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皇帝とサキュバス  作者: テクマ
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初陣で戦死した少年皇帝を蘇らせたサキュバス、根源が入れ替わっていることにうすうす気づきながらも見守ることにした。

不快な頭痛をともないながら深い眠りから目覚めた。

薄く開いた目にはメガネをかけたメイドが私の顔を覗き込みながら必死に何かを訴えているのが映る。

・・しかし何も聞こえない。

視線を下に移すと、法衣だろうか、それをまとった少女たちが私に覆いかぶさり何かをつぶやいている。

傍らには大人の女性、これも法衣だろうか、神官かな、まあ分からないが、天に向かい何かを祈っている、・・かなりの美人だ。

周りには10人ぐらいだろうか、メイドや神官、騎士たちが絶望した面持ちで立っている。

・・どうも私は死にそうなのかな、あるいは死んだのか?

そういう夢なのだろう、なにしろここは中世ヨーロッパの絵画の中のような世界なのだから。

そう思っていると、ふと頭の中に何かが囁きかけてきた。


「目が覚めましたか?あなたは日本で死んで、アスマスの皇帝を依代として転生しました。しかしこのままではまた死んでしまいます、私の言うとおりに行動してください」


中世ヨーロッパにアスマスなんて国があったのか? 

私の心の声に答えて語りかけてくる


「ここは異世界です、さあ目を大きく開け脇腹に手をかざしなさい」


・・そうするしかない、いろいろ聞きたいことはあるが。


目を大きく開けるとメイドと少女達が驚きと共に喜んでいる、何かいいことをした気分だ。

次に脇腹へ手を当てた。

大きく裂けている、これが死因か、いやこれが原因でまた死ぬのだろうか。

これを治療するのは異世界でも無理ではないか、実際何も出来ていない。


「修復します」


手をかざした脇部分から眩しい光が発し、・・穴がふさがった。

これで危機回避だ・・、すると


「今度は外に出てください」


まだ危機は継続しているようだ、脇腹の穴は序章なのか?

あらためてみるとここは豪華なテントの中だ。

立ち上がると周りの人たちは凍り付いている、死にかけていた爺さんが立ち上がったのだから、まあしょうがない。

メイドが手を貸してくれたのでかろうじてたてた。

しかし大きいメイドだな、自分よりも20cmは背が高い。

神官の女性も大きい、少女達は自分と同じぐらいか、いや・・私が小さいのだ。


私はどうやら少年のようだ。


この若さで皇帝になったのか?

こんなすごい人の後を継ぐのは大変そうだ。


ふら付いたがメイドに支えられながらなんとかテントの外に出た。



そこは戦場だった。



テントは小高い丘に立っている、前方には立派な鎧をつけた将軍達が何か怒鳴りあっている。

その向こうの草原では何かに対峙している軍隊が横一線に並んでいる。

数にして2千ほどだろうか。

相手は・・像か、いや何かの大きな塊で5体いる。

私たちの頭上には常に火の玉が降り注いでいるが、周りにいるたぶん魔法使いが防いでくれているようだ。異世界だから多分そうだろう。


声に導かれて将軍達の間を通り過ぎて前に出た。


近くで見ると大きな塊は人型の何かで形成されていて、そこから大きな手や足が飛び出して兵士たちを打ち付けている。

こちら側の兵士は弓で射るか、錨で引っかけて人型の何かを引きずり出して槍や刀で刺したり切っているようだが、あまりいい方法ではないようで、劣勢であることは理解できた。


「腕を前に出して親指と人差し指で窓を作って覗いてみて」


絵をかくときによくやるポーズを作ってみた。

そうすると将軍たちは慌てたように大きな旗を振らせて前線に指示を出した。

兵士たちは大きな塊から距離をとった。

指の枠から兵士の影が消えたところで、声がした。


「照射します」


大きな塊の中心がえぐれるように飛び散った。

将軍や兵士から歓喜の声があがった。


これが少年にして皇帝である者の力か。


謎の言葉に導かれて残りの4体も破壊した。

四散した人型の物にはまだ生きている物もあるが、塊になると標的になるため個々に戦わなければならない、そうなるとこちら側が有利であった。


後は火の玉を飛ばしている陣地に、照射、して一掃した。


これまで火の玉の防衛に徹していた魔法使い達は敵に対して攻撃を開始した。攻撃方法は私とほぼ同じ、ただ火力が小さい。私は魔法使いとして規格外なのであろう。

戦況は180度変わり、敵は敗走を始めた。


敵の後方に大きな黒い穴が開き、そこに逃げ込んで行く。


「あそこを狙いなさい」


声に導かれて、照射、した瞬間、黒い穴は照射したエネルギーを吸い込むように閉じてしまった。

残された人型の物は兵士たちに次々と狩られて行った。


勝利したのだ。


皆の勝利のおたけびの中、私は悠然とテントまで帰って行った。

しかしテントに入るとふら付いてメイドや神官に抱きしめられた。

そこで、はじめて人の声を聞いた。


「初陣の勝利おめでとうございます、アスマス皇帝陛下」


頭の中に声が響いてこない、危機は去ったのだろう。だがこの世界で生きていくには知識が不足している、とりあえず昔の自分が当然知っているメイドや神官の名前をそれとなく聞き出すところからはじめないと・・。




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