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生闇斬魔  作者: 湖林
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能ある鷹は爪を隠す?その1

その後、ルカは特にハルトに対してアクションを起こさず、放課後まで何事もなく過ぎた。そして6限目が終わると、初めてルカがハルトに対して行動を起こした。


「ねぇ?放課後ちょっと付き合ってほしいんだけど?」


 いきなり斜め上から高圧的な声が降ってきた。

 帰り支度を整えようと、鞄を机の上に引っ張り出しているハルトはあからさまに嫌な顔をする。理由は二つ、一つはあまりルカに関わりたくないから、もう一つはクラスの男子の視線が痛いから、である。ただでさえマナと仲が良いのだから尚更である。

 ハルトは視線だけ向けて、続きを促した。


「学校を案内してほしいんだけど」


「タクにでも頼んでくれ。俺は早く帰りたいから・・・」


「俺ならいくらでも案内しますよ!!!」


 ハルトがタクヤの名前を出すなり、何処からともなくタクヤが現れ満面の笑みでルカに言う。


「ごめん。私、ハルト君が良いの。ねぇ、駄目かしら?」


 それを聞いた瞬間タクヤは意気消沈して、トボトボと自分の席に帰っていった。


「わかった」


 しばらく見つめ合った、と言うか睨み合った末、ハルトが折れた。こんな事をいつまでやっていても時間の無駄だと思ったらしい。ハルトはカズヤに先に帰れと告げると、ルカを連れ教室を出た。ハルトが一番気になったのは、学校案内なのに、なぜかルカが黒い袋を持ったままだったことだった。


 二人は教室を出ると、かなり速いペースで校内をまわり始めた。片端からめぼしい教室を回り、最後に屋上に来た。その間、最低必要減の会話のみ行い、それ以外の事柄は一切しゃべっていない。


「あなた、何者?」


 屋上に出るなりルカが口を開いた。


「さっきも同じ質問しなかったか?俺はただの高校生だ」


「もしかして、あなたってかなり鈍い人?」


「さぁ?自分ではわからないな。ただ、無気力とか、無関心とかはよく言われる」


 ハルトのその言葉を聞いて、ルカは突然笑い始めた。なんだ?という視線をハルトが向けると、ゴメンゴメンと手を合わせて謝ってきた。


「ゴメンゴメン。私の勘違いだったみたい。でも、笑っちゃうわ。私の殺気にも反応しないほどの鈍い人がいるなんて。そうよね。あなたみたいに平和ボケしたような顔してる人間が私レベルに強いわけないわよね」


 別にハルトは鈍いということに関して肯定したわけではないのだが、ルカの中では勝手にハルトがかなり鈍い人間、ということになっているようだ。


「どういうことだ?」


 ハルトがわざと顔をしかめてみせる。このまま行けば、こっちの知りたい情報を勝手に喋ってくれるだろうとハルトは踏んだ。


「いきなりじゃ、私が何言ってるのかわからないわよね。いいわ、説明して上げる、疑っちゃったお詫びとして。でも他の誰にも言っちゃ駄目だからね。私と君の秘密ってことで」


「ああ、わかった」


 案の定、ルカは自分から話してくれるようだ。


「じゃあ、まず殺気についてね。私が一時間目に、あの子なんて言ったっけ?」


「ミナだろ?」


「そうそう、ミナって子に向けて殺気を放ったの。あの時クラスの全員が固まって動けなくなったでしょ?あれが私の殺気」


「なんで俺は動けた?」


 理由はわかっていたがとぼけて聞いてみる。まぁ、実際に聞きたいことはこれではないのだが。


「ああ、殺気って普通の人間も放てるのよ?でも大抵弱すぎて気づかない。弱くても気付く人もいる。まぁ、その辺は鈍いか敏感かの差よね。格闘技なんかをやってる人は殺気に凄く敏感になるの、って言っても一般人レベルでの話しだけど。私ぐらいの殺気になってくると、相当鈍くない限り大抵の人は何らかの反応を示すわ」


