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33.王国一周旅

やべぇ、コメディやっぱ苦手っすわ。

苦手すぎて、全然進みませんでした。

ごめんなさい、ほんとごめんなさい。

 アンリはテーブルに山積した書類を処理しながら、リースへと話しかける。


「それで、もうその腕時計の使い方はわかったか?」

「ばっちりね。現在地の座標を入力するのに手間取ったけど、それ以降はトントンだったし」

「だそうだが、ルシファー?」

《……ほぬるにきへどりるる》


 アンリの視線の先にいるルシファーは、知恵熱を出していた。

 なんと貧相な頭であるか。


「けど、これ本当に凄いわね。現世だけじゃなく、天界と地獄のどこに目標物があるから探知してくれるなんて」

「ほほう、良い仕事したな、あいつ」

「もうちょっと、あいつに優しくしてあげたら?」

「だが断る」

「…………」


 サイクロプス、南無三。

 君はこれからも使い潰されることでしょう。


「さて、まずはどこから周るつもりだ?」

「最初は現世ね。一番スムーズに捜索ができそうだし」

「ん? 天界のが早いと思うが?」

「あいつが、そう簡単に私を帰してくれると思う?」

「……あぁ、うん、頑張れ」


 丸投げ精神丸出しの彼を見て、リースは顎に手をあてる。


「……天界に行く時だけこいつも連れてこようかしら」

「やめてェ!? マジやめてェ!? あいつ疲れるからァ!!」

「あはぁ、今の聞かせたら、あいつどう反応するか楽しみ♪」

「やっぱこいつSだ!!」


 二人だけの会話を展開する彼らに苛立ちを募らせたルークが、声をかける。


「なぁ、とっとと行こうぜ。こんなことに時間使いたくないんだが」

《てめぇ、こんなことって言ったな!? 俺の力、こんなことって言ったな!?》

「その通りだクソ野郎!! 付き合わされるこっちの身になりやがれ!!」


 喧嘩を始めた二人に、周りにいる者たちは冷たい眼差しを向ける。

 話を進めるために、レドルノフがアンリとリースに問いかける。


「どうやって他の場所に移動するんだ? まさか、徒歩とか言わないよな?」

「そこは大丈夫だ。目的地まで一気に飛ばすからさ」

「それは、お前の魔術でか?」


 アンリの操る魔術は、遠くまで瞬間移動を可能とするらしい。

 なんとも便利なものだ。

 しかしそんな考えとは裏腹に、アンリは頭を振る。


「いいや、俺じゃない。移動魔術では、イメージが重要でな。マーカーでもつけてない場合だと、俺は言ったことがない場所には移動できないし、飛ばすこともできない」

「それじゃ、誰がやるんだ?」

「ルシファーだ」

「?」


 首を傾げるレドルノフに、アンリはため息をつく。

 だがそのため息は、レドルノフに向けられたものではない。


「あいつが『原神』から与えられた能力の名前は、『神の命令』。これは恐ろしく理不尽かつ強力だ。あっちで重要なのは、どうしたいかを決める(・・・・・・・・・・)こと。世界をどう変えたいか、想像するだけでいい。過程も原因もすっ飛ばして、結果を弾き出し、世界に反映させる」

「それ、無敵なんじゃないか?」

「そうだな。俺の魔術より万能だし、燃費もいい。その上、縛りと言う縛りもないし」

「なにそのチート」

「全くだよ。はっきり言って、あいつが十全に力を振るえる状態なのなら、俺も全開で闘っても、勝てるかわかんないからな」


 レドルノフは思わずルシファーのいる方向へと目を向けた。

 ちょうど喧嘩が終わったらしく、彼はルークの屍の上で拳を掲げている。


《ふわはは、ヴィクトリー!》

「てめ、覚えてやがれ……」


 そんな二人に嘆息しながら、リースが歩み寄る。


「ルシファー、この赤い印のところに、私たちを送って」

《お? そこに『大天使の剣』があるのか?》

「そうよ。だから送ってちょうだい」

《よっし、任せろ。転移》


 刹那、アンリとケイト以外の者たちの姿が消えた。





「なぁ、リース」

「ん? なに?」

「本当に、ここに探し物があるのか?」

「レーダーによればね」


 今彼らがいるのは、地獄だった。

 独身が堕ちてしまえば、堪え切れない精神的苦痛を強いられるであろう場所。

 そうその場所の名前は。



 遊園地だ!



 ……遊園地だ!!

 ……遊園地だ!!

 ……ゆう


「もういいっつうの!」


 ルークは遊園地の敷地を忌々しそうに睨みつける。


「マジふざけんなよ。こんな所を歩き周れってのか。こんなリア充ワールド見てたら、俺、自分を保っていられるかわかんねェぞ」


 醜い大人である。


「ラル、シュス、あんな大人になっちゃダメよ」

「言われなくても」

「うん、わかってる」

「どういう意味だゴラァ」


 ヤ○ザの方々も恐れ戦く顔で三人を見るルークだったが、リースの笑顔で封殺される。

 口だけ、いや、顔だけである。


《そう言えば、現世には剣がいくつばら撒かれてるんだ?》

「言ってなかったわね。三つよ。そして全て、この遊園地内にあるわよ」

《マジで? やったぜ!!》



 ルシファーは 不思議な舞を 踊った!

