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リグレットアーミーズ  作者: にがトマト
竜人・魔装編
17/71

国境を越えよう

投稿遅くなりました~

すみません。

レドルノフが服縫うの時間かかりました。

※嘘です

 リースはレドルノフが縫い直した服へと着替えた。

 それは、長袖の白いTシャツに太ももの際どいラインまで出る短パンという、体のラインが強調される服装だ。

 まぁ、リースはスタイルが抜群だから、似合ってない訳ではないが。

 彼女は不服そうな顔をしている。


「レドルノフ、これはちょっとないんじゃない?」

「ああ? いいんだよ。お前、いい年して独り身なんだからよ。そういう格好でもして、男引っかけろ」

「えぇ、いや、でも。これじゃ、夜遊びしてるみたい」

「もう! せっかく作ったんだから、文句ばっかり言うんじゃないの!」

「お前、どこのお母さんだよ」


 今にも拳を突き出そうとしているリースを、ラルが止める。


「大丈夫だよ。似合ってるから」

「いや、でもこれ、寒い国行ったら真っ先に凍死するわよ」


 ミラが屈託のない笑顔で、彼女に言う。


「別によくない? 寒かったら、ラルに温めてもらえばいいよ」

「……人肌で?」

「いや、呪詛で」

「絶対にいや!」


 待ちくたびれたルークがほのぼのと会話する三人へと言う。


「てか、そろそろ出発しようぜ」

「え~、この格好で外出るのは、恥ずかしいんだけど」

「なんと、妖怪山姥(やまんば)にも羞恥心があたたたたたたたたたたたたたたたたたた!!」





 六人はリグレット王国に向かうべく、森の中を移動していた。

 今は、六人とも座って休憩している。

 ルークは眠そうにしながら、切り株に腰かけている。

 気怠そうに歩いているだけに見えるかもしれないが、辺りへ注意を払うことを怠ってはいない。

 まぁ、ダルいのは事実だが。

 ラルが隣に座っているリースへと訊く。


「目的地の、リグレット王国ってどのあたりにあるの?」

「このネロウス皇国の隣の国だから、そこまで遠くないわよ。できれば、今日中に国境を越えたいんだけどね」

「国境まで、あとどれくらいあるの?」

「さあねぇ。レドルノフ、あとどれくらい先?」


 そう問われて、レドルノフは臭いを探る。

 それが終わって、リースに向き直る。


「あと、三キロってとこだな」

「三キロかー」


 リースが少しめんどくさそうに言ったのは、ペースを倍にでもしない限り、今日中に王都にたどり着くのは無理だと判断したからだろう。

 考え込んでいるリースに、訊く。


「どうすんだ? 関所で泊まるか?」

「う~ん。あんまり衛生面が良くないよね~」


 野宿の方が衛生面はしっかりしているとでも言いたいのだろうか、この女。

 先日の悲劇を忘れたのではないだろうか。

 ルークのジト目を無視して、リースはラルとシュスを見る。


「けど、子供二人を連れた状態で野宿するのは、得策じゃないかな。またペインジになるのは困るし」

「おお、あの悲劇をまだ覚えていたか。神よ、貴方に感謝します」


『狂神』とはいえ、腹に神を抱えているのだから、そいつに感謝していることになるだろう。

 レドルノフは首を横に振る。


「俺は、もうならねぇよ。てか、もうボコられたくねぇ」

「う~ん、今はなってもらったら困るわね。ミラは自衛してもらうとしても、シュスとラル護りながらあんたらボコるとなると、加減が、ね」


 カクブルと、ルークとレドルノフは震えた。

 今のは言外に、加減はしないぞ、と言っているからだ。

 リースと知り合ってまだ日が浅いほかの面々は、首を傾げている。

 彼女の恐ろしい発言に気づいていないラルが、彼女に訊く。


「ねぇ、何の話?」

「ん? えっとね、ルークとレドルノフが凶暴化して、みんなを襲うのを、私が止めるお話」


 それを聞いて、シュスはため息をついた。

 ルークとレドルノフはトラウマの扉が開いた。


「「?」」


 そんな三人を見て、ミラとラルは首を傾げる。


「あはは、別にわかる必要はないわよ」

