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みっともなくも縋ってみせる - 1

「うー……」

 翌朝、私は死んだような呻き声をあげながら自室の天井を眺めていた。頭を中心に全身がずぅんと重く、瞳が潤んでいるせいか視界は少し歪んでいる。

「学校には連絡しといたからねっ! お昼は、昨日のカレーの残りあっためて食べといて」

 仕事着に着替えた母さんは、ノックもせずにドアを開けるとずかずかと室内に入り込み、そうまくしたてた。

「まったくあんたは、昔からそう! 肝心な時に熱ばっか出して!」

 呆れたような口調で告げられた言葉は既に聞き飽きたものだったので、もう「せめて心配してくれよ」なんて台詞は湧いてこない。

 ただ無遠慮に触れてきた手が、保湿クリームのせいでやたらべたべたしていて気持ち悪かった。

「明日には進路希望、書き直して出しとくんだよ!」

 母さんは捨て台詞のようにそう言い放つと、ばたばたと部屋を出て、階下へと駆けて行った。そろそろ出勤時間のはずだから、間もなく家から出ていくだろう。そうすれば私は一人だ。家族の出払ったこの家で、のびのびと一人。

 ここぞという時に悩みすぎて知恵熱を出すのはもはや私のお家芸みたいなもので、物心ついた時からこういうことは何回もあった。

 それって日頃のストレスがやばいからじゃない? と思わないでもないけれど、母上様が「単なる甘え」だと仰るので多分そうなんだろう。でもとりあえず、今日は休みだ。熱が出たから学校を休む。なんにもおかしいことはない。

 そしてそれにともなって、例の用紙の提出期限が伸びた、ということでもある。根本的な解決ではないけれど、なんとか猶予期間ができたぞ。やったね。私はひとまず、唐突に目の前に差し出された余暇を満喫することにした。

 じゃあ、死ぬか。

 ベッドの上に大の字になりながら、まず考えたのはそれだった。戸棚の上には雑誌をまとめる用のビニール紐があるし、カッターだって少し刃が欠けているけど現役だ。私は、室内にある私を死に至らしめてくれそうなものをリストアップしていく。その過程で、なんでだかわからないけどじわりと涙がこみあげてきた。

 畜生。どうやって死んでも痛いだろうな。苦しいんだろうな。私だって本当は痛いのも苦しいのも嫌だよ。一番欲しいのはハッピーだよ。そんなことわかりきってんだろうがよ。

 次々に零れ落ちる涙が嗚咽を呼び、次第に私は獣のような咆哮をあげて泣き叫び始めた。心の中には、生まれるたび捨てようとし、けれどそれができなくて飲み込んだ言葉たちが次々に浮かんでくる。

 そんなに私の小説は面白くないですか。小説しかとりえがないと思っていたのにですか。それなら死ぬしかないですか。私に生きてる価値ってあるんですか。

 ヴワアアアアンという聞くに堪えない吠え声をあげながら、私は必死でピンク色のシーツに爪をたてる。所詮私は、それで自分の肌を掻きむしり自傷する勇気もない臆病者なのだ。畜生。畜生。畜生。私は私の何者にもなれなさに絶望しながら、一人ベッドの上で号泣し続けた。

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