魔物の帰還
遅れて到着した冒険者が入ってきた。
「えっ、えっ、こうてーーい!?」
と言い切る前にアルバンがハーフエルフの口を押えた。
「どうしてこんなところに・・いるのですか」
まわりにいる冒険者が口々に
「この顔は良いが使いものにならないハーフエロフを従えているのはアルバンだろ、アルバンにちげえねえ」
「ああ、エロ皇帝の居城にいるエロ龍をワンパンで倒してエロ龍の魔剣を奪ってきたアルバンだ」
噂なんてこんなもんだ。私は
「トリアの触媒を壊しに行くのだ」
と小声で言ったら、アルバンとハーフエルフも一緒に行くことになった。明日早く出るので早めに寝ることにした。ミアとレイに挟まれて寝る体制に入ると、神官長は
「皇帝陛下はまだ子供ですね、私がかわってもいいのですよ、私の子供ですから」
そう言って笑っていた。ハーフエルフは
「私は、まだ、その、とぎ、は経験がありませんので、ですがどうしてもとおっしゃるのであれば、へへへっ」
と言っていたが、アルバンとはやい見張りについた。
翌朝早く宿を出立した、ハーフエルフが近道を知っているとのことなので不安だったがついて行った。道は険しかったが昼過ぎにはトリアの城を遠くに見下ろせる丘の上に来た。何組かの冒険者が戦況を眺めていた。
王城のまわりを王様の軍隊がかこんでいて王城に突入しようと試みているがうまく行って無い。それを囲むように諸侯の軍隊が配置しており魔法の結界を張っていた。
ハーフエルフは城の方を眺めながら
「ここから半日ですね」
到着は夜中か、そう思っていると城の左側が轟音と共に煙があがった。近くで見ていた冒険者が集まってきて言った
「おお、今日二度目だな、魔物の発生源を爆破したかな」
探索系に優れたミアとレイが、首を振りながら
「触媒までとどいていませんね、威力が小さすぎますよ、・・あなた様ならここから届きますよ、ここまで浸食されていますから王城には誰もいないでしょうし、ちょっとはずれても問題ないでしょう」
神官長もうなずきながら
「王城の右側にあるのが神殿です、王城とは別の場所にあるのですよ。たしか王城から神殿までは地下通路があって儀式が行われるさいそこを使って移動するのです。すでに移動しているでしょう。あそこには聖騎士隊もいますし、魔物は神殿を嫌いますから、避難するならあそこですね」
人がいないならまあいいか、撃ってみることにした。
「うーーん、距離があるので難しいな、小さめのを撃ってみるか、・・どうだい」
遠くでパンという破裂音が聞こえた。レイが眉間にしわを寄せて
「あぁ、王城が少し壊れました、もう少し左ですね」
人はいないのだよね。焦りながら少し左にずらして
「よしこんどこそ、・・今度こそどうだい」
ミアが嬉しそうに
「そこですね、触媒の魔力反応も揺らぎました、全力でお願いします」
よし行くぞ、私は全魔力、の半分ぐらいを撃ちはなった。どうも城ごと吹き飛ばしそうなので、少し遠慮した。
トリアの城内は戦場になっていた。ヴァレンティーナは激しい口調で
「なぜまだ姫たちがここにいるのか、王と妃と王子は神殿に避難しているぞ」
ソフィアと第四王女が避難している部屋の前でメイドたちが口々に
「先ほどの爆発で神殿に通じる道がふさがりました、いま別のルートを探しています、お待ちください」
「まだ調理場から搬入路に道が確保出来るかもしれません」
階下で防衛線を維持しているリオニが叫んだ
「ミノがすり抜けたぞ、ヴァレンティーナ、そいつ嘆きの井戸を飛び越えやがった」
ミノタウロスがこちらに向かって走ってくる
「ラキア、お前ら下がってろ、槍隊前へ」
槍ふすまに突進したミノタウロスは槍を受けながら兵士を振りたおしつつ前に出る、そこをヴァレンティーナは頭から真っ二つに割った。
「槍隊、次に備えろ。まだまだ来るぞ」
吹き飛ばされた兵士に向かって言った。予想よりはやく中位の魔物が出てきたので兵士は怯えだしていた。それを察したヴァレンティーナは
「お前ら腹くくれ、私と一緒に死ねるのだ、こんな嬉しいことは無いだろ」
兵士たちは大笑いした。
ソフィアと第四王女は並んで座っていた。部屋の前では怒号が飛び交い死闘を繰り広げているのがわかる。これまで我慢していた第四王女が泣き出したので、ソフィアは抱いていた猫を渡して言った
「その子は不安や痛みを食べてくれる幻獣だから抱いていなさい、私にはこれがあるので大丈夫です」
そう言ってアスマスからもらったネックレスを握りしめた。




