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39.ファミコンはめんどくさい

すみません、一週間とか言っときながら凄い間が空いてしまいました。

実は児童ホームのバイトをさせていただいていたんですが、疲れてしまったんです。

楽しかったんですけどねぇ、疲れたんですよ。

ストレスはたまらないけど、疲労はたまるんです。


では、どうぞ。

 ルークとレドルノフは毒霧を吸い込み、気絶してしまった。

 しかしそんな彼らを、誰も助けようとしない。

 何故かって?

 まだ毒霧が漂っていて、近づけないからである。


「ねぇ、ガブリエル。あの霧って風で払うことはできないの?」

《勿論できますが、折角狭い範囲に集まっているのに、被害を広げる訳にもいかないでしょう》

「そっか、仕方ないわね」

《幸いにして、あれは致死性のものではありません。サラカエルが正気に戻れば、散らしてくれるでしょう》

「うん、そうしましょう」


 流石は数年に渡る付き合いである。

 命に別状なしとわかっているのであれば、どれだけ苦痛が伴おうと放置するということを即座に決めてしまった。



《ええい、許せ妹よ!! 安眠!!》

《そんな、ひどい兄さん!!》



 刹那、サラカエルは糸の切れた人形のように意識を失った。

 彼女の体を、ルシファーが優しく抱き留める。

 そして、ルシファーは汗をぬぐうような動作をした。


《ふぅ、抵抗力強めてなかったようだな、助かったぜ》

「え? それ、抵抗できるの?」


 ミラからの問いに、ルシファーは頷いた。


《当然な。こいつは、俺の言霊で世界に干渉して、理を歪めるって代物なんだ。詰まる所、俺が為した干渉よりも大きな力で抵抗すればなんとかなるんだ。ガブリエルには、こいつは効かないぞ。俺の全盛期の言霊でもな》


 ルシファーの言葉に、ガブリエルは頷いた。


《相性というやつですね。私に『原神』から与えられた能力、『神の告知』は、情報を送受信するというものです》

「それ、強いの?」


 ラルの問いに、ガブリエルは肩をすくめる。


《元来私の役割は、情報の伝達です。ですので、戦闘能力はさして必要ないんですよ》

「の割には天使長やってるけどねー」

《て言うけど、一晩で一つの都市滅ぼしてるけどなー》

《二人とも、黙るのと黙らされるのどちらがいいですか?》

「《ごめんなさい》」


 二人の謝罪を聞き入れて、ガブリエルは説明を再開した。


《ですがこれは、情報であれば何であれ送受信が可能となる。例えば、人間の体は脳から発せられる電子情報によって管理されている、というのはご存知ですか? その電子情報を私は受信し、読み取ることで相手の思考、行動の先読みを可能としているのです。そしてルシファーの力は、言霊によって世界に干渉し、歪めるというもの。ならば私はその歪みを、世界に情報を送ることで報告すればいいんです。そうすれば抑止力が働いて、歪みは消滅します》


 反則じゃないかこの力?

