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リグレットアーミーズ  作者: にがトマト
竜人・魔装編
12/71

竜人少女現る!

 竜人は町で大暴れしていた。

 所々赤が混じった白の長髪に黄色の瞳、服はどこで手に入れたのか、黒を基調とした男物の軍服だ。

 軍服に包まれている体は、華奢だった。

 竜人を視界に捉えた不良のリーダーらしき男が、仲間へと呼びかける。


「相手は竜人とはいえ、女だ! ビビんじゃねぇぞ!?」

『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』』』


 不良たちの声を聞いて、竜人は露骨に顔を歪めた。


「ったく、またか。めんどいな~」


 刹那、リーダーらしき男が吹き飛んだ。


「ごがっ!?」

「んなっ?」

「なにが……」

「ぼーっとしてんな」


 不良たちが(おのの)く中、その集団の中心にいつの間にか竜人がいた。


「クソぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 バットを竜人に向かって振るった。


「遅いよ、それ」


 刹那、バットが叩き折られた。


「ッ!?」

「はーい、二人目」


 竜人が蹴りを放つ。



「こらこら、あんまり若いのをいじめるもんではないぞ」



 竜人の足が掴まれて、蹴りを止められた。

 蹴りを止めたのは、アロハシャツを着た一人の老人だった。


「長老!」

「ほほほ、下がっていなさい。お前たちでは、こいつには勝てん」


 彼は昔、部隊を率いるほど、そこそこ名のある兵士だった。

 今は隠居暮らしだが、腕は衰えていない。

 本人曰はく、今の方が昔より強いと語っている。

 長老が竜人へと向き直る。


「久しいな」

「ん? あんた、会ったことあったけ?」

「覚えとらんか」

「んなの、どうでもいいからさ、足、離してよ」


 刹那、二人が目に止まらぬ拳のやり取りをする。

 長老が突きを放ち、竜人が払う。

 立場が何度も入れ替わり、二人は同時に距離を取った。

 長老がため息をつく。


「ふむ、覚えとらんか。ま、敗者はその資格はないから、仕方のないことかもしれんな」


 竜人はしばらく考え込んでから、ぱっと顔を輝かせた。


「あ、思い出したー。あんた、あの部隊率いてた男か。老いたね~」

「そうかそうか。覚えていたか。嬉しいのぉ……」


 刹那、長老から殺気が爆発した。


「ならあの時、儂を殺さなかったを、後悔させてやる」

「言うねぇ。いいよ、掛かってこい」





 町の住人から長老と呼ばれている老人は、目を細めながら竜人を見た。

 間合いを測る。

 その距離、十メートル。

 この間合いなら、四歩で潰せる。


「行くぞォ!!」


 一、二、三、四歩。

 竜人に肉薄した。


「ん、昔より、速いね」

「仲間の無念、晴らさせてもうぞ!!」


 全力の正拳突きを放つ。



「けど、人間にしてはなんだよね」



 刹那、竜人の姿が視界から消えた。


「な!?」

「こっちだよ。もらうよ、薄ノロ」


 耳元で竜人が囁くように言った。

 そう思った時には、突きを放った右腕がなくなっていた。

 竜人は奪った右腕を、くるくると回して遊んでいる。


「いや~、人間って相変わらず脆いなぁ」


 完全に、こちらを侮っている竜人に、言ってやった。


「ふん、腕の一本くらい、くれてやるわ。どうせ、それ義手・・だからな」

「へ?」

「弾けろ、『鬼海虫(きかいちゅう)』」


 刹那、義手が爆発した。

 砂煙が、もくもくと立ち込めていて、爆発の勢いを物語っている。

 竜人の姿は見えないが、生きているとは思えない。

 老人は、右手で頭をかこうとして、奪われたことを思い出して、やめた。


「さて、これで駄目なら、儂にはどうしようもないのだが」



「え~、それじゃ、もうお終いなの?」



 煙の中から発せられた声に、老人は冷や汗を流した。

 煙が、払われる。

 見ると、竜人の周りに何かが、漂っていた。

 真っ赤な炎を纏った、白い雷。

 どうやら、それで爆発から身を護ったらしい。

 老人の目が、ソレに釘づけになっていることに竜人は気づいたらしく、説明してきた。


