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15.それぞれの戦い

どうも、にがトマトです。

今回は夜にではなく、朝早く投稿させてもらいました。

いやぁ、今回の話は、筆が比較的早く進みました。

やっぱり自分は、シリアスのが書きやすいらしいですね。


では、どうぞ。

 あっという間だった。


 オードルが仕方なしといわんばかりに肩をすくめて、歩き出そうとしたその時だ。



《ここじゃなんだ、場所を変えよう》



 オーディンがオードルの隣にいて、『槍』を一振りして彼を吹き飛ばしたのは。

 そして間髪入れず、オーディンの姿は消えた。


「な!? オードルが、吹き飛ばされただと!?」

「うそ……」


 ナルサスは大声をあげて、リースは信じられないとばかりに目を見開いていた。

 アンリたちも、オーディンの突然の行動に、目を見開いていた。

 あまりの戦闘力と博物館の壁に空いた大穴に、全員絶句していたのだった。





 オードルは首を鳴らして、辺りを見回した。


「ここ、どこだ?」


 砂と岩しかない荒野だった。

 どうやら、かなりの距離を吹き飛ばされたらしい。

 先程受けた攻撃は、練った気を外功に還元して、『硬功』という肉体を硬質化させる技術で防いだ。


「ふむ、鈍ったな」


 オーディンからの攻撃は、目で見えていたが、反応できなかった。

 だが目で追っていたのは、無意識の行動。

 意識して追っていた訳ではない。

 そもそも意識できていたのなら、どうとでも対処ができていたのだ。


《ふむ、まさかノーダメージとは。硬いものを殴った感触はあったが、そこまで硬いとはな。お前本当に人間か?》


 オードルはゆっくり声へと向き直った。

 そこにはやはり、頭からつま先までローブで隠した者が、オーディンがいた。


「ご挨拶だな。俺は正真正銘、人間だよ」

《ふん、加減した(・・・・)とはいえ、俺の一撃をその身に受けて無傷のやつが、まだ(・・)人間を名乗るのか》

「加減、ねぇ」


 手加減という言葉が、オードルの琴線に触れたらしい。

 片眉をあげ、『練気』で急速に気を練り上げる。


「お前、俺を倒すつもりがないのか? 加減なんてせず、全力でやるべきだったろう」

《なに、俺は時間稼ぎ(・・・・)だ。一目でわかったが、今のケイトじゃまだお前には勝てない》

「……ほう?」


 それは言外に、自分なら倒せると言っているようなものだ。

 オードルの自尊心を刺激する発言だ。


《今のケイトでは、勝利を捨てて時間稼ぎに徹することで、一時間……いや、三十分の時を稼げる程度だろう》

「それで?」

《俺は、ケイトの代理(・・・・・・)でしかない。だから俺は、お前をここに三十分留める》


 オーディンは『槍』を構える。


《安心しろ。俺にも『戦神』としての矜持ってものがある。力は思いっきり押さえてやるさ。それで死んだら、お前の責任だ》

「はっ」


 オードルはオーディンの言葉を、鼻で笑った。


「そうかい。じゃあ、その言い訳抱えたまま死ね。あそこには、死んでもらったら困るやつがいるんでな」



『神』と『鬼』の闘いが始まった。





 アンリは後方に三十の武器を出現させて、一歩前に出る。


「よし、『教会』御一行様。死んでもらおうかな」

「やれやれ、馬鹿だな。オードルが吹き飛ばされたのは確かに想定外だったが、こちらにはまだリースがいる。言っておくが、こいつは身体能力こそは達人の域を出ないが、超人を殺せる程の実力を持っている」