 てゆうか逆にこれ持ってて、今までに番手だったって、ミカエルは一体どれだけ強かったのだろうか。


《まぁ、解説はこれにて終い。そろそろあいつら助けるか。霧散。解毒。気付け》

「「ふわぁ!?」」


 ルークとレドルノフが、弾かれたように起き上がった。

 それにルシファーが、満足そうに頷く。


《さて、そろそろ次行こうぜ? 残る『剣』は後二つ。喜べ俺。俺の願いは、ようやく叶うんだ》



 ルシファーの哄笑が響き、近所迷惑と判断したガブリエルが生み出した水で彼を吹き飛ばした。





 一同は、近場の反応の下に辿りついた。

 そして彼らが見たのは、二柱の天使。

 ざっくらばんに切り揃えられた金の短髪に、黄色の瞳を宿した男の天使。

 服装は貫頭衣に、黄色のコートを羽織っている。

 もう片方は伸ばし放題にボサボサのセミロングの金髪で、目は閉じていてる女の天使。

 服装は貫頭衣に、白色のコートを羽織っている。


《ラミエル、ラグエル》


 ガブリエルの声に男女の天使は反応し、こちらの方に向き直った。


《お、姉さん。どうしたんだよ?》

《今は探し物の途中でしてね。貴方たちのどちらかが、それを持っているようなんですよ》


 そう言われて、二人は互いに顔を見合わせた。

 恐らく、心当たりがないのだろう。


《探し物は、『大天使の剣』です。形は玉なんですが、わかりますか?》


 ラミエルは、はっとしたような顔をして、貫頭衣に手を突っ込む。

 そして、件の『剣』を取り出した。


《もしかして、これのことか?》



《それそれそれそれ、それだよォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!》



 今まで後ろにいたルシファーが、眼を血ばらせながら彼に走り寄った。

 刹那。


《うおぉ!?》

《ゲボァ!?》


 驚いたラミエルに殴り飛ばされた。

 ルシファーは錐もみ状に飛んでいき、綺麗なアーチを描く。

 ラミエルは驚きが大きかったようで、息を荒くしながらガブリエルに訊いた。


《ぜぇ、ぜぇ、姉さん、どうしてルシファーが天界にいるんだ》

《ですから、探し物ですよ。『大天使の剣』には、ルシファーの力の七割が封じられているだそうですので》

《あ? あいつの力、戻すの?》

《えぇ。別に、戻ってしまっても問題ないでしょう。もしも彼が悪事を働こうとしても、私はもちろんのこと、アンリたちの力も貸してもらいます》

《ルシファーが、悪事ねェ……》


 ラミエルの含みのある言い方に、一同は苦笑する。

 まぁ確かに、ルシファーが悪事を働くとは思えない。

 ルシファーは、自分の我儘で動くことはないからだ。

 彼が動くときは、必ず誰かのため。

 共感、あるいは同情を彼が抱くことによって、はじめて彼は力を振るう。

 そんな彼だから、不義理なことをするはずもないし、悪事を働くとは思えないのだ。


《ラミちゃーん、それくれよー。俺、もう他の悪魔たちのあのゴミを見るような視線に耐えられないんだよー》

《だぁ、こっちくんな!》

《あふん!?》


 またルシファーが吹っ飛んだ。

 しかし諦めない!

 ルシファーは諦めない!

 知ってるか? 魔王様からは逃げられないのだァ!!


《それちょ――――――――――だい!!》

《やるから落ち着け!!》

《……………………》

《本当に急に落ち着くな、気色悪い!!》


 ラミエルの言葉に、ルシファーはしょんぼりしたような顔をする。

 しかしそれを彼は無視して、こう言い放った。


《これはやるよ。ただし、一つ条件がある》

《なんだ?》

《三回回ってワンと言え》


 刹那、ルシファーは躊躇なく三回回って。



《ワンダフル!!》



 と全力で叫んだ。

 彼としては、面白いことを言ったつもりなのだろう。

 しかしどうだ!

 周りの視線は氷河期のように冷たい!


