29.契約内容再確認
お久しぶりです。
遅くなっちゃいましたね。
言い訳じゃないんですが、アーミーズ本編って書くの久しぶりで、書くのに詰まるんすわ。
スランプなんですわ。
携帯にストックしてるのは、駄作でそのまま使うわけにもいかないですしね!
だから私は、声高々にこう言います!
サボってた訳じゃない!
スマホゲームってたっのしィ!
……最後のは忘れてください。
では、どうぞ。
剣聖ことルーク・パラシアは、世界でも指折りの剣豪である。
“人の領域”を超えた超人であり、掛け値なしの一騎当千の猛者だ。
そんな彼は、今。
「はい、腕いっぽーん♪」
「ぎゃァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!???」
肘関節の逆にされていた。
うわぁ、いったそー。
「痛いなんてモンじゃありませんけどねェ!!」
「組手中に意識を逸らさなーい」
「ごべばるぁ!?」
今度は足を持って行かれた。
片腕に片足をやられたのだ、もう勝負はついた。
だが、悪魔はそれで止まらなかった。
「あは、次、いってみよ~」
「逝くの間違いじゃありませんかねェ!? ごあぁ!?」
なぜ、こうなったのか。
それを説明するには、時をさかのぼる必要がある。
「それで、俺たちを鍛えるって、具体的にはどうやってやるつもりだ?」
ルークの問いに、リースは簡潔に答えた。
「組手よ」
「組手? どうして」
レドルノフの問いに、リースはさも当然のことのように答える。
「あんたとルークは、温いレベルの戦闘ばかりやってきたから弱くなった。他の三人は、圧倒的に実戦経験が足りない。だから、私がこれからあんたたちをボッコボッコにする」
「他にやり方はありませんか?」
ルークがすぐさま変更を求めた。
ヘタレである。
「ダメ。あんた、自分より強い相手と戦おうとしないのは悪い癖よ。勝負は時の運だって混じるんだから、組手くらいならガンガン格上と闘いなさい。格上との戦い方だってあるんだから」
「ぐぬ!?」
「あんた、そんなんだから『剣帝』に負けたのよ」
「ぐぐぐ」
正論である。
反論の余地が一切ない。
「ははは、わかったらとっととやりましょ。組手には、あんたらの欠点を探すっていう意味合いもあるんだから」
とまぁ、こんな感じである。
組手は一方的なものであった。
リースは笑顔のまま、掠り傷どころか服に汚れすらつけずに全員を沈黙させた。
「ま、こんなものでしょ。あんたらの足りない所は、大体わかった」
リースはあくびをしながら、そんなことを言った。
息一つ乱していない。
クソ、腹立つな。
「ラル、ミラ、シュス、あんたたちは武術を会得する所からね。動きに無駄が多すぎる」
「「「……はい」」」
「ルークとレドルノフは、停滞しているわね」
「「チッ、バレてたかッ」」
「停滞してるって?」
ラルの問いに、リースは微笑みながら答える。
「こいつらの動きには、前と手合わせした時と全く変化が見られないのよ。たぶん、成長しあぐねているのね。けど、武人にとって停滞は後退と同義。研鑽を怠らず、常に成長を続ける」
リースはラルの頭を撫でた。
「私も根っからの武術家だから、修行は怠ってないわよ。『天使』を倒したのは、六年前。だけど今の私は、当時の私より強い。我ながらどうしようもないと思うけど、武術家っていうのは、そういうものなの」
「いや、それ以上強くなってどうするつもりなの?」
「これでも、好敵手には事欠かないからね。それに、私はアンリやケイトと違って人外の力に依存するわけではないから、サボると鈍っちゃうのよ」
「成程」
リースは伸びをした。
そして、手首を軽く回して手の調子を確かめる…………ん?
