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花咲く村 3

眼前に広がる多いな城と町。そして空と海。

大鷲に乗って飛行しながら、ウィルはこれまでに感じたことのない感情に戸惑っていた。

なぜだろう。

不思議な感情が下からぐっとこみあげてくる。

大声で叫びたい気もした。

泣きたい気もした。

目を閉じ静かにしてたい気も同時にした。

この感情を言葉で表すことは不可能だった。

いろいろ迷った挙句、ウィルがした行動といえば大きく目を見開き、今この場所から見える光景を可能な限りはっきりと頭に焼き付けようとした。



「あそこが華族の村だ!」

そうレラが叫んだのは、もう日が傾き始めてるころだった。

レラの指の先には山があり、その向こうには限りなく広がっている花畑が見えた。

「あそこが……」

ウィルがつぶやくと同時に、レラが隣で叫んだ。

「着陸態勢!」

これまで平気だったウィルも一気に青ざめた。視界が急スピードで変わり始めた。空が猛スピードで遠くなり、町が同じスピードで近づいてくる。髪が上になびいた。リィの悲鳴が聞こえる。


つまりは……落ちている!


「あああああああ!」

ウィルは恥も忘れて、声の限り叫んだ。ローレイはどうだったか分からない。だが、ただ一人ローズはこの「落ちる」という瞬間を満喫していた。

「最高!このスリル癖になりそうだわ!」


「はぁ、はぁ、はぁ…コホ、コホン。もう僕…はぁ…二度としない」

前かがみになり息絶え絶えになりながらも、ウィルは宣言した。硬い地面の上に立つ喜び感じながら。

「情けないわねぇ……」

手を腰にあて、しゃきっとした姿勢のローズはウィル、そしてその隣で気持ち悪そうにかがんでいるローレイを見ながら言った。

時は夕暮れごろ。

周りには一面に花畑が広がっている。本来なら見とれるところなのだが、一同はローズ以外その余裕がなかった。

「最近の若者はどうしようもないな……」

そうぼやいたレラは、早くもまた大鷲にまたがり出発しようとしていた。

「もう行かれるんですね……」

少し悲しそうな声を発したのは、ローズだった。ウィルは不思議に思い顔を上げると、ローズがゆっくりとアクイラに近づくのが見えた。

「ローズ……?」

「もうお別れね、アクイラ」

ローズが手をアクイラの頭におくと、アクイラはゆっくりと瞳を閉じた。まるで撫でてと言っているかのように。

「行くぞ、アクイラ。出発だ」

レラは全く容赦がない。チリは既にカパッチの隣でその大きな翼をゆっくりとはばたかせていた。


「キャゥッッ」


突然アクイラが鳴いた。その時だ。またアクイラが紅紫色に輝き始めたのは。

ウィルは慌ててレラを見たが、やはりその光が見えていないらしい。光はまたすぐに消えた。

見えているのは、ローズ、リィ、ローレイ、そしてウィルだけ。

「なんだ、アクイラ?」

レラはややイライラしたように、アクイラに問いかけた。

「キャゥっ」

またアクイラが甲高く鳴いたかと思うと、ローズに背中を向けそして……。

「……アクイラ?」



アクイラは身を低くローズの前でかがめていた。

誰がどう見ても、ローズに背中に乗ってくれと言っている。

「アクイラ、その女は飛族の者じゃないぞ!」

そう叫んだレラは、何かに殴られたような顔をしている。

「そんな……。ありえない。大鷲は私ら飛族の者だけに忠誠を尽くす。決まっているんだ。私らの先祖クリストフが勝ちえた栄誉だ!」


「まぁ、いろいろと世の中には不思議なことがあるものよ」

ローズがピエールの言葉をそのまま引用した。

レラは咄嗟にローズを睨んだ。誇りを傷つけられらたと思ったらしい。

ローズは少しも怯まなかった。むしろ余裕の笑みを浮かべている。

「アクイラは私に忠誠を尽くすみたいよ。そうでしょ?アクイラ」

ウィルはローズの自信満々な態度に驚いた。アクイラの心が読めているとでも言うのだろうか。


アクイラはローズに答えた。

「キャゥっ」

アクイラの甲高い声が赤く染まり始めている空に、響き渡る。


「ふん、勝手にしろ」

レラはそっぽを向いて言った。アクイラのことをあきらめたらしい。

「行くぞ、カパッチ」

レラはそう言うと、ウィル達への別れの挨拶もなしに飛び立って行ってしまった。



「何だったんだろう?あの光。君たちも見えたでしょ?」

レラが飛び立つとすぐに、ウィルは他の3人に向かって聞いた。

「さぁ、分からないわ」

そう答えたリィの顔は、まだ少し青ざめている。

「でもあの光は、王家の木箱の光と同じ……」

「ラージャの恩恵……」

ウィルがぽつりとつぶやいた。

「え?」

ローズが聞き返したが、ウィルは首を横に振った。

「……まさかね。ううん、なんでもないよ」

「それはそうと……」

ローズはアクイラに視線を戻し、次の瞬間アクイラに飛びついた。

「これからよろしくね! アクイラ!」

「キャゥッ」


サクッ。芝生を踏む足音がすぐ近くでした。振り返ると小太りの男が、鎌を手にぶらりと持った状態で立っていた。服のあちこちに土や草がついている。

「おかしな鳥が鳴いていると思ったら……、ご到着だったのかい」

男は満面の笑みを浮かべて言った。

「華族の村へようこそ」




久しぶりの更新です--;

次の更新はなるべく早くなるよう頑張ります><

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