魔族
神官長は猫を抱き上げて、うちの子にならない、と言ったが答えるはずもなくヴァレンティーナの痛みを食べ続けた。痛みをとることにかけては何よりも優秀なので手に入れたくなったのだ。ヴァレンティーナは神官長のヒールでおおかた治っていた、あとは視力が回復するまで待つのみであった。ソフィアのメイドは、しっぽが2本になっているから痛みもかなりひいているはずです、というと。ヴァレンティーナは少し酔っぱらっているようなろれつの回らない口調で、今しかできないことってなんかないれしょうかね、と言った。前向きに何かしたいような気分になったようだ。神官長は、心眼を開くちゃんすだ、と酔っぱらいに言うように適当なことを言ったがヴァレンティーナは本気になって意識の集中に努めた。
ソフィアはアスカムの民に歓待されヴァレンティーナの傷も問題なく治りそうだと聞いて緊張の糸が切れた。すこしぼうっとしてからアスカムに来て何をするかを具体的に考えてなかったことに気付いた。カーサもそうだがラアラとリオニそしてラキアも何をしていいのか分からない。ラキアはヴァレンティーナの世話をすると言って神官の塔に行ったが姉が神官たちから至れり尽くせりの介抱をされている姿を見てすぐに帰って来た。ラアラは、素振りでもするか、と言って剣の素振りをはじめたのでリオニとラキアそしてカーサもはじめた。
ソフィアは、はたと先代の皇帝とお后様に挨拶しなければならないことに気付いたのでメイドに面会の予約を取ってもらった。お后様の面会はすぐに可能との返事をいただき部屋にむかった。
「初めまして、トリア王国の第三王女、ソフィアと申します。このたびは婚姻前に・・」
お后様は言葉をさえぎるように、自分の座ているソファーの隣の席を手のひらでポンポンと叩いて、ここに座りなさい、と言った。お后様はお茶とお菓子を進めてソフィアの目を覗き込むように
「ここは女しか入れない男子禁制だから大丈夫・・アスカムは例外的に入れますが魅了の魔力は通じないので気にしなくていいし、通じたとしてもあなたの魔力なら問題ないですが」
と言ってソフィアのメガネをはずして
「綺麗な目をしていますね、私も昔そうでしたがそのうち自分で抑制できるようになるから気にしなくていいですよ、それにここのメイドの8割はメガネですから。
ここでは何か分からなかったらメイド長のマーシャに聞きなさい、そしてその通りにしていれば大丈夫です。
私に聞いてもいいのですが結局マーシャに聞きますから。
それと、ミアはアスカムの腹違いの姉でアスカム担当のメイドをしていますから仲良くしてくださいね。レイとヴィオラも腹違いの姉でミアの補助をしていますから。おかしくおもうかもしれないけどメイドも含めて他にも27人はアスカムの兄弟がいるので驚かないでくさいね」
ソフィアはだいたい聞いていたので驚かずにすんだ。そして続けて
「私は家事もできないし学が無いのでアスカムには愛情を注ぐことしかできませんでしたからはたから見たら溺愛しているようにしか見えないかもしれませんが、これしかないので目をつむってくださいね。
あとは・・先代皇帝様とは会わないように、どうしても会うときは一対一では会わないように。あなたが聞いていたであろう醜い噂はほぼ事実だと思ってください。
アスカムはまだ幼いのもあるでしょうが女性のように女性にはそっけないのでその時はあなたが積極的になってください。アスカムに関しては噂の半分は間違いです」
お后様は一方的に喋って一息ついてお茶を飲んだ。ソフィアは自分の取り扱い説明書を読み上げようかと思ったが、お后様は、あなたのことは急ぐことはないのでまたお茶の時にでも聞かせてくださいと言って、世間話をはじめた。
夜も更けて、ルーシーとメイドのデリアは布団に入って眠りにつきそうになっていた。ルーシーは
「ここのご飯はおいしい。調理担当の少女をもらって行くことはできないか頼んでみましょうか」
デリアは、マーシャさんのコレクションだから無理です、と言った。ルーシーはでは作り方を覚えてくれと言うと、ほぼ完璧です、と答えた。その時二人だけに何かキーンと甲高い音かあるいは強い気配のようなものが聞こえた。ルーシーはやれやれと言った感じで
「やっと来ましたか、魔王様からの召喚状。しかしこれはまた古臭い呪文ですね、誰も応じないのでは」
デリアは目を細めて様子をうかがっていたが
「いくつかの根源が召喚陣に移動していますね、ルーシー様はいかがなさいます」
ルーシーは寝間着から普段着に着替えをはじめて
「私だけで行ってくるよ、デリアはお留守番を頼みます。遅くともあしたの朝食には帰りたいな、オークの燻製と卵を焼いたやつを食べたいからね」
そう言って召喚陣の近くに転移した。
ルーシーは召喚に従うのではなく近くに転移して召喚陣の様子を観察した。召喚者と2人の魔術師が魔法陣を前に何かつぶやいており、一通りの儀式が終わると一人の魔術師が
「禁呪詠唱の結果どうなるか責任をもてません、金はいりません私達はここを離れます」
そういうとその場を去ろうとしたが、召喚者の前に数体の魔族が姿を現した。