「二対一なら、なんとかなるさ」

「楽観的だなぁ、お前。ま、さっきよりかはマシか」

「…………」


 アンリとナルサスが言い合い、リュウが拳銃を取り出す中、リースは沈黙していた。

 憂鬱そうに、息を吐くだけ。


霧の死神(ミスト・リーパー)! なにをしておる! 教祖様と私を護らんか!」

「うるさい」


 従者らしき男の首が、白刃一閃と共に刎ね飛ばされた。

 いつの間にか、彼女の手にはナイフが握られている。

 あれで首を刎ね飛ばしたのだろう。


「貴様、なにをしている!?」

「あぁ、もう、うるさいわね」


 ナルサスの怒号に、リースは鬱陶しそうに手を振る。

 彼女の目は、驚くほど冷たかった。


「口を閉じる。その場から動かない。何もしない。命が惜しいならね」


 リースは殺気を放った。

 その殺気は、小さい。

 ウェーズ、ケイト、オードルなんかとは比べ物にならない程小さい。

 しかし、凄まじく鋭かった。

 気を抜いてしまえば、一瞬で気を失いかねない。


「忘れたの? 私は、人質を取られて仕方なくあんたに従ってる。命を護ってる。人質がいなければ、私はあんたを真っ先に殺してる」

「……狂犬がァ」


 刹那、白刃一閃。

 ナルサスの肩にナイフが深々と突き刺さった。


「ぐぉぉぉあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」


 ナルサスはうずくまった。

 刹那。


 ゴアッッッ!! と。

 彼の真後ろで爆音とともに、床に槍が突き刺さっていた。


「ごめ~ん、突き飛ばす間に合いそうになかったから、荒っぽい方法になっちゃった」

「貴様……」


 怨嗟の念が凝縮された声を出すナルサスを無視して、リースはアンリらへと向き直った。

 ナイフをくるくると手で弄びながら、語りかける。


「そろそろ、始めましょうか。まぁ、恨みはないけど死んでね」

「ベタだなァ」


 アンリは笑い、リュウに耳打ちする。


「リュウ、ナルサスってやつを確保しといてくれ」

「なに?」

「俺はちょいと、美人を口説いてくる」

「あ!?」


 声を荒げるリュウに、アンリは愉快そうに笑うだけ。

 そして、呪文を紡いだ。


「我が精神が喰らうは現」



 アンリとリースの姿が忽然と消えた。



 リュウは頭を抱え、ナルサスは目を見開く。


「あァ、あのクソ野郎! 元からそのつもり(・・・・・・・・)だったな(・・・・)!! 勇敢と無謀は別物だぞ!?」


 リュウは苛立たしげに吐き捨てて、ナルサスを見る。

 彼は素早く拳銃を持ち上げた。


「ナルサスだったな。ベタな台詞だが、えぇと、痛イ目見タクナケレバ大人シク投降シロ」

「なんだそのやる気のない棒読みは」

「その通り。やる気なんざ起きるか。あいつ、説明なんてロクにせず危険へと突っ込んでいきやがる。しかも、独りでな。これが苛立たないでいられるか」


 リュウの言葉を、ナルサスは鼻で笑う。


「ならば、『教会』に寝返る気はないか? そうすれば、お前の命は助かるぞ?」

「はっ、ンな嘘に引っかかるつもりはねェ。今から憂さ晴らしにお前をボコる。今のうちに歯ァ食いしばれ」


 ナルサスは嘲笑を返した。


「馬鹿め。乗っていれば、命だけは助けてやったものを」


 パチン、と。

 ナルサスは指を鳴らした。

 それが合図だったらしく、物陰やら壁に空いた穴から武装した男たちが現れた。

 その数は、ざっと五十といったところか。


「馬鹿が。リースとオードルだけが私の護衛だと思ったか? お前は『修羅』を庇いながら、この数の人間と戦えるかな?」


 リュウは、あらゆる関節があらぬ方向へと曲がっている、役立たず(ケイト)へと目を向ける。

 そして、訊いた。


「自分の身くらいは、守れるか?」

「まァ、この雑兵たちからくらいならな」

「よし、いいだろう。お前はそこで寝てろ」


 リュウは顔に笑みを張り付けて、二丁拳銃を握り直す。

 そんな彼に、ナルサスは愉快そうに笑いながら問う。


「最終通告だ。投降しろ」


 リュウはため息をついた。

 ナルサスは、常識というものがなってない。

 あれは、人にものを頼む態度ではない。

