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40.能力なぞ関係ない、年功序列なんだ世の中は

久しぶりだな(横殴り一発



どうも、にがトマトです。

お久しぶりの投稿になってしまって、申し訳ない。

では、どうぞ。

《それで、反省しましたか?》

「《はい、ちゃんとしてます》」


 リースとガブリエルは、正座をさせれらていた。

 彼女らの前にいるのは、一柱の天使。

 腰にまで届く白髪に金色の瞳の、女の天使。

 他の天使と変わらぬスリットの入った貫頭衣に身を包んでいるのだが、なぜか頭に猫耳カチューシャをつけた天使。

 背には、巨大な十字架を背負っている。


《こんな街中でドンパチとか、馬鹿じゃないですか?》

「ガブリエルが悪いんです」

《相手をしてくれないリースが悪いんです》

《最近、体が鈍ってるから、久々に》


 十字架に手を伸ばす天使に、二人は思わず手の力だけで後ずさる。

 彼女らをして怖れさせる、この天使たちは何者なのだろうか。


「えぇと、あいつ何者?」

《名前はメタトロンっつって、一番初めに作られた天使でな。あいつが、天使のまとめ役みたいなもんだ》

「ん? それって、天使長の役目じゃないのか? てゆうか、一番初めに創られたのって、お前じゃねェの?」

《俺は創られた(・・・・)のであって、作られた(・・・・)わけじゃないの。天使長ってのは人間で言う、社長みたいなもんで、原初の天使であるメタトロンは、会長みたいなもんなんだよ》