「妖怪しばき魔」

「ラル~、ちょっとむこう向いててね~」

「いやぁああああああああああああああああああああああああああ!!」


 ルークは脱兎の如く逃げ出した。


「あ、あ、あ、ちょっと待ちなさい!」


 リースも走って追いかける。

 追いつかれることは、死を意味する。



 ルークとリースの追いかけっこを横目で見ていたミラは、突然違和感を感じた。



 振り返ると、ラルがもの珍しそうに、翼を触っていた。


「……何してるの?」


 そう訊くと、彼は答えた。


「これ、飾りなの?」

「え?」


 ラルが全力で、ミラの翼を引っ張った。


「痛たたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!!」

「取れ、ないー」


 どうやら、ラルはミラの翼を飾り物か何かと勘違いしているらしい。


 中々取れないから、彼は翼を持ったまま足で背中を押す。

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」

「むー!」


 このままでは取れるというか、もげてしまう。


「ラル、ストップ」


 ルークをボコボコにし終えたリースが、ラルの頭に手を置いた。

 ミラの翼からラルの手を離させる。


「ミラは竜人だから、これは飾りじゃないのよ」

「あ、そうなんだ。ミラ、ごめんね」

「うぅ、痛かったよぉ……」


 涙目になりながら、ミラは泣き言を言った。

 シュスが彼の頭を撫でて、慰める。

 ミラが憐れに見えたリースは、お仕置きとしてラルの頬を引っ張る。


「いふぁいいふぁい」

「お仕置きよ」


 一人で黙々と準備を整えていたレドルノフが、全員に向かって言った。


「そろそろ出発しようぜ」





 六人は昼過ぎに関所に到着した。


「意外と早く着いたわね」

「だな」


 予定より早く着いた要因は、シュスとラルが思ったよりも歩くことができたという一点につきる。

 だが、本当の問題はここからなのだ。

 リースがため息をつく。


「私独りだったら、密入国するのに」


 なんて、犯罪臭が臭う台詞を言う。

 リースが五人へと向き直る。


「国境を越えるにあたっては、班をいくつかに分けるわよ」


 これは、誰かが検問に引っかかっても、他の者だけでも一足先に国境を越えさせるためだ。

 リースの発表により、班は以下の四班となった。


一.ルーク

二.ミラ・シュス

三.リース・ラル

四.レドルノフ


 シュスが怪訝そうな顔をして、リースに訊いた。


「なんで、ルークとレドルノフは独りなんだ?」

「えっとね、ルークは検問に引っかかりそうだから」

「なんでさ?」


 リースがルークの腰に差しているものを指差した。

 それは、いつもルークが提げている刀だ。


「あれ、危険物持ち込みになるのよ」


 それにルークは、にやりと笑った。


「ああ、大丈夫だよ。俺には、コネがあるからな」

「そう。なら、いってらっしゃい」

「おう」





 ルークが国境を越える場合


 さあ、みんな。

 みんなに、国境を越えるためのマニュアルを教えてあげよう。

 なぁに、とっても簡単さ。

明日にでも、君は国境を越えられるよ。

 まず、検査官が必ず困ったような顔をして、言ってくるんだ。


「あの、申し訳ございませんが、危険物の持ち込みはご遠慮願います」


 これはね、ある種の暗号なんだ。

 それ持ったままここを通りたければ、



 袖の下をYOKOSE☆



 ってね。※違います。

 だから、ご注文通りに、わいではなく、袖の下をあげるんだ。

 俺は有無を言わせず、札束を握らせる。


「いや、こんなもの渡されても、困ります」


 おやおや、まだ足りないのかい。

 本当に困ったちゃんだ。

 仕方ないから、五百円玉を握らせる。


「いえ、ですから」


 なんということでしょう!

 この検査官、まだ増額を要求してきます!

 話になりません!

 だから俺は、検査官を無視して、国境を越えてやった。


 ね? 簡単だろ?

