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46.位階の差

どもども、最近老いを凄く感じているにがトマトです。

バイクでちょっとドジったんですけどね?

まだ肩の痛みがとれないんですよ。

湿布にたよらにゃならいと実感して、嗚呼、年だなぁ、とね?

ふふふ、私は悲しい。



 剣聖

 紅の鋼(カリュプス・クリムゾン)



 この二人は、間違いなく強者だ。

 なにせ、武人としての到達点たる“人の領域”を超えているのだから。

 そも、“人の領域”とは、なんなのか説明しよう。


 人間の反応速度、その速さをご存じだろうか?


 それは、〇・一秒である。

 どれだけ鍛えようと、人である限りこれを超えることは人体構造上ありえない。

 故に、“人の領域”なのだ。

 これを超えることは、文字通り人間をやめることを意味するのだ。



 だからこそ、超人。



 摂理を踏破した、人間にして人間に非ずと呼ばれる化物だ。

 その中でも、彼の二人は上位に食い込む。

 挙動は音を踏破し、当然その速さのものも見切ることができる。

 その二人をして。



 目の前の狼は、手に余る存在であった。



 まず、速い。

 その速度たるや、超常の存在と言える彼らのそれを凌駕していた。

 次に、膂力が強い。

 その力強さたるや、メンバーの中で最も強いレドルノフのそれを上回っていた。

 そして最後に、巧い。

 これは技だとかそういうものではなく、戦い方そのものが巧いのだ。

 年の功というやつだろう。

 いかに人としての規格を外れた強さとは言っても、所詮は若造。

 二、三十の年を戦いに身をやつした練達者や、四、五十の年を戦いにみをやつした玄人のようなそれには及ばない。

 この狼には、それがあるのだ。


《ふむ、摂理を逸したことは、素直に称賛しよう、人の子よ》

「マジかよ、こいつ」

「掠りもしねェとか、勘弁してくれよ」


 戦闘が始まってからずっとルークとレドルノフは、果敢に攻め立てていた。

 しかし、狼には一切通用しなかった。

 ルークの剣技は爪で弾かれ、レドルノフの拳は肉球によって受け取られる。


《されど、我は生れ落ちてから既に、貴様らの及びのつかぬ領域に身を置いている。摂理を逸しただけで、我に届く道理無し》

「かもね。けど、挑むだけならタダだよ?」


 側面から回り込んでいたミラが、狼に蹴りを放った。

 しかし、その蹴りは空を切る。

 凄まじい瞬発力がなせる、バックステップで回避したのだ。


《然り。されど、挑んだことにより、如何な代償がつくかを、勘定に入れておけ、竜人よ》


 狼は何故か大回りをして(・・・・・・)、ルークたちに爪を振るう。

 それを、受け止められないと判断した彼らは、咄嗟に飛び退くことで事なきをえた。

 風を斬り、余波が大地を抉った。

 その威力に内心冷や汗を流しながら、ルークは一つのことを考えていた。


(こいつ、手加減してないか?)


 剣幕や覇気からは、到底加減しているようには見えない。

 ルークとレドルノフの猛攻を難なく捌き、ミラとラルの遊撃をものともせず、シュスの魔法の射撃を掻い潜る。

 これ程のことをできる存在が、未だ敵対者を一人も倒せていないというのは、おかしい。

 先の一撃だって、大回りではなく真っ直ぐ向かってこれたら、対応できたか怪しい。


「…………」


 横目で他の面子の表情を窺って見ると、レドルノフは怪訝そうな顔をしている。

 恐らく、同じ思考に辿りついているのだろう。

 他の面子は、現状に手一杯でそんな思考をする余裕がないのか、そこに気づいた様子はない。


「……こいつ、やる気あるのか?」



(ふざけるな!!)