《あの、ごめんなさい。ちょっとふざけました》

《いやそれよりお前、魔王としてもプライドとかないのか?》

《ないね! プライドって邪魔だし!》


 ルシファーが余りにも強く言い切ったので、周りは二の句が継げなくなってしまった。

 論破したとでも思っているのか、凄いドヤ顔である。

 そんな彼にラミエルが。


《あ、すまん。本当にやるとは思ってなかったから冗談のつもりだったんだ。だからまだやらないぞ?》

《騙したなブラジャー!》

《誰が女性もの下着だ!》

《兄弟が俺に嘘を吐いたんです! 助けて天使様!》

《目の前にいるの天使だし、お前も元それだから!》


 ルシファーは、涙目になりながら彼に問うた。


《それで、条件ってのはなんなんだ?》

《ああ、たった一つシンプルだ。俺とラグエルの二人を相手取って、闘ってほしい》

《えぇ……それは流石に……》


 本当に、シンプルな条件だ。

 しかしルシファーは、難色を示した。

 家族と闘うことに、忌避を覚えているのだろう。


《ワンサイドゲーム詰まらないしなぁ……》


 違った。

 ただ単に詰まらなそうとかそんな自分本意な考えであった。

 そんな彼に、先程からラグエルの頭を撫でていたガブリエルが口を開く。


《そう言わずに、相手をしてあげてください。彼らは彼らなりに、研鑽を積んでいます。どれだけ成長してるか、見てあげても罰は当たらないはずです》

《うーん、そうだな。ちょいと胸を貸してやるとしよう》


 ルシファーはそう言って、肩を数度回す。

 そして、こう言い放った。


《けど、全力は大人げない。つぅことで、指一本で相手してやる》



 ルシファーはゴミ箱に頭から突っ込んだ。



 それはもう、清々しくなる程の瞬殺劇であった。

 口に出すには憚られるような惨劇が繰り広げられた挙句に、彼は錐もみ状に飛び、頭からゴミ袋に溢れかえったゴミ箱に頭から突っ込んだのである。

 どうでもいいかもしれないが、ゴミ袋に詰まっているのは、生ごみだ。

 凄く臭い。


《おかしいなー、おかしいなー、おかしいなー、どうして俺は瞬殺されたのかなー。指一本でも、互角に闘えるはずなんだけどなー。パンはパンでも食べられないパンは最強なんだけどなー》

《相変わらず油断の塊のような存在ですね、貴方は》


挿絵(By みてみん)


