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この世界の統治者の問題

 ジガダンダの街に戻ると、ティナはイワシの切り身をアルダンジアに売り、多額のお金をもらっていた。


「キリ・ファルド様? 何か忘れていませんか?」


 今から打ち上げだって言ったところに、受付嬢にそう言われてしまい、怠いと思いながらも、仕方なく出席することになってしまった。

 職業の話は聞きたいと思うが、冒険者の心得とか、先輩冒険者の話なんて、微塵も興味ない。どうせ、先輩冒険者の話なんて、くだらない過去の栄光の話をドヤ顔でされて、お前たちもこうなるんだぞ。と言う腹立つ顔で言うんだろうな。尚更行きたくない。


「キリが終わるまで、私は待っているわ。ほら、早く行くっ!」


 行くのを渋っていると、ティナは俺の手首を掴んで、俺を強引に講習会の会場に連れて行かれた。そして会場の入り口のところには、アルダンジアの職員が出席を取っていた。


「名前は?」

「キリです」


 アドベカードは身分証明書になるので、職員にアドベカードを見せようとしたら。


「キリ。 見せて、見せて〜!」

「受付が終わったらな……」


 俺のアドベカードを奪おうとするティナの顔を抑えながら、職員にアドベカードを見せて、受付が完了したら、すぐにティナにアドベカードを見せた。


「……面白い顔ね」

「おい」


 何て失礼な事を言うんだ、この女は。


「確かにな。こいつどんだけ飴玉が欲しいんだよって顔だな」


 いつのまにか現れたファズも、俺の写真を見て、少し笑いかけていた。確かに自分でも変な写真だと思っている。


「キリ! キリ!」


 そう思っていると、ティナは俺の肩を思いっきり何度も叩いてきた。


「何だよ」


 結構痛かったので、少し機嫌を悪くしてティナに応答すると。


「……キリって、16なの?」

「年齢か?」


 この少女での年齢は知らないが、アドベカードでそう書いてあるならそうなのだろう。まあ、見た目的に幼いし、中学生か高校生かと思っていたんだが。


「……そうらしいな」

「私と一緒だったなんて……」


 ティナも俺と同じ年齢か……。つまり、同級生ってことになる。なら、ため口で話しても、偉そうに命令しても文句は言われないってことだな。


「ファズは?」


 見た目的に、ファズは俺より年上だと思うんだが。そして俺は尋ねると、ファズは顎に手を当てて。


「俺は18だな」


 つまり、ファズは大学生になるのか。見た目的に二十歳は越えていると思っていたんだが……。


「俺が年上だと知っても、今まで通りに関わって行こうな」


 年齢を聞いて関係を終わらせる事はないが、おそらく今後もファズとは関わっていくだろうし、今まで通りに接していくだろう。


「ねえ。職業はどうするの?」


 どうも自分と同じ職業にしたいのか、ティナはさっきからしつこく聞いてきている。

 俺は冒険者に何の職業があるのか、全く知らない。剣を使うから、剣士だと言う事は分かる。だが、何と言う名の職業だっただろうか。


「ちなみに、私はソードマスター。剣で戦うのが好きだから、なったの」


 改まって聞くと、何か、中学生が考えそうな名前だな……。

 ティナの行動を見ている感じだと、主に攻撃がメインで、剣で相手を倒すって訳か。剣を持って戦い人にはもってこいの職業だ。


「ファズは?」

「俺は、ミラクルマジックだ」


 何だその職業は。聞いた事無いんだがっ!? マジックという事は、魔術師みたいな職業って事か?


「おい。何だよ、そのミラクルマジックって」

「どうせ講習会に出るんだろ? なら、そこで聞けばいい。きっと教えてくれるだろう」


 結局、知りたければ、かったるい講習会を出ないといけないようだ。ここで教えてくれてもいいんじゃないのか?