「なんで、手首の調子を確かめてるの?」
「あぁ、締めに、もう一度、組手ね♪」
「「「「「…………………………………………………………………………」」」」」
☆
ルークとシュスは帰路についていた。
その顔は、もう、あれである。
精根尽き果てたのに、バキュームで絞りカスまで吸い取られたような顔であった。
どうすれば組手一回という短い時間で、そこまで疲れることができるのであろうか。
シュスは、そんな彼に訊く。
いや、彼女も同じように疲れているのだが、それでも訊く。
「ルーク、お前、何回負けたことある?」
「それ、組手とかじゃない、実戦でって意味か?」
「そう」
ルークは考え込み、確信をもってこう言った。
「三回かな」
「相手は?」
「まぁ、最近で言うなら鉄鬼隊だな。お前も一緒にいたろ?」
「あぁ」
なんだか、遠い昔のようだ。
まだ二ヶ月ほどしか経っていないのに。
だがあれは、負けと言えるのだろうか。
あの時シュスがおらず、レドルノフと二人きりであれば、間違いなく闘争ではなく殲滅を行い、勝っていただろう。
「で、残りの二戦は両方二年前で、なおかつ同じ日なんだよな」
「ほうほう」
「一人は、リースがさっき言ってたが、『剣帝』って異名を取ったクソジジイだ」
「剣帝ってことは、剣士なのか?」
「あぁ、俺の師匠である、『剣神』の古い知り合いなんだと。あれは純粋に実力負けだった。その時にパンドラが暴走したんだが、それが初めての暴走だったな」
「うへぇ」
とんでもない話だ。
剣術以外でならいざ知らず、同じ土俵で彼に実力負けを認めさせたのだ。
化物である。
「で、最後がアンリだ。てか、あれは勝負と呼べるものじゃなかったけどな」
「どんな感じになったんだ?」
「あいつ、椅子でふんぞり返った姿勢のまま、武器をポンポン飛ばしてきやがったんだよ。一発一発が、城壁をぶち抜くような反則級の攻撃力でな。俺はされるがままだったし、一回だけ間合いに入りこめたんだが、なんか血みたいに真っ紅な盾で防がれた」
ずるい。
まさにその一言に尽きる。
「ま、話はここまでだ。そろそろ寝ないか? 明日も、こんな感じだろうし」
「そうだな。寝ないと体が保たない」
「その通り」
「お休み~」
「おう」
ルークとシュスは、こうしてそれぞれの寝室へと向かった。
ルークは、あんなことになると欠片も思わずに。
☆
ルークは、気がついたら何もない、真っ黒な闇色の世界の中心に立っていた。
(待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て、落ちつけ、俺。俺は確かに、ベッドインしたはずだ)
酒を飲んだ覚えもない。
薬をキメちゃった覚えもない。
……………………ん? 覚え?
そういえば、ここは見覚えがある場所である。
「……ここ、俺の精神世界ってやつじゃねェか」
ルークはパンドラと契約するために、アンリから教えてもらった方法で己の精神世界へといったことがある。
そして、ここはその件の精神世界なのだ。
となると、元凶はあの、爬虫類だけだ!
「おーい、パンドラ~」
《は~い》
目の前に、少女が現れた。
「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て」
少女を観察してみる。
水色のツーサイドアップに、琥珀の瞳の少女だ。
年のころは、十二歳といったところだろうか。
服装は、蒼いドレスに身を包んでいる。
うん、なんで少女がこんな所にいるの?
「お前、誰だ?」
《だ・か・ら、パンドラよ》
「は?」
それはおかしい。
パンドラとは、あれである。
全身が蒼く体のフォルムは人間で、コウモリのような羽をはやし、顔は蜘蛛のような複眼をもった奇妙にも生物である。
こんな美少女であるはずがない。
《なにか忘れてない? パンドラっていうのは、女神なのよ? 何の因果であんな爬虫類になったのかは知らないけど、本来はナイスバディなお姉さんなの!》
「なんでキレてんの!?」
《大人が良かったのに……ッッッ!!》
「俺に言われても困るんだが!?」
あれ?
