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リグレットアーミーズ  作者: にがトマト
『七つの大罪』編
22/71

魔王降臨

受験勉強が大変です。

書く暇が全然ない。

こりゃマジで不定期更新だな。

 シュスは緊張を解いて、その場にへたり込んだ。


「ふはぁ、助かった」


 ベルゼブブと戦ってた時間は始終生きてる心地がしなかった。

 なにせ、相手は本物の悪魔だ。

 しかも、『七つの大罪』の一角を担う超大物。

 弱体化しているということを差し引いても、時間稼ぎという役割を成し遂げたことは称賛に値するだろう。


「お疲れさん」


 ルークはこちらに歩み寄りながら、労いの言葉をかけてきた。

 片腕を血で真っ赤に染めて、紙のようにぐしゃぐしゃにしながら。

 その傷は、ルークの不注意で負ったものではない。

 シュスが魔法を間違った方向に撃ってしまったのだ。


「えぇと、ごめん。蝿の分身体がそっちに飛んでったから迎撃しようとしたら、間違えて当てちゃった」

「ああ、いいよ。気にしてないからな」


 全く痛みを感じていないかのように、血まみれの腕を振る。


「どうせアンリの魔術にかかりゃ、こんなの一瞬で治んだろうよ」


 どうやら、治療法があるらしい。

 そのことにシュスは安堵のため息をついた。

 だが、ルークはまだ警戒を解いていなかった。

 虚空へと目を向けて、問いかける。


「それで? まだやるか? やるなら相手になるぞ?」

「へ?」


 ルークの言葉に呼応したかのように、何千にも及ぶ白い蝿が一か所に集まっていく。

 そして、一メートルサイズの白い蝿が現れた。

蝿の王(ベルゼブブ)』。


《いや、やめておこう。パンドラの契約者と戦うのはめんどうだからな》



 こうして、ルークとシュスはノルマを果たした。





 レドルノフとミラは住宅地に来ていた。

 住宅地の様子を見て、レドルノフは舌打ちをした。


「おいおい、まだ避難が終わってねぇじゃねぇか」


 ミラが少しだけ不安そうに訊いてくる。


「どうするの? 先に住民たちを避難させる?」

「いや。今外に出したら、逆に危険だ。先に潰すぞ」

「オッケ~。そんな訳で、出てきていいよ~」


 ミラの呼びかけに応じ、建物の陰から男が出てきた。

 だが、そいつは人間じゃなかった。

 金の長髪に銀色の瞳、頭頂部に小さな一対の白い羽と背中に漆黒の翼を生やした男。

 一目見ただけで、こいつは人間じゃないということがわかる。


《それじゃ、心置きなくやっていいのか?》

「ああ、構わねぇよ」

「あはは~、早く終わらせるに越したことはないよね~」


 言葉を発すると同時に、重心を低くしていくレドルノフとミラ。

 そんな二人を見て、悪魔は頷いた。


《ふむ、確かに強いな。並の人間じゃ、絶対に勝てない》

「…………そういや、名前をまだ聞いてなかったな」

《んぁ? 名前か?》


 レドルノフの言葉に、悪魔は短く答えた。



《俺の名前は、ルシファーだ》



 刹那、レドルノフとミラが同時に踏み込んだ。

 圧倒的な速度で、ルシファーとの間合いを詰めていく。

 その速度は、常人の目では捉えることすら許さないほどだ。

 だが。


《強いっつっても、所詮は『人間』の枠組みでの話だ》


『魔王』はあっさり見切り、アクションを起こす。


《大地の牙》


 刹那、地面から二本の土の槍が生えて、二人を襲う。


「「ッ!?」」


 突然の超常現象に驚くも、二人も超人的な反応で回避行動に移る。

 レドルノフは裏拳で砕き、ミラは跳躍することで回避する。

 それにルシファーは訝しそうな顔をした。


《あんれぇ? 十本出すつもりだったのに、二本しか出なかったな。こりゃ、思ったが力落ちてんな~》


 なんて、呑気に言う。

 そんな彼を無視して、レドルノフとミラはどんどん距離を詰めていく。


《こりゃこりゃ、人の話を少しは聞きんしゃい》


 なんて、ジジ臭いことを言ってからルシファーはバックステップで後退して、距離を稼ごうとする。

 だが、レドルノフとミラの方が速い。

 おそらく、近接戦闘が得意ではないのだろう。

 レドルノフは数瞬でその思考に至る。


「ミラ、小細工なしで白兵戦で潰すぞ!」

「…………てか、私たちにそれ以外の戦い方なくない?」

「…………行くぞォ、オラァ!!」

《あ~、作戦会議は終わったか?》


 二人の会話にルシファーが入ってきたことによって、二人の意識は戦闘に引き戻される。

 レドルノフはルシファーとの間合いを測る。

 距離はざっと、三メートルと言ったところだ。

 攻撃に対応しやすいようにするために、歩数を多くしても二歩で肉薄できる。

 だがそれは、ルシファーが何もしなければだ。


《あはは~、近接戦闘はミカちゃんの本分だし、俺の十八番(おはこ)は遠距離・支援だから、お前らのやり方に付き合う気はないよ。反発》



 刹那、レドルノフとミラは磁石が反発したかのようにその場から弾かれた。



 一気に間合いが五メートルから十五メートルまで広がった。

 それに二人は舌打ちする。

 もう大体、ルシファーの能力は察しがついた。

 おそらく、発言したことが現実になるという無茶苦茶な能力なのだろう。

 下手をすれば、パンドラ以上の反則能力だ。


(こいつ、たぶん俺たちの手じゃ負えねぇぞ…………!)


