『七つの大罪』
はい、毎週更新できませんでした。
すみません。
やっぱり、不定期更新でお願いします。
黒装束のリーダー格の男が、呪文を唱えた。
「ウバナルゥラ! ウナバルゥラ!」
…………誤解してもらったら困るから言っておくが、これはふざけてる訳ではない。
本当に、これが召喚のための呪文なのだ。
呪文に反応して、魔法陣が光り輝いた。
ほらねぇ! だァから言ったろ!?
魔法陣から現れたのは金の長髪に銀の瞳で、背中に漆黒の翼をはやしたへんてこな格好をした男だった。
《おぉ、現世に来たのは十年ぶりだな》
懐かしむように呟く悪魔に、リーダーが訊く。
「失礼、貴殿の名は?」
《ん。お前が俺を召喚したのか?》
「左様」
《そっか~。いいよ、教えてやる》
そのまま悪魔は、名乗りを上げた。
《俺の名前は、ルシファーだ》
それは、最強の『悪魔』であり、『魔王』の名前であった。
☆
アンリは大きなため息をついた。
「はぁ、『七つの大罪』か」
「どうする? 一応、恩人だからな。殺すのは、アウトだろ?」
「そうだな。今回は拘束だな」
彼らはとんでもないことを言っているが、彼らにはそれを実行できるだけの実力がある。
伊達に“神の領域”には至ってないということだ。
「だが、拘束となると、手間だな」
「ああ、俺たちなら十分可能だし、そう時間もかからねぇが」
アンリの言いたいことは、ケイトも理解していた。
彼が危惧しているのは、『七つの大罪』がバラバラになって暴れることだ。
バラバラに動かれれば、いかにアンリたちと言えども対処が追い付かない。
殺すつもりでやればなんとでもなるのだが、今回はダメだ。
「オッケ~。それなら、こっちも数を増やしましょう」
二人の会話に、とても澄んだ女の声が割り込んだ。
二人は、まったく気配に気づけなかった。
ケイトには、王都全域をカバーできるほどの気配感知能力がある。
王都にいる蚊を数えることができるほどの精密さだ。
その彼をもってしても感知できなかった。
それほどの、気配遮断能力。
二人は、これを体感するたびに、こいつが敵じゃなくてよかったと思う。
声の主は、リースだった。
「数を増やすってのは、どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。ルークたちにも戦ってもらう」
「…………危なくないか?」
「逆にこれ以上ないチャンスじゃない? 今の『悪魔』たちくらいが、経験値稼ぎにはもってこいよ。『神』や『天使』が相手なら、私もこんなことは言わない」
『人間』は『神』には勝てない。
それは、『悪魔』と『天使』にも言えることだ。
本来なら。
「そだな。へたれた馬鹿どものリハビリといくか」
☆
黒装束の一団は、歓喜に包まれた。
召喚は成功したのだから、これで復讐は遂げられる。
だが、
《さて、ちょいと観光でもいこっかな~》
『魔王』はそんなことを言い出した。
「は?」
男たちは、思わず間の抜けた声を出してしまった。
理解ができなかったから。
《いや~、現世に来たのは久しぶりだから、どう変わってんのか楽しみだな~》
観光? 楽しむ?
何を言っている?