「じゃあ俺は相当鈍ちんだって事か?」


「そう言うことになるわね。てっきり私と同じぐらい強いのかと思ったけど」


「なんでだ?」


「殺気に対して影響を受けない人間は二通りあるの。一つ目はあなたのような超鈍感人間。二つ目は、殺気を放つ人間と同じレベルかそれ以上の強さを持つ者。それで私はあなたのことを、後者と勘違いしてしまったの」


 やれやれと言って、フェンスの方に歩いていき、もたれ掛かるルカ、そのルカの髪が風に撫でられ綺麗に空中に舞う。


「そう言えば、さっきから一般人レベルじゃ大したこと無いとか言っているが、君は違うのか?」


 ハルトの言葉を受けて、面白そうにルカは笑う。ハルトの知りたい事に徐々に近づいてきた


「ええ、そうよ。私は一般人のレベルを既に超越しているわ」


「どういうことだ?」


「あなた、《よう》って知ってるわよね?」


「ああ、人を襲う化け物で、普通の人間じゃあ歯が立たないと言われている生き物。しかもその性格は好戦的、凶悪で、人を食らうとか言う話も聞いたことがある」


 ハルトは一般的に世間で言われていることをそのまま述べた。しかしハルトは《妖》も人間と同じように様々なものが存在していることを知っていた。


「ええ、だいたい合ってるわ。じゃあ、なんで《妖》の被害があまり出てないか知ってる?」


「いや」


 本当は知っている。普通の人の住む町には結界が張られ低級の《妖》が入って来れないようになっている。そして、人間に危害を加えようとした《妖》は氷神たちの一族に滅されている。


「ってところ、でその《妖》を退治するのが私達なわけ」


「じゃあ君は、かなり強いのか?」


 ハルトのその言葉を聞いて、ルカは待っていましたとばかりに胸を張った。


「そうよ。私は《光に生きる四聖族》その中の一聖獣、白虎を司る氷神家の次期頭首、氷神 ルカよ。ところで、君、なんて呼ばないでくれる?私にはちゃんとした名前があるんだから」


「なんて呼べば良いんだ?」


「君の名前は?」


 ハルトの質問には答えていない。


破夜御はやみ 晴斗はるとだ」


「じゃあ、ハルトって呼ぶから。私のことはルカでいいわ」


「ああ、わかった。ところでその黒い袋には何が入っているんだ?」


 実際名前の呼び方などどうでも良い。ハルトが始めから聞きたかったのはこのことなのだ。武器えものを見れば、こいつがどんな身分にいるのか大抵わかる。さっき言ってた《白虎の一族》の次期頭首が本当のことなのかどうかもだ。


「ああ、これ?」


 そう言うと、紐を解きそれから細長い物体を取り出した。真っ白い鉄の鞘に納められた刀だ。特に装飾はされていない。シンプルな刀である。柄の一番端に冬と刻まれていた。


「そんなもの、持ってていいのか?」


 少し驚いたような顔をするハルト。それは刀を持っていたことに驚いたのではなく、その刀自体に驚いたのだ。


「私達は特別に国から許可が下りているわ。ちなみにこの子の名前は『冬桜』かなりの業物よ」


 知っている、四季宝刀のひとつ《白虎の一族》に代々伝わっている『冬桜』。伝説の刀だ。特徴は薄い白色をした刀身、そして妖刀以外で、上級の《妖》を殺すことの出来る数少ない刀。やはりこの女は本物の氷神家の人間だ。