 こういう手合いは、“神の領域”に至ったあの三人にやってほしい、というのが本音だ。

 だが、レドルノフはすぐさまその考えを切り捨てた。

 ないものねだりをしても、仕方がない。

 このあたりの切り替えの早さは、元傭兵ならではだろう。



 現存戦力で最小の犠牲で最大の戦果を得る。



 それが、傭兵の在り方。

 だから、この場にある戦力は全て使う。

 もちろん、誰も死なせずにだ。

 ルシファーは追撃をせずに、肩をすくめた。

 作戦会議の時間をやると、言外に言っている。

 レドルノフは憤ったりせず、好都合だと思った。


「ミラ、俺が突っ込むからお前は援護に回れ」

「危なくない? 私が行った方が、生存率が高いんじゃ」


 彼が言っているのは、竜人の生まれ持った防御力のことだろう。

 竜人の肌は硬く、並の武器では傷つけることすらかなわない。

 それ程の防御力を、竜人は有している。

 だが、


「いやな、俺は小細工は苦手なんだよ」


 それに、と付け加えて、にやりと笑って言ってやった。


「敵は正面から倒すのが一番楽に決まってんだろ」


 ミラは呆れたようにため息をついた。

 そんな彼に、指示を出してやる。


「お前がここだと思った瞬間に、『神鳴』を使え。ルシファーでも直撃すりゃダメージを与えられんだろ」

「わかった」


 レドルノフとミラがルシファーを睨みつける。

 それでルシファーは、二人の作戦会議が終わったことを悟った。


《第二次作戦会議は終わったか?》

「お前が俺たちに、作戦会議をさせてくれる時間を与えてくれたからな」


 レドルノフの嫌味にルシファーは苦笑する。


《そこを突かれると痛いな。俺は本心では、お前らと戦いたくないんだよ。どうすりゃ、戦わずに済むかな~、って考えてる》


 それに二人は、もしかして戦闘を回避できるのか、と淡い希望を抱いた。


「本当か?」

《あぁ。なにせ俺の目的は、別に大量虐殺~とか、人間界を滅ぼしてやる~とかじゃないからな》


 ルシファーは隠すことをせずに、あっさりと目的を告げた。



《俺の目的は、この国の王族を皆殺しにすることだからな》



 二人の淡い希望は、あっさり砕けた。

 交渉の余地などない。

 こいつは、ここで倒さなければならない。

 なにせこいつの目的は、この国では一応王族であるアンリなのだから。

 レドルノフは一度、大切なものを全て失っている。

 だから、もう二度と大切なものを失わないと決めたし、約束した。

 ミラは初めて、自分を受け入れてくれる居場所を見つけた。

 居心地が良いと感じているし、絶対に失いたくない。


《ふむ、なんか、スイッチ入っちゃったみたいだな》


 ルシファーは、大きなため息をついた。

 そして、目を細めて言った。


《オーケー。その覚悟に免じて、命は取らないでやるから掛かってこい》

「「上等だクソ野郎!!」」


 叫ぶ二人に、ルシファーは申し訳なさそうに言う。


《つっても、今の俺じゃ、加減が難しいからな。相手はこいつだ。

 いでよ、最強の傭兵!!》



 刹那、ルシファーの目の前に段ボールが現れた。



《「「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」」》

 三人の動きが止まり、沈黙がその場を支配する。

 今まさに、攻撃しようとしていたレドルノフとミラの動きも止まっている。

 ルシファーは段ボールの歩み寄る。

 そして、段ボールの中を覗き込んだ。


 その中は、空っぽだった。


《……ふむ、相棒の方を呼び出したか》

「「CAPCONに謝れ」」

《消えろ》


 ポン、と間抜けな音を立てて、段ボールは消えてしまった。

