魔王
ハーフエルフはちっさい鍋に豆とか根菜を入れて煮はじめた。アルバンは遠火で干し魚をあぶって少しいい感じになって来たところで、ハーフエルフが
「かわいいワンちゃん、よしよしこっちおいで、豆のスープをあげるよ」
手招きするとこっちに来た、アルバンはちょっと見て魚を見たが2度見した
「黒いモフモフのちっさなかわいい犬だが、・・ケルベロスだろこれ」
ハーフエルフは分かってないな、と言った感じで
「ケルベロスは頭が3個、この子は2個だからケルベロスではないですよ。・・これはケルベロス以外の何か」
地獄の番犬って感じはない。何かの番犬だとしたら・・まだ守られる側の番犬だ。アルバンも干し魚の切れ端をやると喜んで食べていた。匂いにつられてきたのだろう。頭やおなかをなぜたりしてキャッキャ喜んでいるので棒っきれを投げて遊んでやろうと思って振りかぶるとそこに銀色の髪をした少女が立っていた。少女はこちらを心配そうな顔で見ながら、アルバンの目を見て
「うちの子がご迷惑をかけてごめんなさい、ちゃんとご飯を食べさせているのですが」
そういって頭をさげた。ハーフエルフは少女をこちらに招き入れて豆のスープを分けてあげて
「この廃墟に一人で住んでいるんですか。トカゲぐらいしかいないでしょ。たまには豆もいいのでは」
この少女はルーシーで子犬はケリー、この魔王の城に住んでいるそうだ。少女は自分達が住んでいる部屋で何かごちそうしたいと言った。しかしながらアルバンは人が来るのを待っているから行けないというと
「城の外からここまで来るには少し時間がかかるから大丈夫、それに来たら声がするからわかります」
そういうので焚火の後を残して少女の後ろをついて行った。
少女が住んでいる区画は光が差し込んでいて綺麗に掃除されている、回廊から見える中庭には花が咲いている。少女はおもむろに
「アルバンさんが持っている魔剣は、不敗の剣、ですね。魔王城の中で見つけたのですか」
アルバンは皇帝のダンジョンでもらったというと、少女は楽しそうに
「そうでしょうね、私はいろんなところを探しましたがたいしたものはありませんでした。この城にも地下があってダンジョンのようになっているので今度行ってみようと思っています」
皇帝のダンジョンのように龍が住んでいるのかきいてみると少女は、正確には分からないが皇帝の城は魔王の城と似ているから生きていたら龍が住んでいるかもと言った。クビが2つある犬は大きくなるとクビが3個になるがケルベロスにはならないそうだ。アルバンは
「いろいろと詳しいですね、碑文か何か見つけたんですか」
少女は、亡くなった父から聞きました、と言った。
魔王城には冒険者がたくさん来ているがこのような子供がいるとは聞いたことがない。まがりくねった通路をケリーが先導して部屋の中に入っていった。部屋の中は綺麗なソファーのある応接室になっている、そこにメガネをかけたメイドが一人いてお茶を入れて待ち構えていた。ルーシーはお茶をすすめると自分も一口飲んだ。そこでアルバンは、あなた達は何者なのですか、と質問した
「普段は人族と会うことはないのですが、エーリッヒの名を持つアルバンさんとアスカムの血を継ぐエルフさんがおいでになったのですからお目にかからねばなりません、それにお願いもありますし。私達の家族は魔王様がお隠れになった後この城を管理しています。人族には別の場所を公開していますのでこの場所をしらないのです」
ルーシーは別の場所の映像を机の上に映して見せた。合流予定の魔導士と冒険者を連れた妖精がウロウロしながら二人を探しているのが見える。いるはずの二人がいないので妖精は冒険者に小突かれているようである。
そしてもう一つ、地下の映像では数人の魔法使いが魔物を作り出しているようにみえた。ルーシーは
「この者たちは以前トリアで作り出した方法で魔物を作り出しております、おそらく人族相手に魔族が戦争を仕掛けるように見せかけて魔物をけしかけるのではないでしょうか。こちらで駆除したほうがよいのでしょうが父がいないので散らばった戦力を集めるのがたいへんでして、それに私達の存在を公にすると騒ぎ出す人族がいるでしょうし、そうなると私達と魔物を作り出しているものが仲間だと思われるとまた人族つまり皇帝と戦わなければなりません、できれば人族で処理してほしいのですが、いかがですか」
すでに自分達では処理できないことをさとったアルバンは
「突然の申し出だから持ち帰って皇帝の判断をあおがなければ兵を出せないが受けることになるだろう。それで魔王はまだ生まれていないのか、生まれていたら魔王を旗頭に魔族があつまるのでは」
試しにそう聞いてみた。
「魔王様は生まれていたとしても人族として生まれその生活に満足していたらそのまま天寿をまっとうしてしまいます。あなた達はそれがよろしいのでは、私達も魔王様が幸せならばそれでいいのですよ」