 俺の事が気になっているファズなら、おねだりすれば教えてくれそうだが。


「ティナ。ソードマスターって何だ?」

「ソードマスターは、どのような剣でも扱える職業よ。剣を直す鍛冶とかは出来ないけど、難易度が高い剣でも使えるの」


 ティナの話を聞く限り、まあ悪くはない職業だな。剣はポピュラーな武器だ。剣を使って戦えば、きっとカッコいいだろう。


「じゃあ、ミラクルマジックって分かるか?」

「私、ソードマスター以外興味ないの」


 どうやらこいつ、ミラクルマジックを知らないと、遠回しで言っているようだ。ティナは頭は良くないらしいので、多分知らないと思っていたが、案の定知らないようだ。


「講習会を行くのが面倒だと思うのは、俺も分かる。確かに、話を聞いているだけだから、眠くなってくる。俺も寝てたもんな」


 何やら懐かし気に、首を頷かしているファズ。


「そうそう。寝るとたらいが落ちてくるのよね」

「お前の時はたらいだったのか? 俺の時は、鍋の蓋が落ちてきた」


 何か地味に嫌な起こし方だな……! コントかよ!

 こうやって見るとファズやティナも、講習会の話を聞いて懐かしそうにしているようで、この2人もこのちゃんと講習会には出ているようだ。


「……面倒だが、行くしかないのか」


 頭をポリポリ掻きながらそう言うと、俺はファズに背中を押された。


「行ってこい。冒険者になりたいんだろ?」

「いや別に」


 俺がそう否定すると、ティナの奴が俺の肩を思いっきり揺らしてきた。


「キリは私と共にソードマスターになるって決まっているんだから、冗談でもそんな事は言っちゃダメ」

「何で俺の職業が決まっているんだよ」


 何か変なところまで、こいつの都合に付き合わないといけなくなってしまったらしい。こんな事なら、変な事言わなければよかったと、今更後悔している。


「実戦はしたくないので、俺は荷物持ちでもいいかなと思っています」

「そんな職業に就いても、ロクな事にはならんと思うぞ。もし、俺たちがやられて、キリだけになったらどうするつもりだ?」


 そうなったら逃げると言いたい所だが、そんな事を言ったら、俺はファズやティナにバッシングを受けると思うので。


「……何かしらの、攻撃出来る職業の方がいいかもしれないな」

「という事だ。ほら、早く講習会に行け――」


「金髪の君。講習会に受けるのか?」


 俺とファズの会話に割って入ってきたのは、ゆったりとした話し方で、手の平を合わせて合掌している、散切り頭の白い衣装に身に纏った男性だった。


「職業に悩んでいるようなら、私たちの職業に――」

「キリに変な事を吹き込まないで」


 ティナは喧嘩腰で、俺たちに話しかけてきた男性に剣先を突きつけて、男性を威嚇していた。


「そんな格好をしているのは、ある集団しかいない。あなた、天界族でしょ?」


 ここでようやく敵らしいキャラが出てきた。どんな世界にも、悪の集団と言うのは存在するが、この世界では、天使みたいな奴らが敵らしい。


「地上人が、私たちに勝てると思っているのですか? ラズエル様がすぐに本気を出せば、地上などあっという間に灰にしてあげま――」

「そこ! アルダンジアで揉め事はご法度だ!」


 いつの間にか、俺たちの周りには野次馬が群がり、そして俺を牢屋に連行した警備官が、駆けつけてくると、天界族は、すぐに俺たちから別れた。


「私たち冒険者は、モンスターを倒すだけじゃなく、有事の際は、天界族と戦う兵士にもならないといけないの。だから、荷物持ちなんて役に立たない職業に就くより、私と一緒にソードマスターに……って、逃げんな〜!」


 そんな話を聞いたら、尚更冒険者になりたくない。そっと逃げ出したつもりだが、俺はあっさりティナに見つかって、講習会の会場に連れて行かれた。


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