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49.他力本願結構、勝てば官軍なのだから

読者の皆々様ぁー(小声)

大変な長らくお待たせいたしましたぁー(凄く小声)

詫びは用意してるのかですと?(超小声)

勘弁してくださぁぃ……(消え入りそうな声)

どうもぉ、こっそり投稿の、こっそりトマトでしたぁ……(消滅寸前の声)



 初撃で死ななかったのは、ただただ幸運でしかなかった。



 アクノロギアは、腕を薙いだだけである。



 たったそれだけで、空間が抉れた(・・・・・・)

 撒き散らされたのは、純然たる無色の『破壊』。

 空を切ったはずなのに、何かを(・・・)壊したのだ(・・・・・)


(気体を、壊したっ!?)


 信じられないが、本当にそんなことが起きたのだ。

 その証拠に、真空空間にこぞって空気が流れ込んだ。


《森羅万象が我の破壊対象だ。三態の概念などで、我が破壊から逃れ得ぬ》

「なあるほど、わかんない!」


 ミラは理解を放り投げた。

 だが、それが正解だ。

 なにしろ、上位種の『権能』とはそう言うものである。

 人間の理解では及ばないのだ。


 アクノロギアの『権能』は、至ってシンプル。

 己の魔力に触れたものを、消滅させるというもののだ。

 肉体、ではない。

 なにしろ竜にとって肉体とは、使い捨ての器だ。

 それで能力を使うことはできないし、できたとしてもそれは肉体に能力を定着させることである。

 もしも肉体が喪失すれば、それが齎すのは己が『権能』の喪失。

 故に、魂に起因する魔力に己の『権能』を預けているのだ。


「……どうしよう、勝てる気がしない」


 先の一撃で、己に勝機がないことはわかった。

 これだけで既に最早埋めようのない、隔絶した差を悟った。

 そして、アレだけでも先日戦った、スコルを凌駕しかねない力があるということが理解できてしまった。


「…………けえど、やらなきゃダメだよね」


 ていうか、やらなければ死ぬのだ。


「なら、やるっきゃないよねぇ!!」


 ミラは駆ける。

 真正面切って、あの黒竜の首を掻っ切るために。


《善かろう。搦め手でもなく、策謀を巡らすでもなく、正面から挑むというのであれば、全力で手加減(・・・・・・)してやろう(・・・・・)

「ナメるなぁ!!」


 ミラの咆哮が暗黒空間に響き渡り、裂帛の気合が迸った。

 されどアクノロギアは、それを超越者としての視点で睥睨する。


《未だ人の身を脱却できていない身で、全力を出してもらえると驕るなよ》



 ぞくり、と。

 全身の肌が粟立つ。

 この場に留まれば訪れるのは、死のみ。

 ミラは全力で、横へと跳び退る。



「ぐぅ!」


 刹那、先程までいた空間が消失した。

 ぽっかり、とそこにあったもの全てが、消えたのだ。


「やっぱそれズルいなぁ!」


 触れれば自分の肉体は、この世から消失するだろう。

 なにしろ、あれから身を護る術を己は持っていない。

 もしもあったとしても、皆目見当もつかない。


《実力を持つ者は、相応の武器を持つものだ。下位の実力者からすれば、等しく卑怯に思えるかもしれぬがな》


 確かに、余りに強すぎる力は、正々堂々闘っても卑怯ととられる。

 リースなどが、その具現だ。

 彼女は、上位種の力を使わずとも、上位種を降せる。

 それ程までの高みにあっては、同じ人間であっても卑怯に映るだろう。

 何かしらの、ズルをしてると思われる。

 彼女は、ただ武を磨き、高めただけだというのに。


《我は、ただ生まれ持ったものを活用しているにすぎんよ。そも、只の人間からすれば、貴様の竜人としての力も、反則に映るだろうさ》

「ははは、御尤も」


 確かに、その通りだ。

 要は、生まれ持ったか、高め上げたかの差でしかない。

 力に貴賤はなく、ただ平等なのだ。


「なあら、生きるために頑張らせてもらおうかな!!」


 ミラはそう言って、踵を返して全力で走って逃走を始めた。


《成程、正面から闘っても勝ち目がないとみて逃げ出すか。悪くない》


 だが、と、アクノロギアは付け加えた。



逃げられるほど実力は(・・・・・・・・・・)肉薄して(・・・・)いないぞ(・・・・)



