魔王
魔王といっても酒ではない、そんなことを思いつく前世の私は子供ではないと思う。焼酎に詳しい子供なんていない。あいかわらず私は前世のことが思い出せないがこういったことはちょっと思い出す、干物を火であぶるとうまい、なんて知識があるが思いだすのは食欲に関することだけだ。そんな私に初代皇帝の時代を思い出せと言われてもなおさらである。
だからわざわざ知らせに魔導団長の家まで来た神官長のヒントを聞いても何もひねり出すことができない。そこで私はウソをつくことにした、続きをたのむ、とベーゼルに言ってやろう。聞きようによってはウソではない、何についてか言って無いから。
魔導団長の熱烈指導のおかげで魔力のコントロールはなんとかわかって来た。ただし免許皆伝とまでは行ってない、あいかわらず飛行魔法は禁止だ、どこかに飛んで行ってしまうかもしれないからだ。海の底とか火山の溶岩の中とか、あるいはスピードをだしすぎて大気との摩擦で燃え尽きてしまうかもしれない。実力はほとんどだしていない、だから最終日まで魔導士見習いの子達には皇帝と悟られることもなかった。メイドたちともフレンドリーだし、魔導団長にもみんなと同じように接してほしいと言っておいたのでせいぜい貴族の子弟ぐらいに考えられていたのかもしれない。そう思っていたのだがお別れの時に、皇帝陛下さようなら、と言われた。この子たちもいずれ魔導団に入って皇帝として会うことになるのではじめから知らされていたのである。私の出来が悪いからと言って蹴とばすと後でまずいことになるしね。そして馬車に乗って帰ることになった。馬車の中では魔導団長の話になった。ヴィオラが
「アーシアさんと魔導団長はいつごろご結婚されるのですか」
ミアはさらりと
「私が成人するまで待っているのだと思います。私はもう家もでているしミラもアーシアになついているようなので気にせず結婚すればいいのですが。
わたしが告白したからでしょうかね、血がつながってないのでかまわないと思っていたのですが」
ヴィオラが驚きながら
「告白ですか、魔導団長に。・・それならミアさんが結婚するまで無いかもしれませんね」
空気が重い。以前ミアが、思っている人がいる、って言っていたのは魔導団長だったのか、しかも現在進行形だったな。こんな重い恋バナに耐えられない私は
「トリアの王はどうかな、宰相が押していたし、10数年なんてあっというまだよ」
ミアは、王が適齢期になるまで私の歳が止まるならお受けします、と言ってすっぱり断った。そんな魔法はないのでどうしようもない。ウズの言う通りまわりがなんとかしないといけない子のような気がしてきた。メイドは男子禁制なので出会いは無いのではと心配になったので、ヴィオラは誰かいるのか聞いてみた
「私は成人になってメガネが必要なくなったらその時好きな男を魅了して結婚することにします。みなそうしているみたいですし」
そうだメイドにはこの力があるのだった。ただミアみたいに思いが重いと、やはりこれは要注意だ。まあマーシャとも話あってみよう。
居城に帰るとベーゼルに会いに行った。そして例の言葉を・・いう前にベーゼルが
「お前は何も思い出せない顔をしているな、まあ分かったよ、やるよ、神官長と話した時に魔王が復活するまで、しないかもしれないが、何かやることが無いかと思っていたのだ。それにここで殺されるとタイミングがずれるかもしれない」
オークやミノタウロスの原種がいるそうだ。馬とか豚と同じで草とか残飯で生育させることができる。なによりも性格がおとなしくて人族でも扱うことができるそうだ。だから魔界に捕りに行ってくると言った。うまいこと言って逃げ出すような気がしたが、聖剣の前ではマーシャに取り押さえられるほど無力になるので大丈夫だろうと思い宰相も納得したので、行ってもらうことにした。私は思い出したので
「ダンジョンに剣を忘れていないか、あれはお前のだろ、持っていくか」
そういうと、剣は帰ってくるまで預かってくれ、といった。今の所有権はウズにあるような気がするが私は、わかった、と言った。そもそも魔界は剣なしで行けるのか、まあもやもやは残るがそういうならと送り出すことにした。
城の周辺では力が出せないので魔界への門が出せないとのことなので人のいない地帯まで行って解放した。そうすると、数週間ほどで帰るから飼育できる建物を建てておいてくれと、言って霧の中に消えていった。
転生前の食に関する記憶が残っている私の感じたことを初代の皇帝は実行に移そうとしていたのだな。初代皇帝も転生者なのかもしれない。
私達は魔王の復活について話あった。現時点では魔導士も魔王の復活を感知できないし、神官の中にも感じるものはいない、騎士団に冒険者も噂を聞かないと報告があった。私は防衛策として奴隷市場で子供の売買の禁止を徹底させた。マーシャにも町に行ったさい気にしてみてもらうことにした。私は魔王と友達になりたいと思っていた。これはおそらく初代の皇帝も同じ思いだったのではないだろうか。
そして魔王城のあった場所に予兆がないかどうか確認するため冒険者を派遣することした。