「で、どうして、ルカみたいな大物がこんな所にいるんだ?」


 そんなハルトの言葉を聞いて、ルカは少し驚いたような顔をした。


「あら、私の話を信じてくれるの?」


「そんな物騒なものまで見せられて疑えって方が無理だ」


「そっか。私がここに来た理由はパートナー捜しなの。私はいらないって言ったけど現党首、私の父さんに強く言われて、こっちに来たの」


 本当に面倒だわとつぶやいた後に、言葉を続ける。


「ここら辺って何故か中級以上の《妖》の出現率が高いのよね。しかも、感知はされるけど、直ぐに消えてしまうの。ということは」


 ハルトに続きを視線で促す。


「この辺には、そいつらを退治している人間がいるってことか」


 実際ここら辺は中級以上の《妖》がかなり現れる。その原因の一人が今、目の前にいるとは夢にも思わないルカ。


「なるほどな。でお前はそいつを捜しに来たという訳か?」


「そうよ。そいつを倒して、パートナーなんて必要ないってことを父さんに教えて上げるの」


 握り拳を作る。気合い十分と言った感じだ。一方それを見て内心やれやれと思うハルトであった。


「倒せない時は、どうするんだ?」


「そんなことないと思うけど、その時は《朱雀の一族》の次期頭首と結婚させられる。ちなみに期限は高校卒業まで。でもそれまでには絶対見つけ出して倒してやる!もしくは気に入るパートナーを見つけてやる。とにかく、なんとしてもあいつとの結婚は嫌!!あぁ!!顔を思い出しただけでイライラしてきた。確かに、私を含めた次期頭首の四人の中では抜きん出て強いけど、自分の立場を利用して、やりたい放題してるの。その上女好きで、《朱雀の一族》の大抵の女には手を出しているらしいし、それに・・・」


 ここから、ルカの愚痴が延々と続く。ハルトはあんな質問するんじゃなかった、とかなり後悔したとか。


「話しの途中悪いが、そろそろ帰らないか?」


 長話をしすぎたようで、もう下校の時間をとうに過ぎていた。日も沈みかかり辺りを闇が支配し始めていた。


「そうね、もう大体のことは話したし、残りは帰り道にでも話すわ」


 まだあるのか、とハルトはげんなりしたが、あと少し我慢すれば解放されるという希望が見えただけ、精神的には楽になった。

 いったん教室に戻り、荷物を持って学校を後にした。この間ずっとルカは《朱雀の一族》の次期頭首とやらの悪口を言っていた。よくもまぁ、そこまで悪く言えるなとハルトが感心するほどの内容だったらしい。しかも、ルカの借りているマンションがハルトの家にかなり近いところにあるので、帰り道はほとんど一緒だ。


「そう言えば、ハルトは強い人って知らない?」


 二人は並んで歩きながら会話を交わしているもう少し寄れば手がぶつかってしまうぐらいの距離だ。ハルトは壁際を歩いているのでこれ以上ルカからは離れられない。


「強いってどれくらいの強さだ?」


「常人離れしているぐらい強い人」


「いるな」


 ハルトの口から自然にそんな言葉が漏れてしまった。直ぐに口を紡ぐが一度出てしまった言葉は口に戻ってこない。


「うそっ!だ、だれ!?」


 ハルトの胸元を掴んでググッと寄って問いつめる。言葉に困ったがどうにかごまかそうと口を開き掛けたとき、気味の悪い叫び声が聞こえた。


「・・・!!」


 ルカはハルトを解放して直ぐにその叫び声の方に駆け出す。ハルトもルカの後を追う。人間の叫び声ではない、あれは《妖》が戦闘態勢になったとき、相手を威嚇する為に上げる特有の叫び声だ。方向的にこの近くにある公園から聞こえてきたようだ。



 二人は直ぐに公園に着いた。するとそこには、女の子と、その二倍はあろうかという筋肉質の大男がいた。両方とも見た目は人間に見えるが、大男の背中から生える大きな気味の悪い翼が大男を人間とは違う生き物だと認知させてくれる。そして女の子の方は黒く艶のある髪の毛が腰下まで延びている、ハルトのよく知る人物、妹のユキヨだった。ユキヨは《妖》と対面しながらも尚、無表情のままで、その大男を正面から見据えていた。

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