 ガブリエルの言葉に一瞬喉を詰まらせたような声を出したが、すぐにおかしいなーを連呼し始める。

 そんな彼に、ラミエルがこう言った。


《なぁ、お前のその勘定ってよ、お前が全盛期での計算じゃないのか? それなら、互角になるはずがないだろ》

《………………………………………………》


 今度こそ、ルシファーは沈黙した。

 しかも、姿を隠そうとしているのか、ゴミ袋の山に頭をさらに突っ込む。

 余程恥ずかしかっただろう。


《まぁ、いいや。姉さん、ほら》


 ラミエルがガブリエルに『剣』を投げ渡した。

 ガブリエルはそれを見事キャッチする。

 そしてそれを見計らったのか如く、爆発したが如くゴミ袋を吹き飛ばしてルシファーはゴミ箱から出てきた。


《サンキュー、ラァァァァミちゅわぁぁぁぁぁぁぁああああん!! し、しびびびび!?》

《お前、生ごみ臭いからこっちこないでくれる?》


 雷で痺れさせながら放ったラミエルの言葉に、ラグエルが無言で頷いた。


「なぁ、ラグエル、だっけか? そいつ、なんでさっきから一言もしゃべらないんだ?」

《…………(無言で頬を膨らませる)》

「え? あんた吹き飛ばされたいの?」

「なんで!?」


 リースの突然の脅迫に、ルークは思わず声を荒げてしまった。

 しかしその思いを、リースは勘違いだと諭す。


「違うわよ。『七天使』ラグエルが司るのは、『音』なの。声なんか出したら最後、衝撃波が辺りにまき散らされるわよ?」

「じゃあ、こいつは喋れないじゃなくて、喋らないってことなんだな」

「そうゆうこと」


 そしてそのラグエルは、ガブリエルによってもみくちゃに撫で回されている。

 どうやら彼女、スキンシップが多いらしい。

 これが、アンリが言っていためんどくさい一面なのだろう。


《殺菌。消毒。無臭。洗浄。さァ、これで綺麗になった。俺もその家族の触れ合いに入れてー!》

《テメェは黙ってろ、ファミコン野郎!》

《あばばばばばばば》


 ファミコン野郎とは、ファミリーコンプレックスと某ゲーム機並みのポンコツの二重の意味をかけた悪口である。

 そんな時であった。


「あれ?」

「どうした?」


 訝しげな声をあげたリースに、レドルノフがそう問うた。

 彼女はその問いに、簡潔に答える。


「さっきまで消えてた反応が、また現れたのよ」





 ラミエルとラグエルと別れた一同は、とある神殿の前に立っていた。

 そしてリースが、素晴らしい笑顔になる。

 ルークとレドルノフからすれば、戦々恐々である。

 だが彼らが安心できる要素が、一つだけある。

 それは。



ここあんた(・・・・・)の家じゃない(・・・・・・)。説明してくれるのよねー、当然♪」

《ここに来る順番を最後にするためですがなにか?》



 その笑顔は、ガブリエルに向けられているという一点だろう。

 リースの笑顔と言う名の脅迫に一切怯まない彼女に、ルークとレドルノフは尊敬に似た目を向けている。

 そして、ミラ、ラル、ルシファーの三人はドン引きしている。


「んー、詰まる所、あれなの? 私に無駄足踏ませたかったってこと?」

《それは違います。これは私なりの優しさですよ。なにせ私も、ラミエルがしたように、条件を一つ出しますからね》


 ガブリエルの言葉に、一同はげんなりしたような顔をする。

 あー、めんどくさい、と彼らは一様に思ったのだ。

 皆の心が一つになった瞬間である。


「それで、条件ってのは何? まさか、書類仕事を手伝ってとでも言うつもりかしら?」

《いえいえ、それはウリエルが頑張ってくれているから、間に合っていますよ》

「「うーわー」」


 ミラとラルが、思わずと言ったようにそう言った。

 他の面々も同じように思ったのだが、口に出すのはなんとか堪えることに成功した。

 それが功を奏し、ガブリエルに無言の視線を向けられずに済んだのである。

 ……口に出してしまった二人は、蛇に睨まれた蛙の如く固まってしまっているが。


《私からの条件は一つです。体を動かしたいので、手合わせを》

《よっしゃ、それなら俺が本気で

《今のルシファーでは弱すぎるので遠慮してください》

《……………………》


 にべもなくそう言われたルシファーは、目に見えて落ち込んでしまった。

 可哀想に。


《という訳で、リース。どうしますか?》


 リースはおもむろにため息をついた。

 そして、仕方ないと言わんばかりに口を開く。


「普段だったらのらりくらりかわすけど、今回はやってあげるわよ。この『剣』探しばかりは全力を尽くさないと、義理も筋も通らないしね」

《……今回ばかりは、ルシファーに感謝しないといけないようですね》


 ガブリエルは、普段見せないような肉食獣の如き笑みを浮かべる。


《あなたは六年前に死合って以降、私と一向に闘ってくれませんでしたし。真面目に研鑽を積み続けている私の気持ちになってほしいものです》

「だってねぇ、あんたと闘るとなると、本気出さないといけないしねぇ。ほらだって私、本気出すーとかそんなキャラじゃないし」


 ルシファーはルークらに後ろにさがるように指示をした。

 その当の彼は、興味深そうな顔をしている。

 そして彼は、四人にこう言った。


《目、離さない方が良いぞ? なにせ殺る気はないとはいえ、人類最強と天使最強の闘いだ》



 十年前を思い出すよ(・・・・・・・・・)、と。

 その言葉が、戯れ合いの火蓋を切った。

あ、次回は戦闘終わったところから始まります。

だって、ガブリエルの能力と本気のリースの戦闘スタイルをまだネタバレするつもりありませんし。

ルシファーの意味深な発言は、番外編を読んでいただければ理解できます。

リグレットアーミーズ~革命編~

http://ncode.syosetu.com/n0118cu/


イラストは、黒狐さんよりいただきました。

黒狐さんとはリア友なんですが、曰く、ルシファーに声優当てるならば、三木さんだそうです。

自分もそう思います。

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