を押してお互いに保存した。剣と魔法の世界ではあまり意味がないのかもしれないがこれが区切りになるのかもしれない。
「皇帝様、先日友人のルーシー様からあなたが考案したというお菓子をいただきました。ものすごくおいしかったのですがあれはどこかの国の特産品なのですか」
「あれは私が転生する前の記憶をたどって作ってみました、たしかシホンケーキだったと思いますが、転生前の母とよく作ったように感じています」
「転生なさったのですか、それは初代皇帝の根源が経験したということでしょうか」
「はい、そうなります。私はその時女性だったようです、どうも女神が慌てて前の記憶をよく洗浄しなかったので覚えているようです」
「それは面白いですね、他に覚えていることはあるのですか、異世界におられたのですよね」
「今帝都で行っている経済政策を勉強していたと思うのですが、それを帝都で行うと民が今以上に豊かになるはずなのですよ」
「民を豊かにしてどうするのですか、浪費して働かなくなって金がなくなるとまた働くだけですが」
「なにか生きがいを見つけてもらうのですよ、豊かになってできた時間を有効に使ってそれがまた人生を意義あるものにするのです」
「人生とは新しい概念ですね、虫けらのように生まれてのたれ死ぬだけなのが、戦争もせずに暇な時間を有効に使うことで種族の長やその従者のような死生観を持つということでしょうか」
「まあそこまで行かなくとも近いことが出来れば、みな幸福になるのでは、と言うことです」
「それを広めるために海をわたるのですか、それならばあなたはがっかりするかもしれませんね」
「それはどういうことですか、何か知っているのなら・・」
「見てみればわかると思います、
私はあなた達がこの海を安全に渡ることを約束しただけです、その先のことまではどうなるかしりません」
「それは興味深いですね、ぜひとも行ってみたいです」
ネネは、あなたは変わった人だ、と心で思ったが少し期待しているところもった。
「彼岸に行って戻って来た時のあなたの感想が聞きたいですね、ぜひこの城に立ち寄ってください」
その時の再開を約束した。
ハイエ宰相はヴァレンティーナ達とあって報告を聞いた後、短剣をかえしてもらった。
「もう使わないのかい、これは優秀だよ」
「いや、何かにつけて抜こうと思ったのですがそのたびに何がしかの助けがあってなんとかなったのでいらないかな、と」
「そうかい、まあ賢者だから戦闘の役にはあまりたたないとは思うが。それに私はいま皇帝様の指導のもと国の経済システムを構築しているから抜くきかいがないんだが」
そういうと宰相は短剣を抜いてみた。
「・・・」
「何も言わないね、あんなにおしゃべりだったのに。死んだのかな」
「生きてるよ、いや、ん、まあ、生きてる」
「短剣だからな、生きてるとか死んでるってのもへんだろうけど。それで、これから海の向こうに行くんだが何か情報はあるかい」
「海岸からずっと砂漠だな」
「その向こうは」
「砂漠だ」
「さらにその向こうは」
「・・覚えてないんだ、何かあった気がするが、記憶があいまいだ、何かの魔法かもしれない」
「ふーん、でもまあ生きて帰ってこれるんだ。安心した」
はい、と言ってまたヴァレンティーナ達に渡した。道案内だ、かの地での成功をお祈りしている。
「まだ海の向こうに行く命令を受けていませんが」
「そうかそれでは忘れてくれ」
そのあとヴァレンティーナ達は皇帝から海の向こうに行く命令を受け取った。
「心配しないでくれ、ウズ達にも護衛を依頼しているからそれほど怖いことは起きないと思うよ。私もみんながむこうに岸についたころ行こうと思っている、ボディガードぐらいにはなるよ、たぶん」
かえって責任が増したな、そう思っているとボイスが
「自分も行き先がわかっていたら転移できますが、レイたちも飛んで・・」
「いや、乗って行ってくれ、船旅もいいもんだ。それに何か結界のようなものがあるかもしれない、そうすると破るにはかなりのエネルギーが必要になる」
ボイスはソフィアかウズから何か聞いているのかなと思って黙って言うことを聞いた。
「とにかく船が無いとはじまらない、造船をエルフ達の仲間であるドワーフにたのんだので出来あがるまでしばらく休暇をとってのんびりしてくれ」
ヴァレンティーナ達はそれぞれの行きたい場所に行くことにした。