でも、おかしいぞ?
「なぁ、それなら、俺が会ったパンドラはどこだ?」
《爬虫類? それなら、ここよ》
パンドラと名乗った少女は、掌にちょうど納まる程度の大きさの黒い箱を差し出してきた。
「……箱?」
《私が二年かけて作った、パンドラの匣をモチーフにした封印よ。あいつは、この中》
「パンドラァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
返事はない、ただのブラック☆ボックスのようだ。
絶叫するルークに、パンドラ(少女)はため息をついてから説明する。
《心配しなくても、死んだりしないわよ。私とあいつじゃ、格が違うからね。私じゃ殺せない》
「格が違う? 同じパンドラだろ?」
《うーん、やっぱり記憶がないってのは面倒ね。どうやら、私の説明も、忘れちゃってるみたいだし》
「……なに?」
訝しげな顔をするルークに、少女は微笑む。
《ビデオみたいに記憶を再生させてもらうわよ。改ざんしたものじゃないから、安心して》
「は? なにを」
パチン、と。
ルークの言葉を、指を鳴らして遮った。
《それじゃ、行ってらっしゃい、剣士さん》
刹那、ルークは意識を手放した。
☆
「あれ? ここは、どこ?」
十歳の頃のルークは、開口一番にそう言った。
どうやら、これが記憶の再生らしい。
胸くそ悪い。
昔のアルバムを強制的に見せられているような気分だ。
《また、子供なのね》
今にも消えてしまいそうな、儚なげな少女の声が響いた。
ルークは、そちらに向き直る。
やはりそこには、先程自分はパンドラだと名乗った少女がいた。
「君、誰?」
《私は、パンドラ。狂った神よ》
「神?」
ルークの言葉に、少女は儚い笑みを浮かべる。
《そう。私は、愛に狂った神よ》
「狂うってなに?」
《そうねぇ、ネジが外れて周りの人からしたらドン引きされる程のことをすること、かな》
「そんなことしたの?」
《さぁ? 私じゃないしね、狂ったって評されるようなしたのは》
「?」
疑問符を浮かべるルークに、少女は笑う。
《ま、いいわ。さくっと説明、終わらせちゃいましょう》
「説明?」
《うん。それじゃまず……》
「あ、ちょっと待って!」
ルークは素っ頓狂な声をあげ、少女の言葉を遮る。
《どうしたの?》
「パンドラって呼びにくいからさ、なにか渾名とかないの?」
《……フレンドリー過ぎない? 一応私、神様なんだけど》
「威厳なーい」
《あはははは》
「いたたたたたたたたた、ほっぺねじらないでー!!」
少女はため息をつき、ルークの頬を開放する。
《それなら、私のことはパンちゃんって呼んで。前の契約者は、そう呼んでたから》
「わかった」
少女改め、パンちゃんは微笑みながら頷いた。
《あなたは、私、すなわちパンドラと契約した状態よ。だから、私はそれについて説明する義務があるの》
「契約なんて、した覚えないよ?」
《されちゃったものは仕方ないわよ。悪いけど、犯人探しは自分でやって》
「むぅ」
むくれるルークに、パンちゃんは苦笑した。
《それじゃ、始めるわよ。パンドラの力は少し特殊でね、その人間の因果律で引き出せる力が決まるの》
「因果律ってなに?」
《その人の行動によって、物事の大きさの度合いや人生が左右される人の多さのことよ。それが大きければ大きい程、パンドラの力をそれだけ多く引き出せる》
「僕は、どれくらいの割合を引き出せるの?」
パンドラは、こう断言した。
あっさりと、こう言った。
《六割》
「少ない!?」
ルークの突っ込みに、パンちゃんは頭を振る。
なぜ?
