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リグレットアーミーズ  作者: にがトマト
竜人・魔装編
10/71

一晩ゼロ円生活

今回で十話目よ

記念すべき十話目がギャグ回……いいのだろうか


前回の話

私の友人から「リースは常にペインジ」と言われた。

 リースは切り株に腰かけて、下をうつむいて、絶望しきった声で呟いた。


「……どうしよう」


 ルークたちは国を出る前に、市場で旅支度を整えていた、と思っていたのだが、食料が底を尽きたのだ。


「まさか、シュスがあんなに食べるなんて思わなかった」

「え!? いや一食に、パン五個なんて、普通だろ?」


 それに、何かないかとバッグを漁っていたレドルノフが、作業を中断して半眼で彼女を見ながら言う。


「いや、食いすぎだろ。俺でも一食三個だぞ?」

「う……でも、俺を責める前に、やることがあると思うんだが」


 確かに、その通りだ。

 今やるべきこと、そんなことは言わなくてもその場の全員が理解していた。



 今日の晩御飯を確保する。



 だが、どうやって?

 ルークは歯ぎしりをする。

 これから食料を採集するなんて、めんどくさい。

 なら、今日は何も食べずに我慢をするか?


 否。


 空腹に耐えながら夜を明かすなど、ナンセンスも甚だしい。

 めんどくさい採集を行うか、苦しい空腹に一晩耐えるか。

 そんな思考に、今彼は板挟みになっていうる。

 どうすればいいんだよ、マイケルゥ!?

 リースはため息をついた。


「仕方ないわね。今から全員で食料を確保しに行くわよ」


 ルークが意を決する前に、リースが勝手に決めやがった。


「貴様! こんな真夜中に森をさ迷い歩いて、無事で済むと思っているのか!? この森には、たくさんの獣や、野党が襲ってくる可能性があるのだぞ!」


 ちょっと上官っぽく言ってみると、彼女はめんどくさそうに言ってきた。


「あんたね、この場にいる面子をよく確認してから、もう一度言ってみなさい」


 この一行のメンバー。



 かつて『剣聖』とまで呼ばれた世界最高クラスの剣士。

 たった一人でクーデターを終わらせた、『紅の鋼』と呼ばれている元傭兵。

 その二人を圧倒できる、リグレット王国軍が大将。

 実戦経験を多く積んだ、魔法の天才。



「危険だらけじゃねぇか!?」


 主に獣と野党たちが。


「私たちに危険がないのだから、まったく問題ないのです」


 リースは笑いながら、全員に言った。


「それじゃ、みんなそれぞれ散らばって、食材をかき集めましょうか」





 シュスは一人で歩いていた。


「と言われても、どうすりゃいいんだか」


 軍人であるルークたちはお手の物だろうが、はっきり言って、シュスにその手のサバイバル技能は持ち合わせていない。

 まったくもって、勝手がわからないでいた。


「まぁ、動物見つけて狩りゃいいかな」


 辺りを見回す。

 そうすると、そこそこの広さがある湖に目が止まった。


「釣りでもすれば、魚とれるかな」


 瞬間。



「とったどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」




 魚を(もり)で貫いた男が、水面から飛び出してきた。

 シュスは踵を返して歩き出した。


「俺は何も見ていない。吉本所属のお笑いコンビよ○この片割れなんて見ていない」


 そう言い残して、シュスは湖を早足で立ち去った。





 シュスは湖から離れて、動物を探して歩き回っていた。


「なんでもいいから、動物いないかな~」


 どこを見回しても、木木木木木木木木木木木木木木木木木木木木木。

 木しかない。


「ったく、本当にこの森、動物いるのか?」

 そうボヤいてから、茂みを抜ける。

 そして、目に飛び込んだのは、



 両手をあげて相手に覆いかぶさるようなポーズをしていた、レドルノフと熊。



 なんだか、互いに相撲を取り合っているようにしか見えない。


「…………」


 シュスが絶句していると、レドルノフが彼女の気配に気づいた。


「お、この気配シュスか。悪いが、助けてくれ」


 レドルノフの懇願に、シュスは即答した。

 踵を返して歩き出すという、懇願を無視するという答えを。


「シュゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウス!?」


 レドルノフが彼女の名を呼ぶために、熊に背を向けた。

 野生では、命とりとしか言いようがない愚行。

 熊も当然見逃すはずがなく、


「クマー」


 と、少しだけ可愛らしい鳴き声をあげてレドルノフに襲いかかった。

 レドルノフが熊に押し倒される。

 そして、彼の顔に、熊パンチ! 熊パンチ! 熊パンチ! 熊パンチ! 熊パンチ!


