最後の最後でありはじまりのはじまり
帝都の皇帝の居城にて、最近、ブリジットと皇帝は頻繁に話し合っていた。
「通商条約は結んだよ、王国の魔法士殿が押してくれたようだ。それから国教として神様を祭るそうだ、近々帝国の神殿に神官候補の王国の少女が何名か来るからあそこも安定するだろう」
「これで商圏がトリア周辺から王国まで広がりましたね」
「ここからさらに倍以上に広がるよ、単純に星を一周すると倍だし、まだ南半球も手付かずだから」
「星?とにかく手が回らなくなって来ています、商業ギルドは地域を相手にするのでなんとかなっていますが、全体を動かす会社をもっと大きくしないと。それに共通の貨幣も」
「会社は支部を作ればいい、支部ごとに責任者を置いて、君はそれを統括する立場につけばいい。とりあえず貨幣はアダマンタイトで作ろうと思うよ、偽造防止にミスリルやら混ぜておけばいいと思う。さらに将来には貨幣は必要なくなるけどしょうがないね」
「貨幣が必要なくなる?それで支部の責任者はどこで調達しますか」
「帝都に学校を作ってそこで養成する、それから商業ギルドや会社で働かせて経験をつませてから要職につかせたらいい」
ソフィアの居室ではルーシーが訪れていた。
「ソフィア様、御懐妊おめでとうございます」
「ありがとうルーシー、皇帝様に区切りになる成果が出たからいいかと思って、あなたもそろそろかしら」
「私はあと数百年は早いかと」
「そうね、それまでの間を一緒にすごすパートナーは必要ね」
「噂をお聞きになられましたか、あれは本当にただの噂ですよ」
「あらそうだったの、残念ね」
「そうですか残念ですか」
「あれが他に女を作っても殺さずに我慢するのですよ。それにどこかで殺されても殺した相手を国ごと滅ぼすとかもダメ」
「当然ですよ」
「それならばいいけど、人族に転生しても必ずしも出会えるとはかぎりませんから、今を大事にした方がいいですよ。あの子に2度目の人生はないのだから」
そこにメイドたちを引き連れてメイド長が現れた。
「ご懐妊おめでとうございますソフィア様、このたびどこからともなく高い身分の新しいメイドが2名加わりましたことをご報告いたします」
「あら大丈夫なのに、まあしょうがないわね、あの人にしては我慢したほうだと思うし」
「はい、そのように思います」
メイド長はルーシーをチラッと見て、立ち去った。
暗黒大陸の中央では皇帝とバレンティーナそして夫の宰相が話し合っていた。
「北の魔女の領地は帝国が信託統治することに決まったよ」
「今の魔女様がしばらくメイドになるそうですね」
「ダンジョンで見つかった魔女が当分のあいだ北の魔女をやるそうだ。とうぶん荒っぽいことをしないといけないから、今のあそこには合っていると思うよ。エルフが宰相か相談役に入るようだし、近いうち、と言っても数百年後かもしれないけど、直接統治できるようになるだろう」
「では、私達はこのままここで」
「しばらくはそうしてもらって、帝国の宰相は経済学にのめり込んでいるから学者になってもらって、大学で各国の宰相やそれになる若者に経済学を教えてもらおうと思う。旦那さんはそのうち帝都に帰ってもらって宰相になってもらうよ。バレンティーナさんもいったん帰ってもらって子育てが一段落したら王国の先に進んでもらおうかと思っている、黒帝も妹もその頃は大きくなって独り立ちしているだろうし。今回も魔族の支援があるから転移して会えばいいよ、離ればなれにはならないようにする、なんなら三人目でも四人目でも生んでもいい」
「至れり尽くせりですね」
「なんなら私も使ってくれていいよ。ソフィアも子供が出来たら相手をしてくれなくなるだろうし」
東の魔女の後継者とインバは疎遠になって自然消滅するが、東の魔女の居城にある魔石の威力が落ちて結界がなくなることで解放した貴族の女剣士が城に攻め込み王国と小競り合いが起きるが、助けに入った剣士と恋に落ちて結ばれる。魔石の威力が減少した原因は北の魔女のダンジョンにもある装置の故障でエルフ達が数年かけて修理して元に戻るが、そのころにはお互いに交流が盛んになって魔石は必要無くなっていた。
王国にはルーシー達が魔王城で育てた少女がメイドとして働くことで奴隷制度がなくなり、それによって王国はさらに豊かになりクーデターを起こそうという勢力はいなくなる。
サーシャは赤道付近の村々を束ねて王国を作ろうとするが、自分が国王になろうとして、その話は立ち消える。そのかわりに魔王城に遊びに来ていた子供たちが大人になったときに民主的な国を作って成功する。
ヴァレンティーナは国々をめぐって協定を結び、トリアにたどり着いて英雄となった。
皇帝とソフィアは長い時を一緒に過ごして幸せな一生を送り、またどこかの時代に会う約束をしてリーシャやルーシー達に看取られて一生を終えた。
かつてサキュバスと呼ばれたメイド達はこの物語を門外不出の記録として書きとめ、次の世代に受け渡した。