《これは凄まじいのよ? なにせパンドラの力は、この世界を創った、『原神』という神と同じものなのだから》
「原神? 凄いの、それ?」
《正真正銘の、全知全能の神。この世界において、ダントツで最強の存在よ》
「それと、同じ力?」
《その通り》
我ながら末恐ろしい力を手に入れたものである。
まさか、最強の神の力を手にしていたとは。
《とはいっても、複数ある力のうちの一つしか使えないんだけどね》
「え?」
《それでも、十分強いわよ。これから、あなたに振りかかるであろう絶望を払う手助けになるくらいには》
「絶望?」
パンちゃんは、歌うように語る。
歌うように言葉を紡ぐ。
《匣は三度開いた。
一度は繁栄を、二度は絶望を、三度は一縷の希望を。
三度の希望は、大いになる絶望を払う、小さく強い希望の光》
「?」
《原神の力は、その三度の希望の光。それを使えば、あなたはどんなことでも乗り越えられる》
パンちゃんは、そう言った。
慈しむように、そう言った。
「じゃあ、僕は原神のどの力を使えるようになるの?」
《さぁ。私には、わからない。だって私はこれから、消えるんだから》
「え?」
消える?
一体、どういうことだ?
《言ったでしょ? パンドラは狂った女神だと。そして、私はその女神であって女神じゃない》
「どういう、こと」
《存在が変わるのよ、契約者が変わるごとにね》
「え」
パンちゃんは、悲しそうに笑う。
今にも消えてしまいそうな、儚げな笑みを。
《パンドラは、人間に弄られた。ほら、会社とかで、社員がその地域に癒着しないようにするために転勤とかあるでしょ? それと似たような感じなんでしょうね。だから、パンドラは、契約者が変わるごとに生まれ変わる》
「そん、な」
《悲しむ必要はないわよ。だって、あなたは忘れちゃうから。存在が消えた私は、誰の記憶にも残らない。覚えているのは、私の説明の内容だけ》
「…………………………………………」
当時のルークは、思いつめたような顔をしている。
恐らく、言葉でも探しているのだろう。
だが、この世界は残酷だ。
なにせ。
《あ、時間ね》
パンちゃんの体が、足のつま先から塵とも砂ともつかないものとなって、散り始めたのだから。
「あ、ど、どうすれば」
動揺するルークに、パンちゃんは笑う。
《どうしようもないわよ。狼狽える必要はない。こうなることは、決まってたんだから》
「けど!」
《私としては、あなたの方が心配なのよ?》
「え?」
面食らったような顔をするルークに、パンちゃんは歩み寄る。
いや、もう足がもうないから歩み寄るという表現は正しくないかもしれないが。
《これからあなたは、困難に見舞われる。それを、乗り越えられるか、私は心配なの》
あぁ、彼女は、十分狂っている。
愛に狂っている。
本人は違うと否定しそうだが、周りからすれば十分くるっていると評されるだろう。
《その困難は、本来であれば負う必要がなかったもの。しかもそれは、とてつもなく大きい》
胸あたりまで散ってしまった彼女は、ルークを優しく抱きしめた。
そして、額に口づけをした。
《どうかあなたに、幸がありますように》
その言葉と共に、パンちゃんは完全に消えた。
博愛という愛に狂ったまま。
パンドラは元々ギリシャ神話の女神。
だが私は、そちらの神話は知りません。
機会があれば調べますがね。
ですから、自分がやったのは、パンドラの匣。
えぇと、確か、こうでしたね。
どこぞの国の王様が、パンドラの匣を発見しました。
開けてみたら、なんか凄いものが入ってた。それで国は栄えたそうです。
そして、二度目を開けた。
そしたら、世界中に疫病が蔓延した。
で、三回目を開けたらワクチンが入っていた。
それでなんとか、人類は持ち直したとさ。
こんなところですね。
自分は、ちょっとしている神話やら逸話やらをぐっちゃぐっちゃ混ぜ込むタイプの作者です。
これからも、リグレットアーミーズをごひいきに。
ではでは。
次回の話は、少しは筆が進みやすいかな?