「まさかの天使長より偉い?」

《う~ん、それともちょっと違うかな。言うなれば軍隊の頭と政の頭だと、畑が違うだろ? そんな感じかねぇ》

「な、成程」


 分野が違う組織の頭は、必ずわけられる。

 権力を細分化させることによって、牽制させる意味があるからだ。

 それらを統括する頭があったとしても、その頭では、その組織の頭を動かすことはできても、手足を動かすことは難しい。

 結局は、その組織の頭が命令を出すことになる。

 これによって、組織というものは暴走しにくくなるのだ。


《これで私を殴ってください!》

《とまぁそして、度し難いドMでもある》

「天使のトップにはロクな奴がいないのか!?」


 ミカエルの先代の天使長は、このルシファーだ。

 こいつは言わずと知れたファミリーコンプレックス略してファミコンにして、馬鹿である。

 そして『原初の天使』たるメタトロンは、ガブリエルとリースをドン引きさせるほどのドM。

 天使は大丈夫なのだろうか。


《この変態! そんなに痛みが欲しいのなら、自傷行為で満足していなさい!》

《ダメなんです! 誰かの蔑む目もハッピーセットでついていないと、快感は得られないんですよ! 特に貴方方の目は、はぁ、はぁ》

「堕天させましょうよ、こいつ! 今すぐに!」

《あ、うちでの引取りは遠慮させていただきます》


 魔王からすら受け取り拒否されるとは、大したものであるこの変態天使。


《おや? リースさん以外にも、人間がいたんですね》


 ていうかこの天使、今頃気づきやがった。

 メタトロンは一同を見渡して。


《んん!?》


 ルークを目にとめた。

 そして、大股で歩み寄る。


「な、なんだよ……」


 いきなり詰め寄られて、ルークはどもりながらそう言った。

 それにメタトロンは確信したとばかりに頷いて。



《そのヘドロのようなゲス魂に惚れました! 付き合ってください!》

《お引き取りください♪》



 何故かディスられながら告白された。

 そしてその返事を、突然出てきたパンちゃんによって勝手に断られる。

 いやまぁ、受けるつもりなんてないけどね。

 だからシュスよ、そのジト目をこっちに向けるな。


《誰ですか貴女は!? あ、もしかして娘さんですか? お願いします、お父さんを私に下さい!》

《ちーがーいーまーすー! 私は、そうねぇ、剣士さんのあモゴゴ!?》

「はいはい、少し黙ってろ」

《モゴゴゴ》


 余計なことを言いだしそうになったから、パンちゃんの口を塞いだ。

 それを彼女は不満そうにこちらを上目遣いで睨んでくるが、邪悪な笑みを返してやったらさっと目を逸らしやがった。

 それにメタトロンは、むふーっと鼻息を荒くした。


《素晴らしい顔です! 私の脳内アルバム永久保存物ですよ!!》

「それを持ってお帰り下さい」

《むふー! まさかの身柄お持ち帰り許可ですと!》

「ダメだこの変態天使」

《私と婚約して、私の夫になってよ!》

「帰れ」


 ポジティブシンキングにも限度と言うも程がある。

 こんな所は、早々に立ち去るに限る。


「リース、今すぐにでもここから去ることを提案する」

《さ~んせ~い》


 ルークの提案に、これ幸いとパンちゃんが是を唱えた。

 それにリースは苦笑する。


「まぁ、私も同じ気持ちなんだけど、ちょっとやらないといけないことあるからね」

「ん? もうやるこなんざないだろ?」


 レドルノフがそう訊いたが、リースは頭を振った。


「そうでもないのよ。まぁ確かに、ルシファー絡みではないけどね」


 そう言って、リースはガブリエルに向き直った。


「この中の誰か、ガブリエルと契約してもらう」

《リース、私の意見は無視なんですか?》

「いいじゃない。どうせあんたら『天使』や『神』って、力を貸すだけなんだから」

《それもそうなんですが、塵芥に貸す程、私たちの力は安くないんです。まぁ、あなたやアンリ、ケイトならば話は変わりますが》

「私、一柱と一体の上位存在と既に契約してるからね。これ以上は必要ないわよ」

《ですよね》


 ガブリエルはさほど、残念そうな顔をしていない。

 彼女からすれば、ただの確認だ。


「それで、リース、私たちの内、誰と契約させるつもりなの?」


 ラルを肩車しているミラが、そう問うてきた。

 待つのが退屈だったのか、遊んでいたらしい。


「そうねぇ。ミラは竜人という特性上、上位存在と一体化(・・・・・・・・)してるようなものの上に、ルシファーと契約する予定だしね。ラルにはアスタルテがいる。そしてルークには、パンドラ。フリーなのはレドルノフとシュスだけだから、今回はレドルノフかしら」

「理由は?」

「シュスはまだ弱すぎるから、ガブリエルの力に振り回されるでしょうしね」


 あんまりな評価に、シュスは肩を落とした。

 それを哀れに思ったのか、パンちゃんが彼女の肩に手を置いた。


「という訳で、ガブリエル。あんたの能力の解説、よろしく」

《えぇ、承りました》


 ガブリエルは一歩前に出る。


《私の能力は知っての通り、『神の告知』と『水』です。『神の告知』は本来、私のではなく父である『原神』の能力ですので、契約を結ぶことによって得られる能力は、『水』です。さてこの『水』ですが、私が操っているのは液体である水ではなく、分子である水なので、応用することによって私は三態を制御することができます》

「あ、だから氷を出すことができたのか」

《えぇ。それに拡大解釈してしまえば、温度とは分子運動。水分子を制御化に置いている私は、気温も操ることも可能にしています》


 成程、これは使い勝手が良い。

 とにかく、応用が利くのだ、これは。

 なれば。



「レドルノフ、これ使いこなせるのかな?」

「「「「「……………………………………」」」」」



 皆が黙っていたことを、ラルがずばっと口にした。

 そう、レドルノフは馬鹿なのだ。

 具体的には、足し算引き算を間違える程の。


《それと私の契約による代償は、知能指数、俗に言うIQの三分の一をもらうことです》

「やめて! レドルノフの脳みそはもうゼロよ!」

「裏声やめろ、外道ロリコン剣士!」


 レドルノフの叫びに、ガブリエルは補足する。


《大丈夫です。知能指数というのは、閃きなどといった発想の類のことですので、記憶が飛ぶなどといった事象は一切起こりません》

「応用力が試される能力なのに、それを制限しちゃいます!?」

《それが代償ですので》


 そこでメタトロンが突然、名乗りをあげた。


《Hey☆ そこの下種魂が素敵な兄ちゃん、契約はできないけど婚約はできる『神の代行者』はいかが☆》

「帰れ」


 割り込んできた挙句に、ロクでもないこと言いやがったよ、こいつ。

 そしてパンちゃん、半眼なんてやめなさい。


「どうして、契約はできないんだ?」


 メタトロンの発言の違和感の正体を、ドストレートにシュスがついた。

 それに彼女は、正直に答える。


《もう既に契約者がいるからですよ。私たち上位存在に、契約者の数の縛りなんてものはありませんが、それでも多数の契約者と契約を結ぶことは、あまり良いことではありませんので》