 故に、常識人として拳銃を構えながら教えてやった。



「お願いするときは、頭につけようぜ。Pleaseッてな!!」





 アンリとリースは、砂漠の真ん中に立っていた。

 これはアンリが展開した、『固有結界』だ。

 リースは何が起きたのか理解できていないらしく、きょろきょろと辺りを見回す。


「こいつは、『固有結界』だ。ここなら、俺たちと二人っきりだけ。これで話ができる」

「……私と話がしたいから、私をここに連れ込んだ訳?」

「そうだよ。悪い?」


 リースは目眩がしたように、頭を押さえた。

 ため息を漏らして、彼女は訊いてくる。


「それで? 話って何かしら?」

「な~に、勧誘さ。俺たちの仲間にならないか?」

「……昨日のファミレスでの二の舞になりたいの? えぇ、いいでしょう。やりましょう。今度こそ殺してあげる」


 ナイフを構えて気配を、存在を薄くしていく。

 それにアンリは慌てたように声を荒げた。


「わぁ、待て待て! 今回は見返りを用意してるんだからさ!」

「……見返り?」


 よし、喰いついた。

 これは勝った! 勝ったぞ! イヤッホーイ!


「お前、さっき人質がいるって言ってただろ? それを開放してやろうじゃないか」

「……クソ、熱くなって口を滑らせるんじゃなかった」


 リースの目がさらに冷たくなった。

 さらに冷たくなれるのか(・・・・・)と愕然としながらも、アンリは続ける。


「知恵を貸してくれるだけでもいいんだ。ウチには、頭がキレるやつがいないから、お前みたいな頭が良いやつが必要なんだよ」

「はっ、それではいわかりましたって言うやつは、『頭の良いやつ』じゃない」

「そうだな」


 アンリは悪戯っ子のように笑いながら、口を開く。

 それはリースの神経を逆なでしていく。


「お前みたいなやつが事をしでかす時は、確実に成功するとわかって初めて動く。だから俺は、確実に成功すると思ってるから、お前を誘ってる」

「確実に成功する? あんたみたいな軟派なやつの言葉を、どう信用しろって言うの?」

「作戦に、お前を一枚噛ませる」



 ブチッ、と。

 何かが切れた。



「あ?」


 ゴギュア!! と。

 アンリの右肩が脱臼と骨折が同時に起こった音だった。

 一秒後にそれに彼は気がつき。


「がァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 あまりの痛みに絶叫する。

 しかしそんな彼に、お構いなしに口を開く者がいる。


「一々言動がムカつく。イライラする。偉そうなこと言って、結局はただの他力本願じゃない!」


 リースはいつの間にか、すぐ隣にいた。

 彼女は、足を振り上げ、下ろそうとしている。


「まず!?」


 アンリは体をひねって、踵落としからなんとか逃れた。

 だが、頬に熱い感覚が走った。

 どうやら完全にかわしきれずに、掠っていたらしい。

 頬には、刃物に斬られたような傷跡ができていた。


「他人を騙すのはいい! 裏切るのだっていい! 利用するのだっていい! だけど、他人に全てを投げることだけはやるな!!」


 リースは子供のように叫びながら、蹴りを放った。

 アンリの鳩尾に入り、三メートル程後ろに跳ばされる。


「――――!?」


 悲鳴にならない悲鳴をあげ、激痛に苦しむ。

 気を失いそうになる。

 だがそれでも、気を失わないように耐える。

 ここが正念場だ。

 気を失う訳にはいかない。

 なんとか言葉を吐き出す。


「お前、さ。人質が効いてるってことは、そいつらを、失いたくないんだろ。助けたいとも、思ってるんだろ。だったら」

「知ったような口を!!」


 さくり、と何かが腹部に入ったような感触を感じた。

 腹を見てみると、ナイフが刺さっているのが見えた。


「ゴ、ぁ。ガッ!?」


 だが、刺されただけでは終わらない。

 終わるはずがない。

 リースに押し倒され、馬乗りにされて胸ぐらを掴まれる。


「私が、あの子たちを助けようと、何度策を張り巡らせか知らないで! 何度失敗したか知らないで! あいつを何度裏切ったか知らないで! そのくせに、助けるなんて軽々しく言うな!!」


