魔物の帰還
アスカムではトリア城の魔物の増加が許容できる状態を超えるのは時間の問題だと報告されていた。意図的かどうかの議論はともかく最悪の場合、魔王の復活まで視野に入れ軍隊を国境付近まで進めることにした。トリアには友軍として進軍することを告げたが領内への立ち入りは断固として拒絶された。現状を打開するためアスカムの魔導団を派遣するとも申し出たが拒絶された。
自業自得では済まない状態なので冒険者登録のあるアスカムの騎士団と魔導団の兵士を送り込むことにした。戦争商人以外はほとんど逃げ出しているが近隣諸国の冒険者はトリアに流れ込んでいたので目立たないからだ。またトリアでは冒険者の魔法使いを集めているので、城に潜り込めるかもしれない。宰相は人選について
「剣士と魔法使いにヒーラーをコアに目立たないように人員を振り分けて5組作りましょう、その中に魔法解体の出来る魔導団所属の魔法士を入れておけばいい、誰か入り込めば仲間を呼ぶと言って全員を集めたらいい」
最悪の場合を想定して6組目も作ることにした、剣士と魔法士にヒーラーとその子供という設定で、剣士にミア、魔法士にレイとヴィオラ、ヒーラーに神官長、そしてその子供が私、といった見た目ポンコツ組である。実際はダンジョンでもらった魔剣を持ったミアが最強のチート剣士で、レイとヴィオラは魔導団見習いから皇帝警護としてメイドに派遣されたバリバリの魔法士。神官長は子供がいてもよさそうな落ち着きから選ばれたヒーラーのエキスパートである。私は神官長の子供なので冒険者登録はいらないし、魔物を生み出している場所を吹き飛ばすだけの役割である。冒険者の登録は即席のパーティであることをごまかせる範囲で古くした。レイとヴィオラは
「皆様のお供が出来て光栄です。腕が鳴りますよ、まだ魔物と交戦したことがないので」
と、嬉しそうである。だがミアは、やはりこんな剣はダンジョンに置いてくればよかったんだ、と何度もつぶやいていた。神官長はというと
「神官長に就任してこういった荒事は出来ないとあきらめていましたが、冒険者時代を思い出して頑張りますね。ただ私の年齢なら皇帝様ぐらいの子供はいませんけどね」
結構乗り気であった。私達はトリア城から徒歩で3日ほどの場所で降ろされてそこから徒歩で向かうことにした。ミアは
「メイドには騎士団から来た子もいるのですよ、それに私はどちらかと言うと魔導士よりの属性なのです、騎士団からメイドに来た子はがっかりしていますよ」
ヴィオラはしかたないな、と言った感じで
「ミア様は技術を学ぶために魔導団に入団されていませんし、いくらポテンシャルが高くとも魔法使いはダメですよ、それに剣についてはウズ様に選ばれた英雄級の逸材ですから」
納得してない感じのミアにたいしてレイが付け加える
「魔法使いは基礎が出来てないとすぐにバレてしまいますから、その点、剣術は勢いで何とかなります。特に魔剣を所有していれば、抜けるか抜けないか、これだけで腕が判断されますので誰にも分かりませんし、実際振り回しているだけでそこら辺の剣豪に勝てますよ」
なんとか納得した、ように見える、ミアは魔剣を抜いては振り回す練習をはじめた。神官長は外の空気を楽しんでいるようで余裕がある。冒険者時代はエーリッヒ将軍と魔導団長とパーティを組んでいたそうだ、まあ強者の余裕だね。アルバンのように旅にでるのは普通にあるみたいで、そこで仲間を作ったり経験を積むようだ。私はと言うとまだ人のいるところで魔法は使えないし空を飛ぶことも禁止されている。そんな理由で魔物が生み出されている残骸をえぐるように破壊するだけでいいと宰相から言われているがそこまで行くのがかなり難しい。私が魔力を自由に扱えて空を飛べたらトリア城まで不可視化状態で誰にも狙撃されずに安全に飛んで行って爆撃して帰ってきて終わるのだが。まあ、私にしか出来ないことなのでしょうがないが、やはり皇帝使いが荒いな。
歩く行程に慣れていないからみな疲れたが、ミアは毎日ダンジョンの魚を担いで荷揚げしていたので楽勝と言った感じだ。一日目は宿が開いていたのでそこで泊まることが出来た。よくある感じの木造の宿だ、宿のおやじは戦争だの魔物だのと噂があるので冒険者ぐらいしか客がいないと嘆いていた。この先は宿もやってないからここで沢山買っていくといい、と言っていたが値段が通常の3倍はするようだ。5人一緒の部屋にしたら宿のおやじから、坊主がうらやましい、と言われ肩をたたかれた。食堂で食事をしていると冒険者から、坊主そこかわれ、と言って笑われるし、自分が子供なのを痛感した。
トリアから逃げてきた商人が、これは秘密にされているが王城では魔物が湧いて出ていて総がかりで退治しているが手に負えなくなるのは時間の問題だろう、と話していた。支援要請してくれたらまだ比較的楽に処理できるのだが。