 アクノロギアはそう言って、徐に腕を持ち上げて、不可視の大地に叩きつけた。



 ゴォォッッッッッッッッッッッッ!! と。

 衝撃波がミラの足元で爆裂し、彼を宙へと放り投げた。



「うぇ!?」

《やれやれ、この程度で体を浮かされるとは情けない。ミカエルの一割もの技量があれば、そのような体たらくとはならんぞ》

「まだ修行中の身だからね!!」


 ミラは即座に体勢を立て直し、地面に着地する。

 そして意識を、アクノロギアへと注ぎ、彼の行動を把握しようと視線を向けて。


《遅いぞ》

「な、ぐぁ!?」


 背後からの声に驚愕し、衝撃で体を粉々にされたと思わされ、吹き飛ばされる。

 意識も持っていかれた、地面に顔を削られる痛みで引き戻された。


「がはっ、けほっ、うぅ……」


 吐血し、咳き込んだ。

 意識はもうろうとしているものの、己のやるべきことはわかっている。

 立ち上がって、生き残るのだ。

 アクノロギアの言う通り、逃亡は不可能だ。

 ならば、回避乃至迎撃といった対処的行動に務める。

 なにがなんでも、生き残るのだ。


「って、え? あれ?」


 その思いとは裏腹に、体が動かない。

 何故か、脚に力が入らないのだ。

 何が起きているのか確かめるべく、脚を見てみると。


「あちゃー、やっちゃったか」


 そう言って、ミラは苦笑した。

 己の足が、正確に言えば右膝があらぬ方向へと曲がっているのだ。

 これでは、立つことすら叶わない。


《…………どうやら、ここまでのようだな》


 こちらの負傷を見止めたアクノロギアが、そんなことを言ってきた。


「……………………」


 それに対し、ミラは沈黙を返した。


《……大したものだ。その沈黙は、諦観からくるものではなく、抵抗故のものか。未だ、足掻くというのか》


 感嘆からくる、その勝算を聞き流し、現状を打破すべくミラは必死に頭を巡らせる。

 まだ、死にたくない。

 やっと、居場所を見つけることができたのだ。

 両親が他界したその時から失ってしまった、何よりも価値あるかけがいのないもの。

 二百五十年という、長い空白を経て、やっと取り戻せたのだ。

 もっとあそこに浸っていたい、もっとあそこにいたい、もっと彼らと、時を過ごしたい。


《その不撓不屈ぶりを、我は認めよう。それに敬意を表し、これより我が放つ一撃を生存して見せたら、この試練に打ち克ったことにしようではないか》

「…………本当に?」

《ああ、二言はないとも》


 喜ばしいことに、光明が見えた。

 正直、二撃三撃と攻撃を繰り出されては、生き残る確率は万に一つもないと思っていたが、一撃だけならばなんとかなるかもしれない。


《だが我は、お前がこれを凌げるとは、微塵も思っていない》

「え……?」


 アクノロギアからの言葉に、ミラは呆然とする。

 そんな彼に構わず、竜王は言の葉を紡ぐ。


《これより我が放つ一撃は、お前が『神鳴』と呼ぶものだ。無論、お前のそれと我のそれとは、比較にならん。詰まる所これは、冥土の土産というやつだ》


 アクノロギアは大きく口を開けて、口腔内を晒す。

 その刹那だ。



 ゾクリ、と。

 寒気と怖気が全身に走ったのは。



 彼の口腔内に、どんどん黒いナニかが集っていく。

 初めて見たはずなのに、見覚えがないはずなのに、それが何なのか、ミラには本能的に理解できた。

 偶然発見して以来、ずっと使い続けてきた、己が最も信頼してきた奥の手。


「あれが、本物の、『神鳴』……」


 己が使ってきたそれは、三色が絡み合った芸術美があったが、あれは違う。

 適当にペンキをぶちまけて、混ぜたことでできたかのような黒、美しさなどない。


《さらばだ。来世は普通の人の子として、生れ落ちるがいい》



 そして、『破壊』は放たれた。



(だけど、問題ない(・・・・)!)


