第三話 言っとくこと
ケイSide
「まあ、とりあえず異世界人探しとかはさ、明日に持ち越そうよ~。もう外暗くなってきたしさ~」
真衣に言われて外を見る。
確かにもう夕暮れだ。
「本当だ……ってことは僕たち、割と長い間話し合ってたんだね」
「本当だね~、まあそれに対して中身はさほどなかったような気もするけど」
真衣、それは言っちゃいけないとこだと思う。
「取りあえず、ヴュルが帰ってくるまでに色々すましておこうか」
「そうだね~」
と、僕と真衣が立ち上がった時。部屋の扉が開いた。
ヴュルだ。
「……ただいま、ケイ、真衣」
「あ、おかえりー」
真衣がまともな返事してる。あれ?これって珍しいかも。
「ケイ、今失礼なこと考えなかった?」
「いや何も」
鋭すぎだよ。
ほらヴュルを見てみなよ、この気まずそうな顔………ってなんで?
「ケイ、真衣………ごめんなさい」
突然謝ってきてどうしたんですか。
「いきなり何ですか?」
真衣が黙っちゃったから僕が聞く。
「さっき、あなたたちが話していたこと……聞いてしまって」
聞いた?……それはつまり。
「私とケイが違う世界の人間ということ?」
真衣が言っちゃったよ。
「えぇ」
あらら、別に隠してるわけではなかったけどもこれはどうしようか。
僕は視線で真衣にどうするかといった意味を送ると真衣は首を傾げる。
って伝わってないな、これ。
「ヴュル……これから話すこと、誰にも言わないと約束出来ますか?」
仕方がないから僕が話す。
「……はぁ、わかったわ」
「ありがとうございます。とりあえず座りましょう」
僕はヴュルに着席を求め、僕と真衣も座り直した。
「で、あなたたちはこの世界の人じゃないってこと?」
座るなりヴュルが聞いてくる。いきなりストレートですね。
「そうだよ、私とケイは異世界人だよ~」
真衣、軽い!
「はい、それで僕と真衣がこの世界に来た理由ですが……………」
そして、僕はヴュルにこの世界に来た経緯を話す。
大体のことを話し終えた時、外はもう夜になっていた。
「………ということです」
「はぁ……信じられないような話だけど、あなたたちが嘘つくとも思えないし………信じるわ」
あ、信じてくれた。
「ちなみにケイはおまけ認定されたんだよー」
真衣!?それは言わなくてもいいことだよ!
「ケイ……えっと、その、哀れね」
えぇ……その可哀想なもの見る目は止めてください。
すごい傷つくんですけど。
「それにしても………だから名前のルールから外れていたのね。私は何か言えない事情でもあるのかと思っていたわ」
名前ルール……あぁ、そういえばそんなのもこの世界にはあったね。
「そうです。僕たちはこの世界の人ではないから外れていたんです」
これで話しは終わった。
問題はこの話を聞いてヴュルがどのような反応をするかだ。
「ねぇ、ヴュル……私とケイが異世界人と知ってどう思った?」
真衣!?
「どうって……どういうこと?」
ヴュルは困惑しているようだ。
まあ、いきなりこんなこと聞いた後に訊いたら困惑もするか。
「迫害とかする?」
真衣………。
「はぁ……別にそんなことしないわよ。あなたたちがどうであれ、人であるのなら私は何もしないわ」
「それ聞けて安心した~」
「真衣……まさ」
「ケイ、言わなくてもいいよ」
僕が思ったことを言おうとしたら真衣に遮られた。
そうだよね、言う必要はないか。
「真衣、それにケイ……あなたたちは今後、元の世界に帰る手段を探すのね」
「うん…やっぱり、私はこの世界の住人ではないからね~」
「はい、僕も同意見です」
「そう」
ヴュル?
「2人とも…帰る手段を見つけたら、すぐ帰るの?」
まさか、ヴュル。
「僕と真衣が帰るの…嫌ですか」
つい、僕は訊いてしまった。
「え?……そんなことは思ってないわよ」
否定された……まあ、いいか。今は。
「それじゃあ、明日からガンバロー」
「おー」
真衣のかけ声によって、今日の話はおしまいになった。