「どうして?」

《下界のパワーバランスが崩れるからですよ。過ぎたる力はその者だけではなく、周りまでも崩壊させます。扱うに相応だとしても、周りに影響を及ぼすのは確実》

「成程」

《あ、けど安心してください! 彼女とは、清い関係ですので貴方様が心配することも、心置きなく私を穢すこともノープロブレム!!》

「うん、黙れ」

《あぁ、ゾクゾクします》


 頬を上気させ、恍惚の表情を浮かべるメタトロンに、一同はドン引きするしかない。

 そんな顔見たくないと言わんばかりに、シュスが問いを投げる。


「その契約者とやらは、お前お好みの、汚い人間なのか?」

《えぇ、汚いですね。経歴もそうですが、血糖値的な意味でも》

「え? なにそいつ、生活習慣病なの?」


 ロクな人間を選ばないな、こいつ。


「なんでそんなやつと契約したんだよ……」

《まぁ、一種の贖罪というやつですかね。私が直接的な原因ではないものの、彼女の師匠を死なせることになってしまったので》

「え、なに、人間と戦ったの? そいつ、強かった?」

《そりゃあ、もう、べらぼうに強かったですよ。かなりご年配でしたがし、リースさんたちには及びませんが、私に一太刀浴びせるくらいには人間辞めてましたよ、あれは》

《へぇ、お前をしてそこまで言わせるなんざ、凄ェな、そいつ》


 メタトロンの賞賛に、ルシファーは素直にそうコメントした。

 その会話がそこそこ続くと判断したのか、リースが口を開く。


「はいはい、脱線はそこまで。で、ガブリエル、そこの脳筋と契約してくれるの?」


 リースの問いに、ガブリエルは苦い顔をする。

 あ、これ答えなんとなく読めたわ。


《正直、気は乗りませんね。人格、実力ともに悪くないとは思いますが、肝心の知能指数はあまり高そうには見えませんので》

「まぁ、馬鹿なのは否定しないけどね。こいつ、土壇場での閃きはそこそこよ?」

《ほう、あなたがそう評するのであれば、そうなのでしょうね》


 ガブリエルの中で、レドルノフの評価が上方修正されたらしい。


《それでは、知能指数を測らせてもらいますが、構いませんか?》

「おう、いいぞ。俺はどうすればいい?」

《何も。ある種プライバシーの侵害なので、許可をもらっただけです》

「そ、そうか」


 ガブリエルの言葉に、レドルノフは顔を引きつらせる。

 しかしそれに彼女は構うことなく、『神の告知』を使ってから。



《ペッ》

「何故!?」



 レドルノフに唾を吐きかけた。

 特殊な業界であればご褒美なのだろうが、彼にそんな趣味はないため回避を選択したのである。


「いきなりなにしてくれてんの!?」

《黙りなさい。知能指数5のゴミタンパク質が、ハッ》

「散々な言い様な上に鼻で笑われた!?」

《本当に霊長類なんですか? チンパンジーでもまだマシな数値をしています》


 なんとレドルノフのIQは、たったの5しかなかったらしい。

 そりゃあ、馬鹿な訳だ。


《という訳でリース、申し訳ありませんがこの件はなかったことに》

《ガブリエル》


 ガブリエルの言葉を遮って、メタトロンが優しく彼女の肩に手を置いた。

 それにガブリエルは訝しげな顔をして、振り向く。

 彼女の視線の先に立つメタトロンは、凄く良い笑顔で会いたての親指を立ててこう言った。



《『原初の天使』としての命令です、契約しちゃいなさい♪》

《はぁ!?》



 ガブリエルは素っ頓狂な声を出すが、メタトロンの笑顔に些かの歪みなし。

 気味の悪い程の不動のまま、彼女は言う。


《天使長と言えど、序列は私の方が上です。序列は、絶対!! ぐだぐだうだうだ言わずに彼と契約しなさい!》

《いやいや、どうしてそうなるんですか!?》

《人間らしい貴女が見られ、観察できるからです!!》

《言い直そうとしたけど言い直さなかった!?》

《チッ、そうですけど?》

《まさかの逆ギレ!?》


 叫ぶガブリエルだが、このやりとりに意味がないことを悟っていた。

 メタトロンの方が、ガブリエルよりも序列が上だからである。

 確かに強さは、ガブリエルの方が上だ。

 伊達に最強の代名詞たる、天使長をやっていない。

 しかしそれだけで、序列は決まらない。

 ガブリエルの方が強く、事務処理能力が高く、人望があり、実績もあるが、それで序列は決まらない。

 そう、序列とは。



 キャリアで決まるのだ!!



 メタトロンは初めて作られた、原初の天使だ。

 ルシファーは初めて創られた天使なのだが、互いに気がついたらいたので、どちらが年上なのかは定かではない。

 話は逸れてしまったが、メタトロンと同等のキャリアを持つのは、ルシファーだけということが言いたかったのだ。


 原初の天使と、後釜の後釜の天使長。


 どちらのキャリアが、凄そうに聞こえる?

 勿論、前者である。

 この序列には基本的に従わなければならず、それは現天使長たるガブリエルも例外ではない。

 という訳で。


《そこの全身筋線維、三秒以内にこっちに来てください》

「え? なにをいきなり



《はい、いーっち!》



 ズッドン!! と。

 重々しい音ともに、レドルノフ並の大きさの氷柱が今しがたいた地面に突き刺さった。


「危ねェ!!!???」


 当然今しがた、と言ったからわかっていると思うがレドルノフは、ヘッドスライディングで回避することに成功していた。

 彼は氷柱を見て、あれが直撃したらと言う想像に身を震わせる。


「二と三はどうした!?」

《二と三? あなたにそんな数字を理解する頭があるんですか? あなたという筋肉は、一だけ覚える頭しかないに決まっている》

「ひどい罵倒だ!!」


 それにガブリエルは、無言の笑顔で応える。

 素晴らしい、華の如き笑顔だ。

 嗚呼、リースの笑顔を見ているようで震えが止まらない。

 加えて、彼女の背後に四本の氷柱がアンハッピーセットでついているのだから尚更である。


挿絵(By みてみん)


《いいからとっととこっちに来やがれ、冷凍してマグロみたいに解体すんぞ?》

「はいぃぃいいいいいいいいい!!!!!!」



 レドルノフは恐怖に負け、言うがままにされるのであった。





 因みに、これが、後になって彼を救うのだが。

 この時は誰も、知る由がなかった。

次回で、大天使の剣は完結(予定)!


次は、修行編に参りたいと思います!

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