 狼ことスコルは、ルークの呟きに内心憤る。

 彼とて上位種、それも化生において中位に相当する存在だ。

 彼の役目は、ここにやってきた侵入者の排除。

 その役目を遵守するため、彼は先程から全力でその力を振るい続けている。

 それでも、未だルークらの内一人も撃破できていない。

 その原因は。



 ゾクッ、と。

 再び(・・)背筋が凍った。



 今、自分は死地に立っている(・・・・・・・・)

 このままここに立ち続けていれば、死ぬ。

 故に、したくもない(・・・・・・)大回りをして、彼らに一撃を見舞わなければならないのだ。


(この得体のしれない、殺気さえなければ……ッ!!)


 これさえなければ、とっくのとうに血祭にあげていたものを。


(出所は、あの女か!!)


 殺気を放っているのは、傍観を極め込んでいる女、リースだ。


《貴様、何を考えている!! 回りくどいことをしおって!!》


 スコルは吼えた。

 その真意を、ルークたちは図りかねる。

 リースはそれを正しく図りながらも、どこ吹く風だ。

 それに彼は、歯噛みをした。

 して、しまった。


「おい、流石に気を抜き過ぎだぜ?」


 顎の、すぐ下。

 咢の直下に手、そんな声が響いた。

 そして、鯉口を切る音が響く。



「散流一閃」



 真っ当に抜いて(・・・・・・・)音速で斬りかかるなぞ、児戯。

 それでは、真の疾さには追いつけぬ。

 腰で抜き、腰で切る。


 (いち)(はじめ)(はじむ)(おさむ)


 なんでもいい。

 只、一文字で抜いて切る。

 でなくば、追いつけぬ。

 でなくば、先はない。

 でなくば、辿りつけぬ。

 でなくば、先はない。

 それらの術理を体現した、神速の立居合。

 それが、スコルの首を刎ね飛ばさんと、迫ってくる。


《う、うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!???》


 避けねば、死。

 雑念を消し、只回避にのみ注力する。

 足に力を籠め、膝を曲げて、バネとする。

 飛び退こうとする、その刹那。


「クリムゾンフォール!!」



 周囲が業火によって埋め尽くされた。

 頭上より降って舞い降りた、火球が大地に墜ちた瞬間に、この地獄絵図を作り出したのだ。



《『法』に縛られし力など……ッッッ!!》


 そう、怖るるに足りず。

 突然のことに、つい反応して身を固くしてしまったが、火力不足。

 故にこの炎の壁を突破して、居合から逃れることは、できる。


「どこに」

「行くのかな、狼くん」


 一瞬の、間隙だった。

 しかし、それが命とり。

 その間を縫い、ミラとラルの腕が、がっしりとスコルの後脚を掴んだ。



「お座りしてろやァ!!!!!!」



 ズゴッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!! と。

 レドルノフがスコルの頭に手を据えて、全力の発勁を見舞った。

 スコルは衝撃をこらえ、地面に顎をぶつけるという事態をなんとか免れる。

 されどそれは、その場への停滞を意味する。

 故に、その先に待つは、死。



《図に乗るなよ、人の子がァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!》



 その咆哮は、正しく天災であった。

 地表をめくりあげ、天を裂き、空を薙いだ。

 撒き散らされたるは、純然たる破壊。

 その余波を、発生源のすぐ近くに立っていたルークたちは、一身に受け、吹き飛ばされてしまった。


「なッッッ!?」

「ぐァ!?」

「うっ!!」

「うぉ!?」

「うわ!?」


 ただの一吼え。

 されど、それだけで形勢をひっくり返されてしまった。

 これが上位種、理不尽の権化の力だ。


《人の子に、全力を出してしまうとは。我ながら、情けなし》

「チッ」



 スコルの雰囲気が、切り替わった。



《一度目にしたのだ。ならば、我が全力でそなたらを屠ろう》


 来る。

 上位種の、全力が。

 実力差は火を見るよりも、明らか。

 勝つか負けるかではなく、誰が生き残れるか(・・・・・・・・)