 しかしミラは、それを問題ないと断じた。

 確かに、あれに触れてしまえば最後、この身は塵すら残さず消滅するだろう。

 だがそれは、当たればの話だ。

 幸いにして、あの『破壊』の速度は遅かった。

 意外なことに、あれの速度は子供の全力疾走程度。

 視界全てを覆い尽くすほどの太さと高さでこちらに迫っては来ているが、その程度の速度、音速の領域に足を踏み入れている己であれば足が使えなくとも腕さえ使えれば脱出は容易い。


(あ、れ……?)


 いざ回避に移ろうとして、そこでミラは気がついた。


(なに、これ……体が、動かない)


 いや、動かないわけではないのだ。

 驚くほどゆっくりと、スローモーションのように、少しずつ動いている。

 体が重く、水の中にいるかのような不自由さの中にいることに、ようやくミラは気が付いた。


(ああ、そうか、私の世界が、遅くなってた(・・・・・・)んだね)


 聞いたことがある、人は死ぬ直前になると、目に映る光景がゆっくりになると。

 その遅くなった世界の中で、思い出がフラッシュバックして、人は人生の追体験をする。

 いわゆる、走馬灯というやつだ。

 今自分は、走馬灯をしているのだ。

 音速で動くミラの動きが、あくびが出てしまいそうな鈍い動きにまで落とす、この遅くなった世界の中で、あの『破壊』は子供の全力疾走程度の速度でこちらに迫っている。

 それを鑑みるに、あれはとんでもなく速い。

 成程、アクノロギアが絶対に避けられないというのも納得だ。


(私の、人生か……)


 遅延した世界で、ミラは己の人生へと想いを馳せる。

 この世に生れ落ち、それこそどこにでもいる子供のように愛情を注がれて育ち、両親亡くしてからは、自分を殺しにやってくる人間たちと戦うか、森で独り、孤独に泣いていた二百数十年。

 その空白期間を経て、今の仲間たちに出会うことができた。

 彼らとの日常は、それこそまだ数ヵ月にも満たない短き一時。


(あは、ははは、私って、独りだったんだな……)


 そしてここで、独りで死のうとしている。

 両親と過ごした二十数年に、彼らと過ごした数ヵ月。

 それに対して、孤独だった二百数十年。

 幸せだった、楽しかった時間は、寂しかった時間に比べれば瞬きに等しい時間。

 これを思い、自覚して。


「私の本質は、孤独



《なに言ってんだバーカ》



 ゴォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!! と。

 青い炎が壁となってミラの前を『破壊』の行く手を遮った。


「え……」


 突然の事態に、ミラはそんな間の抜けた声を上げた。

 状況が呑み込めず、意味を持たない単語が脳内を走り回る。

 呆けている彼の意識は、優しく置かれた、温かい手によって取り戻された。


《お前は独りじゃねぇっての》


 その声は、最近になってよく会うようになった悪魔のものであった。

 その悪魔は、手慣れた手つきでミラの頭をなでる。


《人の本質ってのは、そう長く在った時間で決まるモンじゃねぇんだ。そいつが、最も輝いたその瞬間に、そいつの本質ってやつはあるんだぜ》


 そう言われて、ミラは自分が、孤独ではないということがわかって、泣きそうになる。

 今にも泣きだしてしまいそうな、涙を必死に呑み込んだ声で、悪魔の名を呼ぶ。


「ルシ、ファー」

《応よ。そもそも、人間なんざ、テメェが望んだって本当の意味で孤独になんてなれりゃしねんだよ。そいつが拒もうが、勝手にずかずかそいつの中に入り込むようなやつはいるんだぜ?》



 この俺のようにな、と。

 弟や妹に笑いかけるように、『魔王』はそう言った。


次回、竜王対魔王

そして、これでこのゴタゴタは終了です。

それが終われば修行をやって、物語を動かし、キャラも出していきます。

ほんと、長らくお待たせしてすみませんでした(巣穴に匍匐後進で逃げていくトマト)


あぁ、聞こえる、週一更新にしろとの、誰かの声が……

週に3つも投稿とかまじ無理なんで、勘弁してください(泣)

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