魔物の帰還
アルバンとハーフエルフは村の近くまで来ていた。旅の途中、盗賊や魔物にも遭遇したが問題なく撃退した。アルバンはまわりを見まわして
「ここらへんか?・・と昨日から聞いているがどこなんだい」
ハーフエルフは見まわしながらニヤニヤして
「ん~、50年前だからな。それに、村と言っても一人で住んでいたから、もう家が壊れて無くなっているのかも」
アルバンは、あきれたように
「50年前って、おまえハーフエルフなら人間と同じ寿命だろ、おまえ実はエルフなんじゃないのか」
ハーフエルフは頭を掻きながら
「私は双子で生まれて兄が人族で私がエルフと産み分けされたのですが、エルフでも肉の欲求に負けたものは聖霊の声が聞けなくなってハーフエルフ扱いになるのですよ。それでここで獣を狩って生活していたのです。でもこんなに長く生きるとは思っていませんでした」
うう、めんどくさい、ハーフエルフとして生まれるところをエルフとして生まれた、しかし食い物の好みでハーフエルフになったのだがエルフとしての寿命がある、すごくめんどくさい。アルバンはとんでもないのを抱え込んだと思って頭を抱えた。実は先週からアスマスとトリアが戦争になるのではと噂になっていたので、この仕事をさっさと終わらせて戦場になると言われているトリアに行きたいのだ。
「とりあえず嘆きの井戸を閉めよう、場所は覚えていますよね」
ああそれなら、とハーフエルフは案内した。そこはエルフの森から出てすぐ近くにある広い草原の堀であった。広大な堀が嘆きの井戸になっているのだった。そこに近づいて行くと、遠くからエルフの兵士が近づいてきた
「おい、お前たち。どこから来た、ここに近づいてはいけない」
アルバンが説明していると、兵士はいぶかしげにハーフエルフを見て
「おまえ人族のアスマスの姫か、しばらく見ないから探していた者がいたな、ガイル様だったか」
ハーフエルフは、堀から落ちてダンジョンにいたことを説明した。兵士は
「肉の誘惑に勝ったのか知らんがリーシャ様の元に顔を出してくれないか、ガイル様には会いたくないだろうからな。堀の魔法がとけた部分は見当がつくから修理しておくよ」
ハーフエルフはリーシャの元へ行くふりをしてその場所を離れた。アルバンは、どうしたんだ行って来いよ、そういったが。
「おばあ様も怖いのですよ、そとずらは良いのですが。できれば私もトリアに行っていいですか、私なら近道を知っていますし」
アルバンは問答するのが面倒くさいのでハーフエルフを連れてトリアに行くことにした。
「それでお前何ができるのだ、戦争になったら自分の身は自分で守るのだぞ、弓ならどこかの村で手に入れよう」
ハーフエルフは、それならもうある、と言ってダンジョンから持って来たナイフを取り出した。アルバンはめんどくさいので突っ込まずに流した。
しばらくして神官長が亡くなるとエルフ達はダンジョンからウズの子供たちの背中にのって帰っていった。ガイルは悪態をついていたが仲間の死はこたえるようで帰るときは無口になっていた。私達はダンジョンまで見送りに行った、新しい神官長はウズにハーフエルフを保護したいと申し出たが、あれは自由だから神官のしきたりに従わないだろうと言った。メイドの方はマーシャに手紙が届いていないのでどうなるか分からない。なにかと問題があるようなので村に帰っても居場所が無いかもしれないと思って心配していた。
トリア王国の王城では魔物が多数出現するようになっていた。ヴァレンティーナの部屋にリオニが入ってくると
「昨日も魔物が出現した。場所は魔導団の研究所後あたりだ、どうもあそこで魔物を作り出す術式が生きているようだな、何人か人を置いておいたよ」
ヴァレンティーナは剣を磨きながら言った
「ああ、宰相殿が冒険者や隠遁者の魔術師を雇って調べさせているようだが、徐々にだが魔力が増大しているそうだ。魔法で術式を壊すか、あの部分を爆破するしかないようだが、一度潰れた術式なので魔法で壊すのは難しいとのことだ」
あとから入ってきたラアラがソファーに座りながら
「あのチビ皇帝に言えば吹き飛ばしてくれるだろ。もともと魔導団ごと吹き飛ばしたのはあいつなのだし、それにソフィア様の婚約者だからな」
ヴァレンティーナは顔をしかめながらかざした剣を見上げて
「アスマスには頼れないぞ、こちらは実力を試したとか舌をだしても魔物の塊を送り出して結果として皇帝を殺しかけたのだから、今は知らないで通しているが応援を頼めば説明せねばならい、そうるすと犯行を認めるようなものだ。ソフィア様と婚約したのはトリア国が友好国だからであって、それ以外であってはならない。城下では皇帝と戦争がはじまると噂になっている。何としても自力で解決して隠ぺいしないとかっこがつかない、っというのが宰相殿の考えだろう」
お前の考えではないのかよ、と突っ込まれて、笑った。ではどうするのか、根本的な答えが出ないままヴァレンティーナは
「出てきたら斬る、そして姫様の部屋を遠くに移動することを進言しよう。それぐらいしか私には思いつかない。まあ、しばらくは妹のラキア達の世代を使ってもいいだろう、まだ弱いのしか出てきてないからあれの練習にちょうどいい。中程度から我々が相手することにするか」
リオニは冷静に付け加えた
「出てきたのを嘆きの井戸に落ちるように誘導してはどうか、龍に食ってもらおう。魔王以外なら食えるそうだし」