 これで君も、明日から国境を越えられること間違いなしだ。

 ※絶対にマネしないでください。



ミラとシュスが国境を越える場合。



「シュス、ルークと一緒に国境超えるとき、どうやって国境超えてたの?」

「いや、それが、タイタンニック号に乗ってしか、越えたことないんだ」

「……なにそれ」


 そんなこと言われても、これ以上詳しく言いようがない。

 そうこうしていると、検査官の下にたどり着く。


「うわ、凄いかわいい娘来た」


 それを聞いて、ミラが涙目になる。


「あーあーあーあーあーあー、泣くな泣くな」

「うん、わかってるよ」


 なんとか、彼をなだめることに成功する。

 安堵の息を吐く。

 検査官が二人に言う。


「それではまず、手荷物を見せてください」


 まず最初に、シュスからリュックを手渡す。

 検査官は受け取って、中を改める。


「ええと…………魔道書三冊に、水が三リットル。はい、大丈夫です。では、そちらの方も、お願いします」

「私? 荷物なんてないよ」

「え」


 検査官のその言葉を最後に、三人に沈黙が訪れる。

 検査官は必死に考えていた。

 ミラはどうして手ぶらで、国境を越えようとしているのか。

 シュスはただただ、めんどくさいと思っていた。

 ミラは、あれ? 何かまずいこと言った? と必死に自分の落ち度を探していた。


 沈黙を破ったのは、シュスだった。


「あの、もう行っていいですか?」

「あ、どうぞ」


 検査官は思わず、反射的に返した。

 言質も取ったことなので、また何かを言われる前にシュスはミラの手を引く。


「ミラ、もう行くぞ」

「うん」





 二人は一足先に国境を越えて、待っていたルークと合流した。


「二人も無事国境を越えたな」

「ねぇ、コネってなんなの?」

「賄賂だ」

「お前最低だな」



 リースとラルが国境を越える場合。



 二人は手をつないで歩いていた。

 傍から見れば、親子にしか見えない。


「リース、この関所を越えれば、もうリグレット王国なの?」

「そうよ。まぁ、ここを越えても王都に着くには、もう少しかかるけど」


 そうやって話していると、二人は検査官の下にたどり着く。

 二人を見て、検査官は残念そうな顔をした。


「あ~、くそ、かなりの美人なのに」

「「?」」


 二人が首を傾げるのを見て、検査官は慌てて誤魔化した。


「いえ、なんでもありません。では、手荷物を見せてください」

「この子は荷物なんてないので、私のだけでお願いします」

「わかりました」


 リースは大人しく、手提げバッグを渡す。

 検査官が中を改める。


「ええと…………食料と、ワイヤー? ……まぁ危険性はなさそうだし、いいか」


 実はそのワイヤーがその中で一番危険だったりする。

 しかし、軍人ではないただの検査官に、それがわかるはずがない。

 検査が終わったと判断したリースは、ラルの頭に手を置く。


「ラル、行きましょうか」

「うん」


 二人が歩き出そうとすると、


「待ってください」


 検査官が声をかけてきた。


「…………何か?」

「太もものホルスターも中を改めます」

「え」


 嫌な汗が流れる。

 ホルスターの中まで確認されるとは、思っていなかったから。

 この中を見られるのは、まずい。

 なにせこの中には、ナイフから猛毒まで、暗殺に使う道具がよりどりみどりなのだ。

 見られたら、即アウトだ。

 普段彼女は、国境を越えるときは密入国だ。

 だから、ホルスターの中まで見られるとは思っていなかったのだ。


「えと、あの、その、ホルスターも見せないとダメですか?」

「見られたら、困りますか?」


 リースは懐へと手を突っ込んで、白い球を取り出した。

 そして、それを掲げて、


「さらば!」


 地面にたたきつけた。

 刹那、球が破裂して煙が噴き出す。

 まぁわかる通り、煙玉だ。


「うぉ!? なんだこれ!?」

「ケホ、コホッ、なにこれ、煙い」


 検査官が慌てて、ラルが咳をする。

 素早くラルを抱えて、彼に言う。


「ラル、予定変更。走るから、舌噛まないように気をつけて」

「ええ!?」

「ま、待て!」


 制止の声をかけてくる検査官を無視して、ラルを抱えてその場を後にした。





 ラルを抱えた状態で、肩で息をしていたリースは、先に国境を超えて待っていた三人と合流した。

 三人は談笑していた。

 リースを見て、ルークは彼女に訊く。


「どうしたんだ?」

「えっと、ナイフとかが見つかりそうになったから、ラルを抱えて逃げてきた」

「馬鹿じゃないの?」


 ミラにそう言われて、リースは泣きそうになった。



 レドルノフが国境を越える場合



 レドルノフが検査官の下にたどり着く。

 殴られた。


「なんでさ!?」

「お引き取りください」


 殴られた挙句に、門前払いまでされる始末だ。


「なんでさ!?」

「私、マッチョが心の底から嫌いなんです。ああ、マッチョという人種全てが滅びればいいのに」

「えぇ」

「そんなわけですので、お引き取りください」

「いやいやいや、そういうわけにはいかねぇんだよ」


 検査官が舌打ちする。

 検査官として、あるまじき行為と言うしかないだろう。

 そして、舌打ちしたいのはこっちである。


「帰ってくださいよ、筋肉人間(サイボーグ)。帰って、プロテイン五リットル飲んで死んでくださいよ」

「店長だ! 店長を呼べ!」


 正確には、責任者と叫ぶべきだったろう。

 検査官はため息をついた。


「仕方がありませんね。私は検査官として、全身凶器を通すわけにはいきません」


 そう言って、検査官は指をパチンと鳴らした。

 刹那、関所に詰めている大勢の兵士が部屋に入ってきた。


「三分間待ってやるので、出ていくかリンチか選んでください」


 それにレドルノフは笑顔で、こう言った。


「ふざけるなクソ野郎」





 レドルノフは先に国境を越えて待っていた五人と合流した。

 ミラが、心底不思議そうに訊く。


「ねぇ、なんか関所から、大勢の悲鳴が聞こえてきたんだけど」

「ああ、門前払いされかけたから、関所に詰めてる兵士二百人制圧してきた」


 人は彼をこう呼ぶだろう。

 化物、と。

 まぁ、こんなことはルークやリースにとっては日常茶飯事なので、あまり気にしない。

 リースが全員に呼びかける。


「さーて、馬車も拾ったし、今日中に王都に行きましょうか」




 ミラとラル以外は口には出さないが、わかっていた。

 その馬車は、強奪したものだと。

次で、新章に入るよ~

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