 戦闘から、狩りと抵抗に変わる、一瞬手前。



《「そこまで」》



 制止の声が、響いた。





 それは、余りに神々しかった。

 纏っている覇気が、格が、神気が、余りに圧倒的過ぎた。

 先程まで戦闘をしていた、あの狼とは比べるくもない。

 いや、比べることすら烏滸がましい。

 これこそが、神狼と呼ぶべき存在なのだろう。

 それ程の、存在が現れたのだ。


《スコルよ、余りに騒々しい故見にきたが、何の騒ぎだ》

《父よ……》

《言い訳は不要。我は、説明を求めている》

《はっ。私めは、ここに侵入してきた人間どもに誅を下そうとしておりました。先程までの騒音は、それにございます》

《そうか……》


 神狼は、ルークたちに一瞥をくれた。

 そして、詰まらなそうに鼻を鳴らす。


《摂理を逸した程度の人間に、ここまで手こずったとは。貴様、また慢心したな?》

《ぐ、言葉も、ありません》

《慢心は、毒だ。それを、夢忘れるな》

《はっ》


 スコルは、項垂れるかのように、頭を垂れた。

 それを見て、リースは口を開く。


「話は終わったかしら? そろそろ、こっちの話もしたんだけど」

《ふむ……》


 神狼は、徐にリースを見下ろした。

 観察し、彼は一つのことに気がつく。

 この女は、己に全く臆していない。

 彼は全く、存在するだけで放ってしまう己が圧を抑制していないというのに。

 肝の据わった人間だ、と神狼は内心思う。


《単刀直入に訊くとしよう。何用で、この地に足を踏み入れた》

「あはは、ストレートね。もう少し、駆け引きとかしないの?」

《ふん。貴様はどうにも、きな臭い。貴様のような人間とは、無用な話をしないのに限る》

「あっそ。なら、ズバッと用件言っちゃいましょうか」


 リースは、本当に用向きを包み隠さず言い放った。


「私の後ろにいる人間たちの誰か一人と、契約してほしいのよ、『神獣』フェンリル(・・・・・)

