魔王
「いや~~道に迷いましたね」
ハーフエルフはニヤニヤしながらアルバンを見た。アルバンは慣れたもので、ああそのようだ、と呟いてまわりを見て何かランドマーク的なものが無いか探した。数日前にエーリッヒ将軍から魔王城の様子を見て来てくれないかと便りがあったのでショートカットして魔王城に向かっているのだが森の中で完全に道に迷ったようだ。水も食料もあるのであまり焦ってはいないが魔王城の外で魔導団が派遣した計測師達と魔王城に行ったことのある冒険者と落ち合うことになっているのであまり待たせては悪いな、と言ったところである。アルバンは目を細めて遠くにみえる塔を指さして
「あれ、あれって魔王城じゃないかな。わからんけど、とりあえずあそこまで行ってみよう」
ハーフエルフも塔の方を見て言った
「あれって2日前もあの位置にありませんでしたっけ、ちょっと見る角度が変わっているだけでは」
そうかもしれない、だが塔にたどりつかないと話にならない。アルバンはハーフエルフにダメもとで聞いてみた
「おまえって精霊の声を聞くために肉絶ちしているだろ、そろそろいけるんじゃないかな、精霊に聞いてみてくれないか」
苦笑いしながらハーフエルフは困った感じで言った
「まだろくな精霊と話せませんよ、生臭な精霊だから何も知りませんよ」
アルバンはいいから聞いてくれと言ったらしぶしぶ精霊に話しかけた。話している相手は見た目おっさんの妖精であることはアルバンにもうっすら見えた。確かにかなり俗な感じがする、おとぎ話に出てくるような美しい妖精ではないのは確かだ。とは言え精霊ではある。ハーフエルフは肉を食べる前は普通に精霊と話すことが出来たので見た目の評価が厳しいだけかもしれないと思っていたのだが
「やっぱりお前は俺の言葉を聞けるんじゃないか、とお怒りなのですが。まあ2日前からハエのようにまとわりついて、すでにお前たちは魔王城の敷地に入っている、だの、ここはラビリンスだ、とか言っていたのですが。酒場によくいる酔っぱらいのおっさんと同じですよ、とりとめのないことを繰り返し言っているだけです」
いやいや、結構いいこと言っているじゃないか、試しに抜け出す方法を聞いてもらった。
「タダでは教えないそうです、やっぱりダメでしょ。まあようするに知らないのですよね」
そう言ってハーフエルフが笑うと今度は妖精と喧嘩をはじめた。アルバンが半分あきらめると、
「教えてやる、そうです。このおっさん妖精は顔真っ赤にして言っていますよ」
ハーフエルフはナイフを手に持って本気で切り付けているがひらりとかわされているのが分かる。関係は最悪でさらに惑わされそうだがここにいてもしょうがないのでついていくことにした。
妖精はこの森に長年住んでいたが魔王が敗れてからラビリンスがここまでしつこく惑わすことは無かったと言っていた。何かを隠したいのかもしれない。妖精はラビリンスから出たいのか魔王城の中に入りたいのか聞いて来たので、中に入りたい、と言ったら地下から中に通じる扉に案内してくれた。その扉から入って暗い通路を歩いて行った。しばらく歩くと天井の高い広い空間に出た。妖精はここが魔王城の中だと言った。何もないのは冒険者とか泥棒が宝物とかを持ち出したからで、天井が高いのは魔王が巨大だったからだと言っていた。今でも魔王はいないそうだ、だが妖精は魔王を倒した勇者の気配が増したと言っている。おそらくハーフエルフが勇者である初代皇帝の子供だからだろう。もしくは私の魂とか根源が置き換わったからかもしれないが、それがトリガーになるのだろうか。とりあえず外で我々を待っているのであろう魔導士と冒険者を連れて来てくれないかと妖精に頼むと、タダではだめだ、と言ったので何が欲しいのか聞いてみると。お前が持っている干し魚がほしい、と言ったので渡す約束をして連れて来てもらうことにした。
「しかし妖精も肉食うんだな、魔物に近いのかもしれない」
アルバンは天井を見まわしながら言うとハーフエルフは
「あの程度なら肉食ってても見えますよ、あなたにも気配が分かったでしょ。いちいち相手にすると調子にのるから無視しているだけです。私は精霊弓が使えるようになりたいので肉絶ちをして強く純粋な精霊と話できるようになりたいのです」
確かに一日中酒場で飲んだくれたおやじに話しかけられるのはつらいが、伝説の精霊弓を使えるようになったとして純粋な精霊がうるさく話しかけてきたらどうするのだろう。しばらく歩き回っていると確かに何もない、玉座っぽいところもホコリをかぶっていて座った後も無い。足跡は結構あるが人族の靴のあとだから魔物の痕跡もない。こうなるとラビリンスが活発になっているのは魔王復活の兆候なのか迷う。他にもたくさん部屋があるようだがとりあえずご飯をとるために火を焚いて干し魚をあぶって妖精が魔導士と冒険者を連れてくるのを待つことにした。




