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皇帝とサキュバス  作者: テクマ
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初陣で戦死した少年皇帝を蘇らせたサキュバス、根源が入れ替わっていることにうすうす気づきながらも見守ることにした。

「あなたは誰ですか?」


メイド長のマーシャが言った。


戦いは掃討戦に入り楽観的なムードが漂っていた、将軍達は私と共に勝利の喜びを分かち合いたいのだが、メイド長が面会を止めていた。部屋にはマーシャと神官のセレスト、そして私の三人のみ残されていた。


私は体が痺れてベッドの上に横になりぐったりしていたので意識が無いと判断したマーシャは再度その言葉をセレストに投げかけた。


「私の知っている皇帝閣下ではありません」


  セレストは私を見ていたが意を決したようにマーシャに向き直りしっかり目を見て言った。


「天使様が間違うはずがありません、私は人界と天界の狭間まで行き天使様に皇帝陛下の魂を返して頂くよう頼みました、そして渡された魂を持って帰ってきたのです」


  セレストは神官なので嘘はつかない、天使様も間違っていない、そこにいた私が証明できる。


  すこし詳しく言うと天使様は間違ったのではなく、すでに漂白され自我を失った皇帝の魂ではなく、たまたま彷徨っていた私の魂を渡したのだ。ここにいる誰も間違っていない、マーシャも正しいのだ、私は皇帝ではない。ただ天使様は信仰心が篤いセレストの願いを聞き入れたかったのかもしれない、そして天使様にとって魂はそれほど重要ではないのだろう。


マーシャは納得できない様子であった。


「皇帝陛下はもっと私たちメイドに粗暴な態度、そして淫らな視線を浴びせる方です。しかしこの皇帝閣下は私達に気づかいすらしようとします。それでは違うのです、まったく違うのです」


  何を言っているのでしょう、わかりません、どんな視線ならそう見えるのでしょうか、セクハラではないのでしょうか、でもそれが良いのだろうか、マーシャさんはいったいどんな皇帝をお望みなのでしょう。


セレストは達観したように言った。


「ここにいる皇帝陛下は天使様の加護を受けています。ご自分で脇腹を修復されたあとで立ち上がって戦われました。あれは皇帝閣下の力だけではありません、天使様の導きによるものです。私には光の導きが見えました」


  セレストはマーシャの言葉を否定しなかった。そして続けた


「あなた達はこのような皇帝になるように努力されていたのでしょう? 違いますか」


マーシャはセレストの最後の言葉に少し納得したようで、議論をやめ微笑んで言った。



「世代を超えた私たちの願いが叶うのかもしれない、だとしたら私たちも天使様を信仰しなければならない」



  二人は少し沈黙したのち、マーシャはメイド長の仕事に戻り、メイドたちを部屋に入れ私の世話を命じた。セレストも神官として配下の神官たちに負傷した兵士の治療を命じた。




  メイドたちは私に栄養を取らせようと懸命だった。特にミアは私の横でもりもり食べて嚙み砕き、それをスプーンで私の口に運んでくれた。ものすごく恥ずかしいのだが、この世界では当たり前なのだろう、それに断ると悪いような気がした。なんと言ってもそれしか栄養を取る方法が無い、栄養剤の点滴など出来ない世界だ。


「次はフルーツです、メロンとバナナに乳で作りますね」


  うん、すごく甘い。

  

「最後にお茶を・・、 ふーっ ふーっ、ずず~」


  燕とかペンギンの雛がこんな感じだったな、人として終わってしまいそうだ。お茶ぐらいは自分で飲もう。


「練習したいので自分でカップを持っていいかな」


「神官様が明日いっぱい手を使わない方がいい、とのことですから・・、お口を開けてください」


  あー、確かにスプーンは使えないからこうなるよね。明後日からは自分で食べられるのだし、まあしょうがないな。

  ミアは私が死にかけていた時に呼び戻すために名前を呼び続けていたメイドだ。あの時とは異なり常にほがらかで癒される前髪をそろえたメガネっ子である。見た感じメイド長に次ぐ次長であり、私の専属のようである。私の変化には気づいてないのか、あるいはケガの影響ぐらいに思っているように見える。素朴な質問をしてみた。


「私が死にかけていた時に覆いかぶさっていた神官の子たちは何をしていたのかな」


「魂が抜けないように押さえつけながらお祈りをしていました。ですが抜けたのを感じたので泣き出したのです。そこでセレスト様が取り戻しに天に行かれたのですよ。でも天におられて良かった、大人になると地の底に行く場合があるそうで、そうなるとセレスト様ではお助けすることが出来ないそうです」


  地の底に行った場合誰が助けてくれるのか聞いてみた。


「その場合は魔族会のシャーマンかあるいはメイド長かさらに上位の前の皇帝のお后様、つりあなた様のお母様が行くことになるかもしれませんが転落者は魂が汚れている場合が多く持ち帰れないそうです」


  裏側の話をさらっと言ってしまうのですね。ミアも行けるのだろうか。


「私はまだまだ未熟者ですので、修行中です」


  笑って喋っているが修行して行けるものなのだな。これって前の私なら当然教えてもらっていることのような気がする。ミアは私が何者か織り込んでいるのかもしれない。



諸侯を主力とした後から出立した隊が到着し、掃討戦は完了した。簡単にだが将軍達と面会して功績をねぎらい、帝都に帰還することになった。


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