 リースの目には、涙がたまっていた。

 感情を剥き出しにして、声を荒げていた。

 彼女を知るものがこれを見たのなら、万人が驚いていただろう。

 リース・アフェイシャンは今まで、感情と本音を隠し、嘘と建前で生きてきたような女なのだから。

 もうなにが感情と本音で、それらをどうやって出せばいいか、わからなくなってしまった女なのだから。

 信じるということを、どうやってやればいいのか忘れてしまったのだから。


「はぁ……はぁ……」


 リースの息は荒かった。

 もう、自分が何を言っているかすら、彼女は覚えていない。

 感情的になり過ぎたようだと、己を戒めた。

 刹那。



「うるせぇ!!」



 アンリの頭突きが、リースの頭に炸裂した。


「っつ!?」


 突然の痛みにリースは頭を押さえ、後ろにさがる。

 アンリはその隙に立ち上がり、彼女を睨みつける。


「さっきから聞いてりゃ、てめぇふざけんな! てめぇが言ってることはな、ただの孤独論だ! なんでも独りでやろうとして、結局なにもできてないだけだろうが!!」

「……なにを」


 今にもぶっ倒れそうなのを我慢する。

 そのまま、怒りも多少含めて怒鳴る。


「それにお前、自分は独りだ的な言ってが、違うだろ。お前、まだ裏切れるやつがいた(・・・・・・・・・)んだろ! だったら、そいつをなんで頼らなかった? どうして行動しなかったんだよ、このチキンが!!」

「あんた、言わせておけば……ッ!」


 怒りを再燃させて襲い掛かってきそうになるリースを、アンリは言葉で制する。

 今度は説教ではなく、理をもって。


「どうせ人質を一ヵ所に集めて、爆弾でも仕込んでるんだろ。あのナルサスってやつが起爆スイッチ持ってるか、あいつが死んだら爆発するって仕組みで」


 リースの動きが止まった。

 どうやら、当たりらしい。

 まぁ、さっきはああ言ったが、彼女は素晴らしく優秀だ。

 彼女程の人間ができないとなると、こういうやり方である確率が一番高かった。

 それにアンリは悪役のように笑う。


「やっぱりな。協力ありがとよ。お前のその反応が、俺にお前たち(・・)を助けられるって確信を与えてくれた」

「……え?」


 きょとんとするリースに、アンリは微笑む。

 今度は、嫌らしい笑みではなく優しい笑みだった。


「そういうタイプなら、この『固有結界』を使えば済む話なんだ。そうすりゃ、ナルサスが死んでも爆弾は起爆しない。そしてスイッチを処分すれば、問題はまるっと解決する」


 自分でもとんでもないと思うが、この『固有結界』はそれを可能にする。

 ここに閉じ込めてしまえば、現実世界に電波は届かない。

 そしてナルサスを閉じ込めてしまえば、存分に拷問するなりしてスイッチのことを訊き出せる。

 これで全部解決だ。


「……そんなことが……できるの?」

「あぁ」


 リースは、涙を流した。

 だが。


「けど、ダメ」

「え?」


 彼女は拒絶した。


「私は、もう自分でも忘れちゃうくらい大勢の人間を殺してきた……もう私には、救われる資格なんて、ない」

「……なんだ、そんなことか」

「……なにを」


 アンリはめんどくさそうに言う。


「お前、強要されたんだろうが。なら、俺からしたら、十分救われる対象だ。罪は消えないが、それは償え」

「どうやって?」

「まぁ、人助けでもすりゃいいんじゃねェの?」

「それで、あんたの組織に入れって?」

「ボランティアでよくないか?」

「…………」


 リースは絶句した。

 直後、アンリは自分の失言に気がついた。

 今、勧誘のトドメの言葉を放つチャンスを不意にしたのだ。

 後悔するが、もう遅い。

 冷や汗が体中に流れた。


「はは、はははは」


 リースはそんな彼を見て、笑った。


「笑うか、てめぇ」

「だって、おかしくて」


 リースは涙を拭いて、アンリをまっすぐ見る。


「本当に、私を助けてくれるの?」

「あぁ、もちろん」


 それにリースは、決心したように息を吐いた。

 そして、言葉を紡ぐ。



「お願い、助けて」

「おうよ」

やっとだ。

15話にして、やっと、革命メンバーが全員そろった。

だけどみなさん、これ、まだ全然進んでいないんです。

前回、だったかな?

説明したとおり、これは自分が三、四年前に携帯にこっそり書き出した作品を投稿したものです。

まぁ、ベースというだけで、今ではすっかり別物ですが。

で、携帯に保存している革命編は、全部で三十一話。

そしてこの話、携帯で言うならまだ九話です!

やったね♪ まだ35%くらいだぞ♪

……ごめんなさい、反省してますのでそんな目で見ないで。


感想、質問、要望、矛盾点、誤字、お待ちしております。

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