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明かされた真実 5


1.アルノーの横暴をとめろ

2.そのためにペガサスを見つけろ



ウィルがしなければならないことを、トムは単純明快にこの2つにまとめあげた。

たったこれだけのことだとでも言うように。



「ちょっと待って」

ウィルはさすがにあきれて笑っていた。

「そんな簡単にトムは言うけど、アルノーの横暴をとめろったって、相手は現国王でしょ? たくさんの軍隊も持っている。適うはずがないよね? ハハっ……それにペガサスを見つけろって、ちょっと待ってよ……。だいたいペガサスって実在する生き物なの? 確かにこの国の守り神として人々に知られてるのも僕は知ってるけど、実在するとは聞いたことがない……。それも僕が無知なせいなの?」

「いや」

答えたのは、真顔のローレイ。

「俺も実在しないと思っていた。世界の9割以上の人実在するとは思っていない。守り神ではあるが、それはこの世界の象徴とかぐらいにしか思ってないだろう」


「王族の者とそれと一握りの周りの者だけがこの国の、今は1国しかないから、この世界のということになるが、その秘密を知ることができる」


トムの声には揺るぎがない。

バディ。

国王の第一の家臣、いや片腕とでも言うべきか。


ウィルは悟った。


トムは知っている。



「で……でも、僕が旅にでたところで、僕一人じゃどうすることも……」


「お前一人じゃない。ローレイ君もいる。お前のバディだ」


ウィルは自分の耳を疑った。


「……。はっ? え……誰が?」


「ここにいるローレイ君だよ。わざわざお前のために来てくれた」

言葉がでないウィルに向かって、トムは続けた。

「まだ若いが非常に優秀な剣士だ。すごく心強い」


「ありがとうございます。トムおじさんにそう言われるなんてとても光栄です」

ローレイはトムにうやうやしく言った後、すぐに表情を変えウィルに向かってにやっとした。


最悪だ!

ウィルは思った。

よりによって何でこんなやつが?


「僕にはバディを選ぶ権利はないの?」

「バディは士族の村で選出され、長老によって任命される。それに例えお前が選ぶとしても、ローレイ以上にいいバディはいないだろう」


ウィルは下唇を噛んだ。

まぁ、ここは我慢しても。


「でも僕にはトムもいる! そうだろう?」


ウィルは自分を鼓舞するように言った。

トムさえいれば何とかなる、ウィルはそう思った。


だがトムの次の言葉はウィルを再び唖然とさせた。


「私は行けないんだ」


「ど…どうして?」

ウィルが驚いて聞いたとき、カチャリと音がした。

ローレイがスプーンを置いたのだ。


「そのことに関しては、僕も前々から気になっていました」

「私はもう年をとってしまっている。昔のようには体が動かないだろう」

「そんなことない!」

ウィルは必死に言った。

「毎週僕に剣術を教えてくれてるじゃないか! いつもすごい剣術を見せてくれるじゃないか!」

「私も行きたいのは山々なんだ」

トムの顔は苦渋に満ちていた。


「でも、私はお前のバディじゃない。お前のお父さんのバディだ」

「でも!」


「それに私は今病気を患っている。それはお前も承知だろう? ずっと治っていない」


ウィルは黙った。

確かにそうだ。

フランクじいの薬が全く効いていないようだった。


「だがもしこの病気が治ったら、そしたらお前の旅に同行しよう。お前の護衛の一人として」

ウィルは呆然と、トムを眺めた。

病気のトムをつれ回すのは、さすがに気がとがめる。

だがショックは大きい。

トムと別々になる!

これまでトムとはいつも一緒だったのに!


不安がウィルを体の奥から襲い始めたが、ウィルはそれをそのまま無理やり丸呑みにした。


今は考えまい。



「トムおじさんは士族の村に帰って静養なさるのですね」


トムは頷いた。

「お前たちを来週見送った後、フランクと村に移り住むつもりだ」


「来週……」

ウィルは呟いた。

「本当はもう1、2年先のはずだった。だが、士族の村からの便りで無視できないことがあったんだ。そのことについては、ローレイ君のほうが私よりも詳しいだろう」

「ええ、事の詳細は長老から伺っています」


ローレイは少し身を乗り出して言った。

「士族は密偵を各地に派遣しています」

「密偵?何のために」

ウィルが聞いた。

「もちろん、エカルイア家の動きを知るため。士族は常に賢族に忠誠を尽くしてきたが、

今は縁を切っている。だが、横暴を防ぐため情報網今でもをはりめぐらしてはいるんだ。そして今回の気になる情報とは、ポルテフラ島に怪しげな動きがあるというもの」


「ポルテフラ島?」

ウィルはトムを見て言った。

「トムから聞いたことがある。確か枯れた島って」

「ああその通りだ」

トムが頷いた。


「何故かは知らないが、あの島の生物は多くが死んでしまったと聞いている。別名死の

島だ。あの島にはもう人は近づかないと聞いていたが……」


「はい、その通りだったんですが、最近王国の船が度々訪れているそうなんです。それも人目を避けているかのように、夜に上陸するんです。こちらが派遣しているスパイの情報によと、船でその島に行くのは王国の船では珍しく十数人だとか。そのためその怪しい動きを詳しく洗うのは困難なんです」


「ということは、僕達は旅に出たら、まずポルテフラ島に向かうの? その謎の動きを解明するために?」

「いや、そうではない」

ローレイが言った。


「エカルイア家の者たちが怪しげな動きをしているのは確かに気になることだが、その動きもお前がさっさと王の地位につけば封じられる。だから先に都に…」


「でも、そう簡単には僕は王になれない! なれたとしたら、それは奇跡中の奇跡だ。ものすごい奇跡が起こらないと、トムに言われたことは現実にはならない」


ウィルが蒼白になりながら言った。


トムは否定しなかった。


「確かに奇跡とか何かそういうものがないと、この世界は救えない。危険な旅だ。かつ過酷であるのも確かだ。ただでさえ、王の試練とはそれは大変なものだ」

「王の試練?」


「お前がこれから挑むことになる試練だよ。賢族の者が玉座につくには、まず王の試練と言われる旅に出て、その勇気、知性、行動力など、王として必要な資質をペガサスに承認してもらわなければならない」


「承認がなければ……」


「ああ、正式な王にはなれない。今の国王アルノーは承認を得ていない。旅にも出ていないからな。だからやつは正式な王ではない。その証拠にやつは歴代の王たちが持っていた力を持っていないからな」

「力?」

「いや……そんなことは今はどうでもいい。いいか、この王の試練は、国が乱れていない時に行われたとしてもそれは厳しいものだった。命を落とす者も、挫折するものもいた」

「命を落とすもの!?」

「ああ、そうだ。しかし、お前はただでさえ大変な試練を、この国が乱れた時代に行わなければならない……」

読んでくださってありがとうございます。

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