 周りの 視線が 冷たくなった!



「やめなさい」

《あふん!?》


 リースが掌底でルシファーをはっ倒した。

 うん、超痛そう。


「リース、一番近い反応はどこにあるの?」

「そんなに離れてないわね。三分も歩けばつく距離よ」





 そして一行がたどり着いたのは。



 お化け屋敷だった。



「えぇと、うん、反応はこの中だから、後はよろしく!!」

「「《逃がすか馬鹿め!!》」」


 踵を返して逃走を図ったリースを、ルーク、レドルノフ、ルシファーがアメリカンフットボールよろしくタックルで止めた。


「無理!! ほんと無理!! ここだけは絶対無理!!」

「具体的な内容は知らないけどォ」

「借りを返すんだろォ?」

《それをなぁなぁで済ませるんですかァ!?》

「腹立つわねその阿吽の呼吸!?」


 リースは怒りに身を任せ、拳を振るった。

 三人は恐怖に顔を歪ませるが、もう遅い。

 怒りに支配された人間は恐ろしく、ちょっと洒落にならないくらい三人はボコボコにされた。


「なにか言うことは?」

「「《調子に乗ってすみませんでした》」」


 顔を二倍くらいにまで膨らませ、正座でそう謝罪させられた三人。

 そんな彼らの前に仁王立ちしているリースは、誰かに手を引かれているのに気がつく。

 そちらに目を向けるとそこには、ラルがいた。


「ラル、なにしてるの?」

「お化け屋敷、一緒に入ろうよ」

「ラル、悪いんだけどね、私はここには入れないの。ミラと一緒に……」

「お化け怖いの?」

「…………」


 大人の詰まらないプライドからか、怖いとは言えない。

 しかし嘘も吐きたくないのか、怖くないとは言えない。


「怖くないんだったら一緒に入ろうよぉ」

「そうそう。こういうのは、みんなで行くから面白いんだよ~」


 ミラも加わり、背を押されてお化け屋敷へと連れて行かれそうになる。

 こういう悪意も敵意もない攻撃の対処は、苦手なのだ。

 ま、まずい、と彼女は焦燥に駆られて、ルークたちを見る。

 彼らは。



 仲良くうつ伏せになっていた。



「さっきの拳のダメ―ジがァ……」

「デカいから俺たちィ……」

《気絶してますゥ……》

「あんたらー!!」


 リースの叫び声が響くが、お化け屋敷に入って小さくなる。

 そしてすぐに、彼女の絶叫が聞こえるようになった。

 絶叫をBGMに、ルーク、レドルノフ、シュス、ルシファーは向き直る。


「よし、そんじゃ、俺たちも入るか」

「そうだな。リースがあれだと、あいつらはたぶん探せないだろうし」

「組み分けはどうするよ?」

《ルークとシュス、レドルノフの二組でいいだろ》

「「「…………おい」」」


 なんとこの堕天使、サボろうとしている。

 これ、お前のためにやっているのに。


「ふざけるな。お前も働け」

《えぇ~? 俺、入る必要なくね?》


 ルシファーは目を泳がせながら、そう答えた。

 ……ん?

 こいつよく見たら、膝が凄い震えてるぞ。


「「「お前、まさか……」」」

《べ、別に怖かねェし!! てめぇら俺を誰だと思ってんだよ!? 『魔王』だぞ!? お化けがなんぼのモンじゃい!!》

「そうかそうか」

「それなら一緒に入ろうな」


 ガッ!! と。

 ルークとレドルノフに両肩を掴まれた。

 そして、お化け屋敷に連行されていく。


《あ、ストップストーップ!! 見栄張りました! 虚勢張りました! 嘘ですごめんなさい!!》

「「チッ」」


 二人は舌打ちしてから、止まる。

 これを機と見たルシファーは、まくしたてるように口を開く。


《だってお化けだぜ!? 壁通り抜けるんだぜ!? 足ないんだぜ!? おへそ取っちゃうんだぜ!? そりゃ怖いだろ!?》

「「最後のは雷だ」」


 ていうか、全部ガキ臭い。

 ルークとレドルノフは顔を見合わせ、頷いた。

 仕方ないな、ここは。


「「よし、連行するか」」

《なんでェェェえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!???》


 慈悲はなかった。

 ていうか、これは少し考えれば当然のことと言える。

 なにせ。


「お前さ、あんなに嫌がってたリースも入ったんだぞ?」

「ここはお前も、入んなきゃダメだろ」

《許して! 離して! 魔王特権ということで!》

「「「そんな特権は存在しねェ」」」


 鬼であった。

 血も涙もない。

 悪魔より悪魔である。

『魔王』が認めるんだから、間違いない。

 そして。



《あ、きゃァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!》



 ここに堕天使のオネェ絶叫が誕生した。



 あ、剣ならちゃんと見つけました。

 仕事はしてるんだ。

 別にこのまま、全て見つけてしまっても、構わんのだろう?

次回、剣探しが本格化します。

それじゃ、また次回。

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