~第七章 吸血鬼現れる~
さて、7話目になりました。今回はみんな大好き吸血鬼が登場します。どたばた異常ファンタジー(?)はまだまだ続く予定でいます。
それでは本編をどうぞお楽しみください
翌日、玄関の戸を誰かが叩いていた。エルフさんは鍵を持っているのでたぶん客人だろう。
「はーい、今いきまーす!」
「...この臭いは吸血鬼。気をつけて」
ロリバスはいつでも可愛いものだ。
「えぇ、気を付けるはね」ドアの鍵を開ける。
「はい、どうなさいましたか?」
おう、吸血鬼っぽい。日差しがすごいのに暑苦しい黒いローブに黒い日傘。うん、すごい。顔は少女って感じで可愛らしい。
「あの、ここってライアーコーポレーションさんで宜しいでしょうか?」
「ええ、そうですよ。まだ実務はあまり行っていませんが。」
「まだ募集かけていますか?」
おっと、入社希望の子だったか。さすがに驚いた。
「ええ、いつでも受け付けてますよ!外は少し日差しが強いので、あと面接のためにとりあえず中へ。」
「ありがとうございます!」
おお、急に明るくなった。やっぱり外は辛いだろうな。そうして2人で社長室まで階段を上っていく。
「では面接を始めさせてもらいます。まずはお名前とお歳、種族を。」
「シューラー・マルギット、362歳の吸血鬼です!」
「はい、ではシューラーさんはどこでここを知りましたか?」
「はい、実は私は北にある王国の王族の使用人でしたが、経済環境があまりよろしくなく、クビになってしまいました。」
「北の国ですか?ではこれでいうと赤い針がこの文字を指す方向ですね。」
そういって赤い針がNの方向に向いている方位磁針を指差す。なぜかポケットに最初から入っていた。
「え、ええ、大体そうなのですが...」
「どうかしましたか?」
「いえ、あの、小さい方向指示機ですね。」
え?方向指示機?まさかこっちだと名前が違うのか。
「これは私のいた世界だと方位磁針といって、磁石で方位を示すものです。」
「そ、そうなのですか。私どもの国々は神族信仰が盛んで、方向はこれで示されると小さいときから言われ続けたので、他の世界にも同じようなものがあるとは思いませんでした。」
「まあ、私がいた世界は科学が発展していましたので。」
「そうですか。それで、磁石とはなんでしょうか?」
まじか。磁石知らないのか。まあ、神族が磁場を決めているから仕方ないか。一応この手の知識はエルフさんが教えてくれた。さすが元世界の想像主に仕えていたエルフさんだ、物知りである。
「まあ磁石は後々教えますので、では質問を続けますね。」
「あ、失礼しました」
そうして質問を続け、終わった。
「では最後に住所を。」
「実は、住む場所がないんです。王家に住み込みで働いていて、実家はなぜか差し押さえられました。それでこちらの国に来たのです。」
「そうですか...」
「失礼します。あら?マルギット!?あなたヴィクトラン王家に住み込みで働いていてなかったかしら!?」
「レイエスこそなんでここに?」
「私は働いているのだけど...」
「ごめんなさい、二人は知り合いかなにか?」
「ええ、古い付き合いですよ。」
「なら提案なのだが」
よしここでアタック。
「良ければレイエスの家にシューラーさんを泊めてあげてくれないか?家がないそうなんだ」
「お言葉ですが社長、それはできかねます。」
「え?」
ここで吸血鬼さんが割って入る。
「ライアーさん、吸血鬼とエルフは基本的に近づいてはいけないという暗黙の了解があります。」
「例え仲が良くても泊めるなんてことはあまりよくない行いなのです。」
まじかそんな暗黙の了解があるとは。
「そうだったのね、ごめんなさい。」
「社長はまだここに来たばかりなので大丈夫ですよ。」
しゃーないか。泊めてやろう。
「わかりました、採用です。泊まりはここで良いですよ。」
「ほ、ほんとうですか!?」
すんごい笑顔になった。吸血鬼って結構表情豊かなんだな。
「ただし条件が二つあります。一つは生活費は自分で賄い、私にはあまり頼らずに自立すること。二つ目は...」
「二つ目は?」
「ハイサキュバスと一緒に生活すること、だ。仕事内容でもある。簡単に言うと子守りだ。」
「ハイサキュバスなら大丈夫ですよ!お任せください!」
「ただし、野生がまだ抜けてないから力が強いことも忘れずに。あの魔法は強い。魔導士以上に匹敵するので十分注意して。」
「わかりました、気を付けます。」
まあ、あいつの扱いは難しいからここら辺は手を貸すか。そんな感じで吸血鬼も仲間になった。さて問題は店をどう構えるか。社員は今のところ3人。そのうち製造に1人、接客・子守り(仮)1人、販売(仮)1人、会計などは全部私だ。もう少し欲しいところだ。あと2、3人いれば良いけどな。