《…………ほぅ?》



 フェンリル

『主神』が一柱、オーディンを喰ったとされる、悪神ロキと巨人アングルボザの間に産まれた、怪物。

 神々の最終戦争、神々の黄昏(ラグナロク)にて死んだとされているのだが。



《ふん。上位存在が、蘇ることは珍しいことではない。勿論、我も含めてな》

「そういうこと。ルシファーとかだって、前に生き返ったでしょ?」


 成程、なんともズルい存在である。


《しかし、小娘。貴様、それなりに上位存在の『理』に通じているのだろう? ならば、契約の意味する所を知らぬ訳ではあるまい》

「当然。けど、あんたは、契約をするだけの義理があるはずよ」

《なに?》

「とある男からの、伝言」



借りを返せ(・・・・・)、だそうよ」



 フェンリルは動揺を気配に出した。

 それから、無言で鼻をひくつかせる。


《…………成程。確かに、あの男の臭いがする》


 どうやら、今の行為は臭いをかぐものであったらしい。


「それで、どうかしら? その借りとやらは、あんたが見ず知らずの人間と契約するに値するものなの?」

《よかろう。契約を結ぶことにする。しかし、試練は課させてもうぞ。スコル》

《はっ、ここに》

《アレを、在るだけ此処に持てい》

《御意》


 スコルは風のように疾駆して、そのアレとやらを取りに向かった。


「リース、フェンリルに貸しがあるっていう男ってのは?」

「アンリよ。あいつ、旅をしている途中、色々な目に遭ったらしくてね。その一環で、フェンリルに貸しを一つ作ったらしいわ」


 アンリの人生は、どれだけ濃いものだろうか。

 ここにいる全員が、それなりに過酷な人生を送っているが、彼には劣るだろう。


「まぁ、そのおかげで、こうして『神獣』と楽に契約ができるんだから、あいつに感謝しなさい」

「けどそれでも、試験とやらを乗り越えなきゃだけどな」

《父よ、お待たせしました》


 スコルが戻ってきた。

 その背には、大量の酒樽が詰まれている。


「ねぇ、リース、なにあれ?」

「見ての通り、酒樽ね。お酒が入ってるのよ。ラルは飲んじゃダメよ」

「え、でも、たぶん、あれが試練なんだよね? それじゃあ……」

「今回は諦めなさい。シュスもね」

「ぐっ」

「むぅ」


 お母さんからのストップがかかったことで、子供たちは諦めざるを得なくなった。

 お母さんは未成年なんて認めないのである。


「ルーク、後で覚えてなさい」

「なァ、その読心術から逃れる術って教えてもらえるのか?」

「教える訳ないでしょ?」


 流石は山姥。

 ケチである。


「それで、試練の内容を教えてもらえるかしら?」

《なに、シンプルだ。これよりそなたらには、飲み比べをしてもらう。その中で、最後まで酔いつぶれなかった者と、我は契約しよう》


 要約すると、飲み比べで勝った者と契約をするとのことだ。

 単純だ。

 単純すぎるが故に、逆に疑ってしまう程だ。


「飲み比べに、何かしらの意味があるのか?」

《様式美だ。我は、『神獣』一の悪食でな。我の契約者となると、それなりのものを示してもらわねばならぬ。食べ比べでもいいのだが、こちらの方が早く決まる(・・・・・)


 最後の言葉の真意がよくわからないが、酒を飲むだけでいいのならば文句はない。


「ルーク、レドルノフ、ミラ。あんたたち三人で挑みなさい。私はパスするわ」


 三人は、目に見えて意気込んだ。

 この飲み比べに勝てば、上位種と契約できるのだから。

 いつも喧嘩してばかりの仲間であり、いがみ合うばかりの仲間であるからこそ、譲らない。譲れないのだ!

 ……こいつら本当に仲間なのだろうか。


「それにしても、緩い試練ね。私がウロボロスと契約するときなんて、すごく大変だったのに」

《ふん。今回は借りを返すためのものだ。本来はもっと過酷なものとなっている。だが》

「だが?」


 もし、フェンリルが、人間の顔であれば。

 もしくは、表情が読み取れるのならば。

 今の彼は、凄くワルイ顔をしているだろう。


《容易過ぎる試練を、この我が用意するとでも?》

「へぇ」


 こっちもこっちで、凄くワルイ顔をしている。

 もしかしたら、この二人は気が合うかもしれない。

 三人は、手近の酒樽の蓋を開けた。

 刹那。



 ジュッ、と。

 揮発したアルコールが目に入った。



「「「眼がァ!! 眼がァァァあああああああああああああああああああああああ!!」」」


 三人は同時に、痛みのあまり目を押さえて、地面でゴロゴロした。

 ちょっと洒落にならない痛みなのである、アルコールが目に入る痛みは(力説)。

 シュスとラルは酒樽に歩み寄り、酒を杯で汲んでみる。

 そして、わざと地面にこぼしてみた。



 数秒もしないうちに、酒は蒸発してしまった。



「うわぁ……」

「もうこれ、飲み物じゃないよ」


 子供たち二人がドン引きしてる。

 されどリースは、大した動揺を見せずに。


「酒精は?」

《百%だ》

「「「最早ただのアルコールじゃねぇか!!!!!!」」」


 三人の心が、一つとなった。

 消毒用アルコールなんて生温い。

 なにせあれでさえ、薄められているのだから。


「リースぅ……」

「だーめ♪」

「口調だけ優しい!」


 リタイアしようとしたミラの弱音を、リースはズバっと切り捨てた。

 いや、しかし、これはあんまりではなかろうか。

 余り酒を飲んだことのない、初心者と言っていいミラに、こんなアブノーマルな嗜好の方々ですら手を出さないであろう、飲料とはまかり間違っても呼べない代物を飲ませるのは。

