少年皇帝
ウズはご機嫌だった、食べた魔物のレベルは低かった、だがそう思っていたが一匹だけ強いのが混じっていたようだ。取り上げた武器の中に炎を発する剣があったからだ、これは上位の魔物が所有する。食べた覚えはないのだがおそらく大量に落ちてきたときに腹におさまったのだろう。仮に暴れたとしても子供たちでもなんとかなったかもしれないがそんな感じはなかった。そうはなしたところ
「あ~、マーシャ様が上に一匹来たって言っていましたね、私が頼んでいた通路が閉じてなかったから、マーシャ様がとりおさえてどこかに閉じ込めているはず」
トリアに帰って、魚を仕入れにダンジョンに来たミアがそういうと、ウズが
「それかもな、でも城内に行って何もないはずがない、主力はトリアに出陣していたのだし、そもそもマーシャにとりおさえられることは無いだろう」
あれはまた別の魔物だろうと結論してミアは居城に戻った。その魔物だが、中級ぐらいの魔物で、だが知性はあるようだ。この魔物は神官の塔の地下牢に閉じ込めてハイエ宰相が尋問を行っていた。どうやって生まれたのか、魔界から来たのなら魔王は復活しているのか等々を聞き出すためであるが、なかなか喋ってくれないようだ。
私は連日魔法の特訓に剣の素振り、そして座学にはげんでいた。主な内容は魔法の制御とリーシャ達から返してもらった聖剣をふれるようになるための鍛錬、そして聖剣関係の知識をもっとつけることである。と言っても剣はもっとも軽い木刀をふっているだけではあるが。聖剣は前の神官長にかけられた呪いをとくためにさやから抜いたままになっている。様々な呪いをとく効果があるのでぬいたままでもいいとガイルは言っていたが、たまにおもいだしたように神々しく光るのでメイドたちから眩しいのでさやにおさめてくれと言われていた。ただガイルに手伝ってもらってぬいたときよりもさらに重くなっており動かすのも重労働なので布をかけておいた。
ある日、城の外へ社会見学に行くことになった。マーシャの引率で城下の市場で物の価値や人々の生活を実際に見るのが目的である。目立たぬように4人乗りの馬車にマーシャとミアそして私が乗って最低限の騎士を引き連れていった。路地裏に馬車をとめてフードを着て外に出た。蚤の市のような市場には物があふれており、食料品もふんだんにある。パン等は穀物の栽培を奨励しているので価格が安い、野菜などもふんだんにある、ただ肉は狩猟に頼っているので量も少なく値段も高かった。ミアが
「ここで魚が売れるといいですよね、大儲けできますよ」
これを実現するにはダンジョン以外にも魚の捕れるダンジョンを作らなければならない、つまり初代皇帝が使ったダンジョン創造の魔法を習得しなければいけないのだが、ミアはそうしてくれと言っているのであろう。それに牧畜は馬の飼育はしているのでなんとかなりそうな気がする。しかし豚味のオークが人に近い形をしているし狂暴なので飼育は難しそうだ。何か考えないと。
色々と見て歩いていると、フードをかぶった小さな子供がパンを盗んで走って行った。ミアは棍棒を持って追っていく男に代金を払って、マーシャは子供を追って路地裏に入って行った。私とミアも後を追って路地裏に入って行った、しばらく歩くと立てかけた板の裏に子供が背中を向けてパンをむさぼるように食べているのが見えた。マーシャは気付かすに奥まで行ったが戻ってきた。私が板をどけて子供を抱き上げると子供はおなかがすいていたのかずっと食べ続けていた。子供は女の子で壊れかけたメガネをかけていた。ミアが
「そのパンは私達が買い取りました、あなたのパンです、ゆっくり食べていいのですよ」
そういうと子供はすこし食べる速度を落としたが食べ続けた。マーシャは、親はいるのですか、そう聞くと、子供は首を横に振った、そしてマーシャが
「一緒に来なさい、仕事をすればご飯を食べさせてあげます、・・かまいませんよね」
そういって私の顔をみたので、うなずいた、メイドの雇用はマーシャの権限で決まる。子供もうなずいたので一緒に馬車に乗せて城に戻ることにした。マーシャの膝の上に座った子供はパンを食べきった。私はメガネがずり落ちそうなので曲がったフレームを調整してあげようとはずした。そうすると子供が両手で自分の顔を覆った。マーシャが
「男の人を裸眼で見ないようにしているのです、あなた様に影響がないことを知らないのです。この力があることを大人に知られるとさらわれて闇の奴隷商や娼館に売られるのですよ。初代の皇帝様がこれを禁止して私達を保護したのです、・・私達はあなた様にもそれを継続してほしいのです」
私はそれを継続することを約束した。これは遺伝しないようだが、かつてサキュバスと呼ばれてさげすさまれてきた歴史を逆戻りさせないように、保護することを約束した皇帝にメイドとして忠誠を誓っているのだろう。マーシャの表情がいつもよりも柔らかくなったような気がした。