そんなこんなで2日後。一応頼んでおいたMK23、M9A1、AK-47、Kar98、L96A1(バリエ増やした)をそれぞれ20丁づつとそれに対応した弾丸9mm、7.62NATO、7.52mmが届いた。当初は弾丸を精巧に作れるか心配だったが、さすが老舗加工屋である。全部正確に作られていた。そして一度全員を社長室に集める。「さて、明日から正式に武器等を売る店を開店します。主に武器や薬を売る店です。みんな、明日は精一杯頑張ってくださいね!」
「はい!」
「私は工房でさらに生産します!」
「よし、では明日は頑張りましょう!解散!お疲れ様でした!」
そうして始まった、店の経営。だが皆忘れていた。この店が何処に在るのか。開店の日、アリーナの手筈で結構ライアーコーポレーションの店は魔物(ここでは人間に友好的な魔物とする。)や亜人種、神族が結構来た。人間はマスクのようなものを着けて、購入していった。
「こちらとこちらで、15万ガイルとなります。武器はまだ法律が整っていないため、シューティングレンジかギルドでの使用のみです。一応法律担当の方に仮法律を作ってもらい、違反すると最悪の場合死刑となります。取り扱いには十分注意してください!」
「はい、気を付けます。」
人間の中には自分のように地球から来ている人もいて、その人たちは十分わかっていた。
順調に店の売り上げを伸ばしているライアーコーポレーションだったが、ある日事件が起きる。それは夜のことだ。なんか空にいろいろ星が輝く中、金色に輝く月のような何かが丁度満月のように丸くなった日の事である。ライアーはその時、会計をしていた。
「えーっと、これとこれで尚且つこれを含めて武器が57万3247ガイル、薬品が12万4783ガイル、その他3万7963ガイルで、合計が73万5993ガイル、売り上げ合計との差分はゼロっと。ふー、終わった~」
「ライアー社長...」
そこには下を向きながら立っているシューラーがいた。あーあー、長い髪が前にいっちゃってるよ。
「あら、どうかしたの?」
「今日はなんの日か分かりますか?」
いきなりそんなことを言われてもなぁ。そんなことを思いながらふと外を見る。
「あー、なんか丸い惑星がきれいな日ね。」
「あれはウルムットと呼ばれる星です。それがきれいに丸くなる日は...」
「丸くなる日は?」
その瞬間、顔をあげたシューラー。その顔はいつものような顔ではなく、目を赤く光らせ、牙を剥き出しにしていた。まずいと思い、麻酔弾の入っている銃を抜いて、引き金に力をいれたとき、首筋を噛まれていた。ジュルルルルルル...とても心地良いとは言えない血液を吸われている音が、薄れゆく意識の中にまるで子供が耳元でジュースを啜っているかのごとく、強く、確実に鳴り響いていた。翌朝、ライアーは机の下で眠っていた。近くにはシューラーも眠っていた。その顔は昨晩と違い、いつもの優しい少女の顔になっていた。そして首筋に痛みを感じた。
「いてててて...一体なんだったんだ?」
よくよく考えると、シューラーが吸血鬼だということを思い出した。そしてシューラーも目を覚ます。
「ううーん...!?キャー!日光はだめ!」
よく見ると日光に当たっているところがキラキラと輝いている。あ、吸血鬼は日光だめだった。
「わー、ごめん!いま閉める!」
そういってカーテンを閉めた。
「ふぅ...あ!」
「な、何!?」
いきなり大声出さないでよ。ビックリするじゃん。
「社長、首筋を見せてもらえますか?」
「え、ええ」
そういって昨日噛まれた首筋を見せる。
「ま、まずいですね。」
「な、何が...?」
「一度吸血鬼に噛まれた人間は吸血鬼に種族が変わってしまうんです。」
あ、そういえばエルフさんそんなことを言っていたような。でも自分さっき日光に当たってたけど特に何もおきないしな。そうだよ、俺人間じゃないじゃん。一応ステータス見てみるか。そういえば自分のステータス見るの初めてだな。
”名前:アルマーニ・ガン・ライアー 種族:人間以外(不明) 年齢:129 HP:94556677433455/94556677433455 MP:193728645/193728645” 説明:転生した元人間。男から女になった。ザマァ。”
なんだ最後の”ザマァ”って。HPバリたけえし。「社長、大丈夫ですか?」
「ん?ああ、自分のステータス見てたんだ。」
「ど、どうでした?」
「なんか、うん、ヤバい。吸血鬼なのかもしれない」
だが、その日は特になにも起きずに終わった...
吸血鬼に噛まれるとどうなってしまうのか。それは様々な文献があり、定まっているものではございません。今回のように何も起きない、吸血鬼に変わる、血を飲まれ過ぎて出血性ショックで死んでしまう、等々バリエーション豊富です。また、それぞれを小説に入れると面白い物になります。吸血鬼がライトノベルで人気を博しているのはそのようなことからも言えるでしょう。(あくまでも個人の考えです。)
それではまた次回。