 と、いう目でミラはリースに訴えかけている。


「ミラ、いい? こんな言葉が、世の中にはあるの」

「うん?」

「郷に入れては郷に従え!」

「こんな郷は世の中には存在しないよ!」


 少なくとも、人間には。


「ふぇえん。やだよぉ」


 泣きそうになっているミラ。

 しかしそんな彼をおいて、一人の男が腹を決めた。


「仕方ねェなァ。逝ってやるよ」


 ニヒルな笑みを浮かべて、ルーク・パラシアが盃を片手に行く。

 アルコールを汲み取る。

 そして、それを。


「ふぅ!!」


 一息で煽った。


《お残しは許しまへんで!!》

「ぐぼぁ!!!???」


 ように見えたのだが、全員の死角へと酒を全て零していたらしい。

 確かに見えなかったが、アルコールは臭いがキツく、フェンリルにバレて制裁を受けてしまったのだ。

 狼の嗅覚は誤魔化せなかった。


「ほーら、レドルノフ、ミラ。一気♪ 一気♪ 一気♪ 一気♪」

「「覚えてろよ、畜生!!」」


 いつか泣かす。

 そう心に誓って、彼らは杯にアルコールを汲んだ。

 一体どういうことなのか、何もしていないのにアルコールが徐々に減っていく。


《お残しは》

「「許しまへんでぇ!!」」


 これ以上の躊躇はマズイと判断した二人は、一息で杯を空にした。

 杯を乾かすと書いて、乾杯と読む。

 こらそこ、放っておいても乾くとか言わない。


「~~~~~~~ッッッ」


 レドルノフは喉の焼けるような痛みに声にならない悲鳴をあげ、顔を思いっきり歪めて喉に手を当てる。


「………………………………こふっ」


 ミラは無言で吐血した。

 げに恐ろしき百%アルコール。

 何度も嘔吐することで胃が切れて、その血を吐血するマロリーワイス症候群を一発で引き起こすとは(実際は余りの刺激に喉が裂けた)。


「あ、これはやばい」


 流石のリースも、これは洒落にならないと思ったのか、冷や汗を頬に伝わせた。


「俺は、もう一杯いけるぞぉ……」

「私、もう、無理ぃ……」


 口の端から、血を垂らしたミラが泣きながらギブアップ宣言をした。

 レドルノフは、顔色は悪いものの、確かにもう一杯くらいはいけそうだ。


「死を覚悟すれば、後二杯?」

「勘弁してくれ……」


 レドルノフはより一層顔を青ざめさせた。


《ふむ、となると、我と契約するのは、そこの筋肉達磨か》


 フェンリルの鶴の一声によって、契約者が誰か決まった。

 しかしフェンリルは、どこか思う所があるらしい。


《そやつから、天使の臭いがする。それも、かなり高位のだ》

「こいつ、本当に鼻敏いわね」


 その臭いとは、間違いなくガブリエルのものだろう。

 一切力を使っていないから忘れられそうになっているが、彼は『四天使』ガブリエルと契約しているのだ。

 困ったことに一切力を使えないが、彼は契約しているのだ。


「なにか、不都合があるのか?」

《いいや。只、小僧は天使と事を構えると言っていたから、それが少しな》

「まぁ、和解したのよ、うん」


 リースが、なにやら歯切れが悪い。

 フェンリルは目を細めるが、頭を振ることでその疑念を振り払った。


《虚偽の臭いはせぬから信ずることとしよう。して、そこの人の子よ。名は》

「レドルノフ・フレラだ」

《そうか》


 フェンリルは頷き。


《では、レドルノフよ。ここに、そなたとの契約を結ぶとしよう》


 フェンリルは徐に前脚をあげて、お手をした!!


「ごぶ!?」


 レドルノフは蛙の潰れたような声をあげて、ぺちゃんことなる。


《うむ。我の肉球スタンプはこれで押された。契約完了だ》

「なんかこれ、違くね?」


 レドルノフは呻くような声で抗議をするも、誰もが虫をした。

 しかし、契約はここになったことは事実。

 ここの用向きは済んだので、後は帰るだけなのだが。


「てことは、あの小動物たちの猛威に、また怯えなきゃいけないのか?」


 洞窟から、じっと狩人の目つきでこちらを見てくる愛玩動物たち。

 レドルノフが、フェンリルに訊く。


「なぁ、お前の命令であいつらが俺たちを襲わないようにできないか?」

《可能だ。だが断る!》

「なんでだよ!?」

《面白いからだ!》



 一同が洞窟から出たとき。

 リース以外は皆一様に、体中ベッタベタであったという。

さて、修行、というかこの旅みたいなやつはすごーく巻いていきますよぉ。

さくさくいきます。

スナック菓子みたいに。

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