魔王
牢屋に入れられたヴァレンティーナはカーサととりとめのないはなしをしていた
「結局牢屋に入れられたな、魔王カーサよ」
ふざけた感じで言ったが、カーサは
「悪い予感は当たるんだな、ラアラの楽観論は予想どおりはずしたのはいいとして。リオニは・・どうだっけ」
ヴァレンティーナは、リオニはシカトしてた、と言ってベッドに横になった。すると隣の牢にいる女たちが話しかけてきた。
「お~い、騎士さんたち何やらかしたんだいお姉さんが慰めてやろうか」
そう言って、ヒャハハハッ、と笑った。
「よく見なくともわかるだろ、俺たちは女だぞ、そっちのけもない」
そういうとカーサも横になった。別の女が身を乗り出して
「ああわかるとも、コソ泥のバランとスリのカーサだろ」
二人は身を乗り出して女を見て言った
「逃げ足は速いブリジッドか、お前なにしてるんだ、逃げ足だけは速かったのに」
三人は大笑いしてブリジッドが
「美人局で捕まったのさ、相手が法務局のお偉いさんだったからしつこく追い回されたんだよ。でもま、お前らと入れ替わりだ、3日後には出所だよ。しかしバランがヴァレンティーナとは貴族みたいだな」
ヴァレンティーナはバツが悪そうに
「バランは男みたいだからって前のお妃様がつけてくれたんだ。お妃様から庶民的な名前なんて出てくるわけがない。まあ気に入っているよ。お前も女神みたいな名前だろ。お前も逃げ出さずに教育受けとけばよかったのに」
ブリジッドは、私にぴったりの家庭的な名前だ、と言って笑った。別の女が
「ブリジッドの友達かよ、しかし、おまえらまずいことになっているよ、城の外ではサタニストとか魔王とか言われてる。なかには火あぶりにしろとか、まともじゃない。で実際魔王なのか」
カーサは、魔王ならとっくに牢屋ぶち壊して逃げ出してるよ、そう言うとまた寝転がった。
また三人で昔話をしていたが、法務局の審問官が調書をとる、と言ってヴァレンティーナを呼び出した。しばらくすると獄卒に両脇を抱えられて顔を腫らしたヴァレンティーナが帰って来た。審問官はカーサに、何か思い出したらいつでも言え、と言って去って行った。ヴァレンティーナはカーサに近づき小声で
「はめられた、法務局は前の宰相の直属だ、なんとか宰相の罪を私らに着せようと躍起になっている。街に噂を流したのもあいつらだろう。お前は拷問に耐性がつくよう訓練されているから私を痛めつけて都合のいい証言をとろうとしている。あいつらは気に入らない答えなら最終的に私達を殺して調書を捏造すればいいと思っている」
カーサは小さくうなずいた。隣の牢屋からは
「お前らマジでやばいよ、あのサディストどもに目をつけられたら、殴られるだけじゃすまないよ」
その夜、牢屋の健康管理に来ていたトリアの神官がヴァレンティーナの傷をいやしながら
「これはやりすぎです、アスカムのセレスト様から宰相に疑惑があることはうかがっています。あなた達を聖騎士隊で引き取れるか聞いてみます」
しかし悪魔の疑いをかけられたものを引き取るともっとひどい結果を出さなければならいと、これは却下された。そしてソフィアと今の宰相に相談した。
次の日も連れ出されたヴァレンティーナは殴られて戻された。神官は傷を癒しながら逃がすので耐えてくれとしか言えなかった。ブリジッドは、せっかく会えたのになんなんだあの糞宰相、と言った。
その次の日は爪をむしり取られて帰って来た。その夜、神官とフードをかぶったメイドが二人来た。神官が癒しているあいだメイドの一人が語り掛けた
「この子が帰って来たのでしばらく抱いていてください苦痛がやわらぐはずです。それで・・姫様は土地になじむために婚礼前にアスカムに向かうことになりました。あなた達、ヴァレンティーナ、カーサ、ラアラ、リオニ、ラキアは姫様と共にアスカムに行くことになりました。普通なら国に貢献した騎士を連れて行くことは国の損失になりますから行くことはありませんが、いま世論の醸成につとめていますから、なんとしても生き延びてください」
そういうとメイドは猫をあずけた。神官は
「私達では限界がありますが、セレスト様に皇帝様はおなかに開いた穴を修復することができますから、たとえどんな目にあわされても希望を失わずに耐えてください」
ブリジッドは、いつまでかかるんだよ、といい、あたしは明日ここを出るからこう言いふらしてやるよ
「変態皇帝の婚約者のサキュバス王女が魔王とその配下をつれて帝国をぶっ壊しに行きたいらしい、これは厄介払いにちょうどいいから早く行けって言ってやれ、ってね」
ブリジッドのタンカにヴァレンティーナとカーサは言葉をのんだ瞬間、メイドは
「それはいい考えですね、効果的ですぜひお願いします、ソフィア様もお喜びになるでしょう」
次の日、ブリジッドは出所すると早速酒場で言って回った。普通なら不敬罪で捕まりそうだが何事もなく一気に広がった。町は、さっさと出ていけ、の声一色になった。
その日もヴァレンティーナは呼び出されて目をつぶされて帰って来た。
城の告知板に、今晩ソフィア第三王女は供の者数名を連れてアスカムに婚礼のため出立する、と張り紙が一枚出た。