こいつは、悪魔のはずだろう。
理不尽に暴力を振るい、破壊をまき散らし、悲劇を起こす存在なのに。
「ま、待ってくれ!」
《ん?》
「俺たちは、復讐がしたいんだ!」
《え、やればいいじゃん》
「俺たちじゃ、できないんだよ。相手は、人間じゃないんだ。だから、頼んでるんだよ」
それにルシファーは、あっさりこう返した。
《だから、自分でやれって言ってんだろ》
男たちは、ルシファーが何を言っているのかわからなくなった。
だってこいつは、人の身では天地がひっくり返ろうが、逆立ちしようができないことをやれと言っているのだから。
《相手が何者だろうと、関係ないだろ。相手が憎いんだろ? なら、自分たちでやれよ。神頼みすんな》
いや、お前は悪魔。
《魂の売り方を間違えんなよ。売るんなら、依頼の為じゃなく、力を得るために売るんだな》
言うだけ言って、ルシファーは踵を返した。
そして、言う。
《ワープ》
刹那、ルシファーの姿は消えた。
☆
ルークとレドルノフはアンリに叩き起こされた。
二人ともケイトにぶん殴られた顔を気にしている。
しかし、アンリは気にしない。
「お~し、さっき情報が入った。この王都に、『七つの大罪』が現れちゃったらしい。みんなで拘束するぞ~」
なんて、遠足に赴く小学校の教師並みの気軽さで言った。
すんげぇ、とんでもないことを。
『七つの大罪』とは、“憤怒”、“怠惰”、“強欲”、“暴食”、“嫉妬”、“色欲”、“傲慢”を司る七体の最強の悪魔のことだ。
「先生、僕やレドルノフ君では手に負えません」
「大丈夫ですよ、外道剣士君。今の悪魔たちは弱体化してるから、『七つの大罪』と言ってもパンドラよりは弱いですから」
にっこり笑顔の二人だが、ルークは、ふざけるなと思った。
相手は『悪魔』なのだ。
弱体化したしとも、人間の手に負えるとは思えない。
「そいじゃ、班分けの発表だ」
アンリの発表によって、班分けはこのようになった。
ルーク・シュス
レドルノフ・ミラ
リース
ラル
アンリ
ケイト
という具合に、以上の六班に分かれた。
「相手は七体なんだろ? 数が足りなくないか?」
「そこは、俺・リース・ケイトの誰かが二人ずつ倒すから問題ねぇ」
流石は“神の領域”に至った者だ。
次に不平をあげたのは、リースだった。
「ちょっと、ラルが独りなのが納得いかないんだけど」
「その子は、『魔装』の被験者なんだろ? しかも、かなりの高位悪魔の」
リースから聞いたが、ラルの使役している悪魔は、『七つの大罪』の次に強いとされる『八魔帝』らしい。
「けど、この子はまだ九歳なのよ?」
「なら、お前が無血で三体倒すか? それができんなら、この子は戦わなくていい」
刹那。
リースの気配がごっそりと消えた。
アンリやケイト以外は一瞬、リースの姿が消えたとすら錯覚した。
彼女は、本気だ。
ラルを戦わせないために、本気でアンリと戦う気だ。
そんな彼女を止めたのは、ラルだった。
彼は急いで、彼女の手を握った。
「……………………ラル?」
「大丈夫だよ。アスタルテは強いから、大罪相手でもなんとかなる」
「けど……」
リースは、理由は知らないがとにかく子供に甘い。
だから彼女は、子供が危険な目に遭うのは容認できないのだろう。
「チッ」
リースは舌打ちを一つして、アンリに向き直る。
「アンリ、班分けを変更して」
それが、彼女にとっての妥協だったのであろう。
それにアンリは、ため息をつきながら頭を振った。
「やれやれしゃーねーなー」
こうして、リースとラルは一緒に行動することとなった。
「だが、お前は最低でも二体は狩ってもらうぞ?」
「わかってるわよ」
リースも今は、戦闘態勢を解いている。
一触即発にならなくてよかった。
こいつらが本気で戦ったら、下手をすれば王都が吹き飛ぶかもしれない。
いや、冗談抜きで。
レドルノフがあくびを一つしてから、アンリに訊く。