 それを確認して、ルシファーは微笑を浮かべながら二人に向き直る。


《そいじゃ、相手はこいつだな

 出てこい、熊》


 刹那。


「クマー!」


 と、少しだけ可愛らしい鳴き声をあげながら、どこからとなく熊が現れた。


「く、熊吉! 熊吉なのか!?」


 レドルノフが意味不明なことを叫ぶ。

 それを無視して、今度はちゃんと召喚が成功したのを確認して、ルシファーはにやりと笑う。


《さァ、森の熊さんよ! あの二人の食べておしまい!》

「クマー!」



 熊がルシファーを押し倒した。


《………………………………………………………………は?》

「クマ! クマ! クマ! クマ! クマ! クマ! クマ! クマ! クマ!」


ルシファーを押し倒した熊が、熊パンチを彼の顔にしこたま入れる。


《ふご、げふ、ぐは!?》


 熊の体重は、三百キロを超えているだろう。

 そんな熊の、全体重が乗ったパンチ。

 即死しないルシファーを褒めるべきだろう。

 ……………………あ、首がゴキンと折れた。

 ルシファーはピクリとも動かない。


「熊吉ー!!」

「クマー!!」


 レドルノフと熊が、ガシッ!! とハグする。

 ミラは状況についていけず、涙目になった。


「元気だったか、熊吉?」

「クマー」

「そうかそうか! …………何言ってんのかさっぱりわからん!」

「クマー」



《消えろ》



 刹那、熊吉はレドルノフの前から消えた。


「熊吉ィ!!」


 悲鳴に似た叫びを、ルシファーは無視する。


《だァ、クソ! 俺もう絶不調じゃねぇか! もういい! 自分でやってやるァ!》


 ルシファーがこれから自分で戦うつもりらしい。

 ここが正念場だ。

 ……………………だから、そこで膝をついて「熊吉ィ、熊吉ィ」と、落ち込んでいる筋肉には立ち直ってもらわないと困る。


「レドルノフ、立ち直ってよ」

「熊吉ィ…………」

「ふんぬ!」

「ぐぼッ!?」


 いつまでも落ち込むレドルノフを拳で呼び戻す。

 それでようやく、彼は意識をこちらに戻した。


「何を、するンだ!?」

「うるさい! 戦闘中なんだから、真面目にやってよ!」

「あ、忘れてた」


 レドルノフのびっくり発言に、ミラは自分を落ち着けるために深呼吸を何度かした。

 そうしないと、彼を撲殺してしまいそうだったから。


《行くぞ、クソども! 来ォい!》

((あれ? 言ってることが、逆転してる?))


 まぁ、せっかくのお誘いなので二人はそれに乗っかる。

 レドルノフは右腕を引き絞り、そのまま掌打を放つ。

 空掌。拳法使いにとって、唯一の遠距離攻撃の技。


《あはは、甘いよ。拡散》


 刹那、衝撃波が空中であらゆる方向へと力の向きが変わり、霧散した。


《あっはぁ、雷鎚。大地の牙。炎弾》


 刹那、巨大な鎚の形をした雷、五本の土の槍、多数の炎の弾丸が二人を襲う。


「ミラ、俺の後ろにいろ!」


 レドルノフの言葉に、ミラは困惑の表情を浮かべる。

 だが、迷ってる暇はない。

 戦場での迷いは、死に直結するのだから。

 指示通り、彼を盾にするように後ろを走る。


「すぅ、はッ!!」


 レドルノフは独自の呼吸法、練気を行って、一瞬で『外功』を練り上げる。

 ※ミラにはただ呼吸しただけにしか見えていません。

 そして。



レドルノフはルシファーの攻撃を突進で全て破った。



《「……………………え~」》


 びっくりしすぎて、ミラとルシファーはそれしか言えなかった。

 だってそうじゃん?

 生身で、高電圧の雷鎚、土でできた鋭い槍、灼熱の弾丸を生身で、しかも無傷で突破しちゃうんだよ?