「ああ、これ? これはね、『神鳴(かみなり)』って言って炎、雷、神の三属性を持ってる、私の特殊能力的な奴なんだ~」


 老人は状況を冷静に分析する。

 奥の手は防がれ、自分は片腕。

 これでは、どうあがいても勝ち目はない。


「クソ、万事休すか……」


 老人が憎々しげに呟いた。

 その瞬間。


「おい」



 十メートルもの大地の塊が竜人に投げられた。



「んな!?」


 さすがの竜人も驚き、『神鳴』とやら土塊に向かわせた。

『神鳴』は、土塊を粉々に砕く。

 土塊が飛んできた方へと、老人と竜人は目を向ける。

 そこには、赤のオールバックと赤い瞳、革ジャンにGパンという格好をした男だった。

 男が、拳を合わせて、言う。


「一般人と隠居してる老兵相手に大人げないことしてんじゃねぇよ。俺が遊んでやるから、掛かってこい」

「へぇ、おもしろいじゃん」





 ルークたちは、少し離れた高台から竜人と老人の戦いを見ていた。


「な~んだありゃ?」

「ふむ。私にもわからないわね~」


『神鳴』とやら、あれはめんどくさそうだ。

 シュスが二人に訊く。


「なぁ、あれ、応援とか呼んだ方がいいんじゃねぇの?」


 リースは首を横に振った。


「あいつ、たぶん集団戦慣れしてるわよ。雑兵をいくら読んでも無駄」

「そんじゃあ、あんなよくわからないものを、レドルノフは相手するのか?」

「相手がどんなものかなんて、関係ないわよ。あいつはね、とにかく理不尽な暴力が許せないだけ」


 だがレドルノフでも、あれはきついだろう。

 そう思い立ったリースは、ルークに向き直った。


「ルーク、加勢してきなさい」

「ええ? なんで俺が。お前が行けよ」

「こんな、か弱い乙女を戦いに行かせる気?」

「え? か弱い乙女なんて、どこにいるんだ?」

「ああ?」

「行って参ります!」


 そう叫んで、ルークも戦場へと向かった。





 レドルノフと竜人は、互角に打ち合っていた。

 一発一発が、岩をも砕く連撃を繰り出すレドルノフ。

 その威力を流しながら、蹴りを放つ竜人。

 その速さは、戦いが進むごとに上がっていた。

 竜人が、口笛を吹いてレドルノフを称賛した。


「いやぁ、やるじゃん。さっきのじいさんは、もうこのスピードで追えなくなってたんだけどねぇ」


 そんな竜人に、彼はつまらなそうに言った。


「ったく、遊んでんじゃねぇよ。お前、全然本気じゃねぇだろ」


 竜人は、愉快そうに笑った。


「あは、わかるんだ。てことは、あんたもか」

「ま、そういうこった」



 刹那、二人の動く速度が、一気に上がった。

 人智を超えた速度で、打ち合う。



「あはは、速い速い」

「余裕ぶっこいてんじゃねェ!!」


 レドルノフが拳を放つ。

 竜人は(ひじ)で、完璧に受け止めた。

(だと思ってんだろ)


 刹那、ゴキバキという音が辺りに響き渡った。

 互いに距離を取り、睨み合う。

 竜人が肘をさすりながら、言ってきた。


「やるう。完璧に止めたと思ったのに、関節外されちゃったよ」

「あ? 関節? こちとら、折ったつもりだったんだがな」


 彼は、竜人の肘に寸勁、、または発勁と呼ばれるものを打ち込んだ。

 完全に勢いを殺されても、ゼロ距離から大きな破壊を起こすことができる。

 それが、寸勁だ。


「こっちも、ちゃんと(あばら)にくらわせたけど」

「ああ、けっこう痛かった。こりゃ、ひび入ったな」

「ひび? こっちこそ、折ったつもりだったんだけど」


 レドルノフは、寸勁を打つために生じた、一瞬の隙を突かれて蹴りをくらってしまった。


(さてと、どうする)


 状況は、あまり良いとは言えない。

 身体能力は僅差だと思って、ほぼ間違いないだろう。

 あちらには、『神鳴』という、切り札がある。

 まだ本気ではないし、こちらも奥手がないことはないが、あまり使いたくはない。

 レドルノフが考えあぐねていると、竜人が言ってきた。


「ん? 来ないの? なら、こっちから行くよ!」


 竜人がこちらへと走り出してきた。

 レドルノフは舌打ちし、走り出す。


(ああ、ウダウダ考えるのはしゃらくせぇ! どうせ俺は小細工苦手なんだ。なら、正面からかち合って、叩き潰す!)