「そいじゃ、話はまとまった。目標も定まった。これ以上ここにいるいみはあるのか?」
「ねぇなあ」
こうして、それぞれが獲物を求めて城を飛び出した。
ルークもまた、城から飛び出そうとする。
だが、
「ああ、ルークはちょっと待て」
アンリから制止の声をかけられた。
「なんだ?」
「お前には、ちょいとここで儀式をしてもらう」
「なんの?」
ルークの問いに、アンリはにやりと笑ってから、答えた。
「パンドラと契約するための儀式だ」
☆
ルシファーは適当な家屋の屋上に立っていた。
その銀の瞳に映しているのは、王城だった。
あそこにいる連中が、さっきの黒装束たちの復讐の対象なのだろう。
《出てこい》
刹那、六つの魔法陣が彼の周りで展開される。
そこから、七体の悪魔が現れた。
《ここは現世か? 懐かしいな》
青い短髪に青の瞳の、長身の肌が青白く不健康そうな男。
“憤怒”を司る、サタン。
《ああ、めんどくせぇ。全部めんどくせぇ》
骸骨の仮面に黒の髪をはみ出し、魔法陣の上で寝転がっている怠惰丸出しの男。
“怠惰”を司る、ベルフェゴール。
《お~い、めんどくさがるな~》
《フレ~、フレ~、ベルちゃん》
ベルフェゴールの周りをぐるぐる飛び回っている、それぞれが赤と緑の炎で体が形成されている、二羽の鳥。
“強欲”を司る、マモン。
《干上がる~。水が欲しい~》
魔法陣の上で弱音を吐いている、全長が八メートルにも及ぶ青い蛇。
“嫉妬”を司る、リヴァイアサン。
《それより、我は腹が減った。何か食いたい》
体が真っ白の体長が二メートルにも及ぶ蝿。
“暴食”を司る、ベルゼブブ。
正直、二メートルサイズの蝿は気持ち悪い。
《うぇぷ》
吐き気がする。
しかも、なんか臭いというか、言うなれば、ゲロ以下の臭いがプンプンするぜェ!
《そこの堕天使、食ってほしいのか? 貴様の髪の毛を貪られたいのか?》
《怒っちゃやーよ、ベーやん》
そして、最後の一人。
《久しぶりのシャバデース☆》
テンションMAXのうざい、少しクセのある白の短髪に黄色の瞳の男。
“色欲”を司る、アスモデウス。
全員がそろったのを、“傲慢”を司る、ルシファーは確認した。
《チョリース》
《《《《《チョリース》》》》》
意外とこいつらは、ノリが良い。
アスモデウスが、こちらに訊いてくる。
《ルシファー、どうしていきなり呼び出したんですか~☆》
《ん~、ちょいとした遊びだよ。あそこに、城が見えるだろ?》
七人が、城を確認した。
それをちゃんと確かめたルシファーは、全員に説明を続ける。
《俺たちで今から、あそこにいる王族を血祭りに上げる。早い者勝ちで、一般市民を殺すのはなしだ。ただし、自衛のためならオーケーな》
ルシファーは存外義理堅い。
彼が王族を血祭りに上げる、と言い出したのは自分を呼び出したあの黒装束の集団のためだ。
ルシファーは、その気になればいつでも現世、人間たちが住む世界に来ることがいつでも可能だ。
だが、それなりの準備が必要のため、そうそう行こうとは思わない。
だけど、召喚されるという手段での現世訪問なら、一瞬かつとても楽なのだ。
それを、あの黒装束の集団はやってくれた。
だから、そのための渡航料だけはせめて払おうと思った。
せめて、あの人間たちが道を踏み外してしまう前に、止めてやろうと思っている。
《そいじゃ、行くぞてめぇら。それぞれ、思い思いの方法であの城まで行って、王族狩りだ》
《《《《《オォ―――――!!》》》》》
こうして、最強の『悪魔』たちが動き出す。
《では、スペシャルターイムの始まりで~す☆ これから私の自己紹介を……》
《ああ、今日は尺の関係上、ここまで》
《えぇぇええええええ…………》
そして、アスモデウスは、尺を使うのを、やめた。
悪い点とかあったら、なんなりと言ってください。
善処しま~す。




