表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/46

明かされた真実 3

時が止まった。



「今なんて言った?」


「第一王子ウィル・カシュー」


ローレイが何事でもないかのように、きっぱりと言う。


「え……?」

「君の父親ラゼルはルーテン国の王だった」

「いや……ちょっと待って――」

「賢帝だったよ。そして、私の無二の親友だった。本当に人格といい、知性といいすばらしかった。だが……」

そこでトムの表情は一段と険しくなり、黙りこんだ。


次に口を開いたのは、ローレイだった。


「カシュー家の悲劇。僕がまだ物心つく前の時だった。大きくなって、人から聞いたことだが、今から十四年前このルーテン国の中心の都リフラーにある城、つまり王宮で原因不明の伝染病がはやったらしい。だが、おかしいのはその病気にかかるのがカシュー家の者だけなんだ。最初は、王を引退していた先王、そして王妃、後を追うように王、あとは詳しく知らないが他にも何人かのカシュー家の者が死んだらしい」


トムが首を振った。


「伝染病なんて、聞いてあきれる」

「全く同感ですよ、トムさんおじさん」


ローレイが相槌を打つ。


「それは、もう世界のみんなが思っていることです」


「エカルイア家はもうちょっとマシな口実は思いつかなかったのか? なぜカシュー家の者だけが、伝染病にかかるんだ? なぜそばにいたメイドや他に城に仕えていた多くの人は、だれも伝染病にかからなかった? エカルイア家もみな健康そのものだった。陰謀だよ。誰もがそう思っている。カシュー家の者は、殺されたんだ」 


ウィルは話についていくことができず、ぽかんとしていた。


「だが、二、三人は生き残ったらしい。だが、当然もう城にはいないよ。どこかで、ひっそりと身を隠して暮らしてるはずだ。君の親戚にあたる人たちだよ」

「僕の親戚……」


ウィルは、そこでたった今聞かされた話を、ゆっくり頭の中で整理してみることにした。


僕はラゼル王の息子。カシュー家の生き残り。

家族は陰謀で殺された。

トムはラゼル王のバディ。

僕は士族じゃなくて賢族、つまり俗に言う王族。

……。


そして一つの結論に達する。


「は……。あり得ないね……。あり得ないよ、トム」


「何がだね?ウィル」

トムの声は優しかった。

「もちろん、僕が賢族の一人だということがだよ。二人して僕のことをからかってるんでしょ?」

ローレイは声に苛立ちをにじませた。

「お前って、思ったより飲み込みが悪いな……」


トムはしばらく、ウィルを直視したまま、拳を額に当てて考え込んだ。

何かをを思案しているらしい。


その間、ウィルは自分が賢族ではないという根拠を、心の中で挙げていた。


第一、王族の一員なら、何でこんなよれよれの服を僕は着て、こんな山奥に外界とは全く接触なしですごしているんだ?

賢族は世界中と接触して、まとめるのが仕事だろ?

それに、第一王子とかいう立場なら、召使とか周りにたくさんいて、毎日ほっぺたが落ちそうなほどおいしいディナーを金のお盆に載せて運んでくるはずじゃないか。

小さい頃に読んだ、絵本の中の王子はそんな生活をおくっていたはずだ。



突然、ローレイがパチンと指を鳴らした。


「そうだ!」


そして、服の左袖をぐいっとまくりあげる。


「お前は、これが何だか知ってるか?」

その二の腕には、銀の太い腕輪がはめられていた。

飾りなどはなく、ただのわっかで、肩より少し下のところにはめられている。ウィルは、その腕輪に見覚えがあった。


この色、この形……。


「これって、トムも――」

「ああ、そうだ」


トムもローレイと同様に袖をまくりあげながら言った。そこには、ローレイとほとんど同じものがあった。

ただ、トムのは年季が入っていて、さらに大きなヒビが入っている。


ウィルは見慣れていたが、なぜか自分に同じのがついているのだから、見慣れているはずのローレイは顔に驚愕の色を浮かべた。


「トムおじさんそれは――」


トムはローレイを手で遮り、ウィルに向かって言った。


「ウィル、これが何なのか分かるか?」

ウィルは少し頬を膨らませた。

「知らない。トムは教えてくえなかった」


「悪かった。これは、カラーというものなんだ。このルーテン国の人々はみなつけている。みな、生まれるとすぐにつける。これは、不思議な物質でできていてね、その人の成長とともに伸びたり縮んだりするんだよ。つまり、きついとか、ゆるいとかいうことがないんだ。そしてこの色についてだが、この腕輪の色は、そのつけている人が属している部族を表す」


「それがどうしたの?」


「腕輪をつけないのは、賢族の者たちだけなんだ」



読んでくださってありがとうございました☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ投票お願いします。
オンライン小説検索エンジン NEWVEL 人気ランキング
http://www.newvel.jp/nt/nt.cgi?links=2008-03-1-25117
長編連載小説検索 Wandering Network ランキング
http://ept.s17.xrea.com/WanNe/rank.cgi?mode=r_link&id=7608
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