少年皇帝
陣地に入ってしばらくするとアルバンに面会を希望する女性が現れたのでアルバンは会ってみることにした。
「置いていかないでくださいよー、かなり本気でダッシュしたんですよ」
ハーフエルフだった。空飛ぶ魔物を撃退したときに冒険者に混じって歓声をあげていたので見落とされたのだ。アルバンも皇帝を担いで走るのに気をとられて忘れていた。
「おお、冒険者とはもうお別れしたのか、え、外まで来ている、そうか、とりあえず中に入って休め、みんないるから」
なんとかごまかせた。
宰相と魔導団長がトリア城に潜入した兵士を救出する方法について話あっていた。緊急をようするので到着が遅れている騎士団は計画から外し魔導団で行うことになった。アスマス軍15人にトリア軍は20人ぐらいを救出することになる。騎士団のかわりに前面から攻撃を仕掛けてほしいのだがトリアはあまり協力的ではない、そもそもアスマス軍は冒険者として潜り込んだが身分を明かしてトリアの宰相から正式に依頼されている、そして侵入した通路から戻るはずだったが通路が壊れて帰ることが出来なくなったのだから協力的になってもらいたい。ハイエ宰相は怒り気味に
「全部うちでやればいい、見事にやってのけてやる、そもそも触媒をつぶしたのも皇帝だ、統治権を我々によこすように交渉してくる」
魔導団長は、今から交渉しては時間がかかるので現実的ではないと言ったがおさまらない。
「こんなセコイ方法でこっちをはめたと思うとは馬鹿すぎる、アスマスが知らんと言えば困るのは向うだぞ、こっちには皇帝殺害を企てた証拠がある、トリアを攻め滅ぼす錦の御旗があるし、その戦力がある」
魔導団長は頭を抱えて言った、その短剣に聞いてみたらどうだい。頭に血がのぼっている宰相は冷静になるまでの時間まで聞くのもいいだろうと短剣を抜いた。短剣は
「お前は短気なのがいけないな、俺が素晴らしいアイデアを出したとして使う気があるのか。
まあいい、この状態で攻城戦をやらないで人を助け出すのは難しい。しかしお前たちは表面的にものを見すぎだよ、こうまで見事に通路がつぶされているんだ、脳筋の皇帝が触媒をつぶした時にすべての通路がつぶれたって可能性は完全に否定されないが、誰かが意図的につぶしと考えるのが自然だよ。まあつぶれたら開ければいいが王城に入った通路にはまだ何かあるかもしれない、ならば別の通路から出ればいいさ、つぶす必要のなかった」
宰相は、少し考えて
「城の後ろは崖になっているが・・崖の下にゴミを落とすような扉がある、そこは確か残っているから飛行魔法を使える魔導士で連れて帰ってくればいいのか。うんいい案だ、頭に血がのぼっていなければ考えついていたが、まあ、ありがとう」
魔導団長は持ち駒の数を数えていた。トリアにはもう飛行魔法を使える魔導士はいないから諸侯に声をかけて4人ほど飛行魔法が使える魔導士が集まったので、こちらから31人出すことにした。こちらの戦力を前方に集中させていることをはっきりと見せるためにハーフエルフの魔弓と皇帝によるエネルギー弾の攻撃を派手に行うことにした。そして火球の魔法を使える魔導士と冒険者を総動員して門に攻撃を仕掛けるように手配した。
トリア城の裏側ではメイドたちが姫をぶらさげて下まで運べないかと工夫していた。飛行できる魔物はもうほとんど見ないので長時間吊り下げていられるがまだ安全性に確信が得られずにいた。そこにアスマス軍の魔導団長がゆっくりと近づいていった。メイドたちは驚きつつも素早く中に引き入れた。アスマス軍の兵士とラキアそしてメイドたちと打ち合わせをしたのち魔導団長は第四王女と猫を連れて帰った。ソフィアは自分が離脱すると第四王女の救出を後回しにすると思ったので先に行かせた。ハイエ宰相は
「まいったな、まだ姫様がのこっているのか。姫様の安全を考えると1回で済む計画から2回に分けたほうがいい、前線の騎士達は2回目まで救助出来ない、持ち場を離れたときにこちらが裏で逃げているのに感づかれてしまうとまずい」
そう言うと、短剣が笑いながら
「その姫様は最後まで動かないだろ、自分が逃げたあとで前線の騎士たちが個々に逃げられるわけでもないし、誰も助けに行かないかもしれない」
救出作戦を実行すると、予想通りソフィアの番になると騎士たちと行くと言って譲らなかった。そしてラキアも、私は護衛ですから、と言って5人が残った。ハイエ宰相は、前線の騎士が逃げるときがカギで、何か大きな仕掛けが必要だと考えていた。
2回目の救出隊が到着したとき防衛線はかなり押し込まれて乱戦になっていた。私が騎士団長と扉から入って
「ネックレスつけているのですね」
と声をかけ、扉の近くまで手を引っ張って行って私と一緒に縄で縛った。ソフィアは
「初めまして、よろしくお願いします・・こんな危ないところに来るのですね」
私より少し背が高いソフィアの肩越しに前線を見ながら
「うちは皇帝使いが荒いのです」
そういうとソフィアは笑った。魔導団長がエネルギー弾を撃ち、魔物がすこし後退したところで
「お前らこっちに全力で走ってこい、そして私達にかまわず扉から飛べ、イケメン魔導士が受け止めてやる」
ラキアは前線のヴァレンティーナ達とともに後ろに走った。ラオラは、疲れ切った表情だが私を見ると笑いながら
「ほら俺の言ったとおりだ、最後はこうなるんだよ、皇帝万歳だ」
ヴァレンティーナは目がいってしまっており
「おもしれえ、行くぞ、死ぬほど飛べ、ラキアアアア」
リオニが冷静に
「扉の外は崖だぞ、おまえら頭いっちまってるな、まあいつも通りか」
私たちの横を通り過ぎるとき私の背中をたたいて4人はためらうことなく飛び降りた。そこを空中で待機していた魔導士が抱きかかえた。ラキアとリオニは大柄なので少し沈んだがうまく飛び立つことが出来た。同時に私達も魔導団長に小脇に抱えられて空中に飛び立とうとしていた、後ろ向きの私は飛びついてきた魔物たちに対してエネルギー弾を放った。爆風と共にドアから空中に放り出されたが魔導団長に抱えられながら飛んでいた。