 二人があと一歩踏み出せば、拳の間合いへと入る。



 刹那、二人は同時に下がった。



 わざわざ走って、間合いを潰していたのにも拘らずに、だ。

 その理由は、二人の間に、斬撃が飛来してきたから。

 飛ばしてきたのは、言うまでもなく、ルークだった。


「よぉ、俺も混ぜてくれよ」


 そんなことを言ってくるルークに、竜人はめんどくさそうに言う。


「二対一、か。なら、そろそろ本気出すか」

「まだ本気じゃなかったのかよ?」


 これは本当に、身体能力は僅差だと考えたほうがよさそうだ。


「まあね。でも、けっこう真剣にやってたよ」


 その発言に、レドルノフはため息をついた。





 リースは竜人の動きを見ていた。

 そう見て、彼女はこう判断した。


「時間、かなりかかりそうね」


 おそらく、レドルノフは勝てるだろう。

 ルークも加わり、二対一になったのだから、なおのことだ。

 だが相手も、楽には勝てせてくれない。

 身体能力はあまり差がない上に、相手には、『神鳴』とやらが残っている。

 魔法陣をとにかく描かせまくっていた、シュスへと向き直る。


「シュ~ス」

「なんだ?」

「もう、殺っちゃえ☆」

「え? でも、まだルークたちが……」


 リースが微笑むと、シュスは足で、トンと地面を叩いた。





 ルークが柄へと手をかける。


「レドルノフ、本気でいくぞ」

「わかってるよ」

「あはは、せいぜい頑張ってよ」


 三人が構えて、重心を低く低く、信じられないほど低くしていく。

 沈黙が、三人を支配していく。

 その沈黙は、竜人が突然破った。


「あれ?」


 竜人は、何かに気がついたようだった。


「ねぇ、あれ、なに?」


 最初は、気を逸らさせるためのショボい小細工かと思ったが、本当にヒュゥゥゥウ、という音が聞こえてきた。

 ルークとレドルノフが、同時に音がする方へと、向き直る。


「「……うわぁ、マジか……」」


 目に飛び込んできたものを見て、二人は同時に呟いた。

 なにせ、視界に映ったのは、火、雷、氷、風、土などの、色とりどりの魔法の嵐。

 もう、数が多すぎて、全てを見ることができない。

 それほどの数の魔法だった。

 これだけの数の魔法を同時展開できるのは、シュスだけだ。

 だが、彼女は仲間がいるのに魔法を撃ってくるようなやつじゃない。

 なら、犯人は一体誰なのか?

 そんなの、決まっている。



((絶対に、リースだ))



 おそらく、いや絶対、シュスを脅して魔法を撃たせたのだ。

 このままでは、魔法の嵐に呑まれてしまう。

 そう思い至った三人が動き出すのは、早かった。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 レドルノフはなんとか逃れんとするために、走り出した。


「馬鹿ガード!!」


 ルークは、そんな彼の首根っこを掴み、盾にした。


「は!? ルーク、てめ、ふざけんな!!」

「『神鳴』!」


 一人は盾にされ、二人は防御を行う。


「「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 ルークは防御に失敗し、レドルノフは当然助からなかった。

 竜人は、そんな彼らを憐れみの目で見ながら、言った。


「ははは、悪いね。『神鳴』で消せないものなんて……」


『神鳴』と水がぶつかった。



 刹那、『神鳴』が打ち消されてしまった。



「へ?」


 そして、


「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 竜人も魔法の嵐へと呑み込まれてしまった。



 こうして、尊い犠牲のもと、竜人は退治されたのであった。

はい。

やっぱりオチはあります。

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