「呆気に取られてる場合じゃねぇだろうがよ!」


 肉薄したレドルノフは、ルシファーに拳を振るう。

 だが、ルシファーは慌てない。


《おっと、激流》


 刹那、凄まじい勢いの水流が現れた。

 凄まじい勢いであろうと、所詮は水だ。

 レドルノフにダメージを負わせることは叶わない。

 だが。


「うぉっ!?」


 レドルノフは水流に呑みこまれた。

 彼が超人であろうとも、水を壊すことはできない。

 ルシファーは流されたレドルノフを見て、頷いた。


《いや、さっきのはビビったね、うん》

「そう? じゃ、もう一回ビビれよ、悪魔」



 いつの間にか、ミラが背後にいた。



《んぁ?》

「『神鳴』!!」


 刹那、炎を纏った白い雷がルシファーを襲う。


《んげ!?》


 ルシファーは口を開こうとするが、間に合わない。

 タイミングは、完璧だった。

 あいつの持っている力は、口にしたことを現実にするという、ふざけたものだろう。

 なら、喋る前に叩いてしまえばいい。


(やった!)


 と、油断したのが、悪手だった。

 刹那。



 どこからとなく現れた青い炎が、『神鳴』を呑み込んだ。



「……………う、そ………」


 あまりの事態に、ミラは思考が停止した。

 まあ、当然だろう。

 切り札であった、『神鳴』が目の前であっさり破られたのだから。


《いやぁ、やるじゃん》


 だが、思考停止状態になったからと言って、ルシファーは待ってやらない。


「ッ!」

 ミラは急いで後退して、距離を稼ごうとする。

 だが、遅かった。


《ほれ、竜人ならこれくらいは火傷で済むだろ》


 刹那、青い炎がミラに向かって噴き出した。

 回避しようとするが、間に合わない。

 ミラはあっさり、炎に焼かれた。


「ぐぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!」

「ミラ!!」

 激流から脱したレドルノフが、ミラを助けるために走り出す。

 だが、魔王はそんな彼の行為を馬鹿にするかのように、一言。


《お座り》


 刹那、レドルノフが地面に突っ伏した。


「ぐ、う、おぉ」

《無駄無駄ァ! 脱出不可能よ! 引力》


 ルシファーへと二人の体が引き寄せられる。

 そして、ルシファーは二人の首を持った。


「ぐぉ」

「う、ぁ」


 二人のうめき声を聞き流し、ルシファーは語る。


《そいじゃ、お前らの意識を奪って、俺は城に向かうかな》


 ルシファーが口を開こうとする。

 一瞬前。


「…………ま、待って」


 ミラが言ってきた。


《なんだ?》


 強者の余裕か、ルシファーは律儀に答えた。


「あんたの能力って、何なの?」

《はァ? 戦ってて、本気でわかんないのか?》

「うん、だって……不可解すぎたし……」


 それにルシファーは溜息をつく。

 億劫そうにしながらも、彼は質問に答えた。


《俺の能力は、発言したことを現実にするって能力だ》

「「うわ……」」


 二人はなぜか、非難じみた視線を向けてきた。

 まぁ、ばかげた能力だということは、自覚はある。


「じゃあ、自爆って言ったら……あんたは自爆すんの?」

《そうだな。俺が自爆……》



 刹那。

 パン! という笑えるほど間抜けな音とともに。

ルシファーの体が爆ぜた。





 拘束が解けた二人は、尻餅をついた。

 レドルノフは安堵の息をついてから、ミラへと向き直る。


「ミラ、大丈夫か?」

「うん、なんとか」


 ルシファーは殺してしまった。

 アンリからは殺さないように言われてたが、仕方ないだろう。

 ミラが何かを拾った。


「何だそれ?」

「カチューシャだね」


 ミラの手にあるのは、ルシファーの頭に生えていた小さな羽だった。

 カチューシャ。

 ということは、パチモンかよ。


「つけてみよっと」


 そう言って、ミラはカチューシャを装着した。

 そうしてから、こちらに向き直った。


「似合う~?」


 ミラの質問に、レドルノフは正直に答えた。


「微妙」

「え~」


 刹那。

 カチリ、という音が辺りに響いた。


「…………今の、何?」

「カチューシャから聞こえたぞ?」


 ミラが恐る恐る、カチューシャを外そうとする。

 だが、カチューシャは外れなかった。

 もうそれは、素晴らしくくっついていた。

 どれくらい素晴らしいか?


「取れない! 取れないよ!」

「お、落ち着け、ミラ!」


 竜人の力をもってしても、外れないほど。

「取れない! 取れない取れない取れない取れない取れない取れない!!」

 そして、ミラは、考えるのを、やめた。


 こうして、レドルノフとミラのノルマは達成された。


え? 勝ってない?

人間が魔王に勝てるわきゃない。

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