「ごふ! げふ!」


 ぺろぺろと、彼の顔を舐めて味見をする。


「くまー♪」


 どうやら、筋肉はプーさんのお眼鏡にかなったらしい。


「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 食べられるぅううううううううううううううううううううううううううううううううううう!! 物理的に食べられちゃう!! シュス、助けてェ。マジ助けてェ。このままだと食べられちゃう!!」


 助けを求めるレドルノフに、シュスは無視を決め込む。


「うるせぇ。誰もマッチョの凌辱シーンなんざ見たくねぇんだよ」

「いやこれ捕食ゥ!?」

「なぁ、レドルノフ。弱肉強食って知ってるか?」


 そう言い残して、早足で立ち去る。


「え、マジで? 助けてくれないの? いや、マジ助けてェ。ホント助けぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」





 シュスは涙目になっていた。


「もうやだこの森」


 そして、今自分と行動している馬鹿ども。

 木の上で、ガサガサという音が聞こえた。


「ん? もしかして、やっと動物に出会えた?」


 上を見上げて、音の正体を確かめる。

 シュスの目に飛び込んできたのは、



 絶望の表情を浮かべたルークが、蛇に全身締め上げられて下半身から食べられていた姿。



「…………」


 こんな時、どんなリアクションをすればいいのだろう。

 シュスが固まっていると、ルークが彼女の存在に気がついた。


「あ、シュス! 助けてくれ! 俺、このままだと食われる!!」

 ルークが動いたからか、蛇は彼を絞める力を強くした。


「ぐ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」


 ベキバキボキ! という、人間の体からしていけないような音が辺りに響き渡る。

 それにシュスは、踵を返して歩き出すという、先程のレドルノフに対する行動と同じことを行った。


「ちょ、マジ死ぬ! マジ助けてェ! この蛇なんとかしてぇ!」


 シュスは振り返ることをせず、彼にレドルノフと同じことを言った。


「なぁ、弱肉強食って知ってるか?」

「おま、ふざけ……」



 彼の言葉は、ベキバキゴキバキャッ! という音によって遮られた。



「ぎゃァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

アディオス・アミーゴ(さよなら、親友)





 シュスは、ため息をついた。


「俺の仲間ロクなのいねぇ」


 今さらである。

 だが、そんな突っ込みをしてくれる者は、どこにもいない。

 ほとんど自暴自棄になっていると、視界の端に鹿の姿を捉えた。


「お、捕まえるか」


 魔法陣をありえない速度で描き、あっという間に完成。


「エア・バレ…………んん?」


 シュスはあまりに奇怪なものを見たから、思わずそんな声をあげてしまった。


「~♪ ~♪」


 リースが鼻歌を歌いながら、立っていた。

 ナイフで木の幹を削って、食べていた。


「…………」


 もう何度目かわからない絶句をしていると、リースがシュスの存在に気づいた。

 彼女は慌てて木の幹を隠した。


「しゅ、シュス! こ、これは違うわよ!? みんなに隠れてつまみ食いをした訳じゃないからね!?」

(安心しろ。ンなモン食う奴は人類でお前だけだ)


 彼女は一通りあたふたした後、つまみ食いが母親にバレた子供のように、木の幹をこちらに差し出してきた。


「……食べる?」


 もちろん即答した。


「いらねぇ」

「シュス、これは忠告だけど、いつこういうの食べないと生きていけない状況になるか、わからないわよ?」

「そんな人生は絶対やだ」


 木の幹をポイ、と投げ捨ててこちらに歩み寄る。


「シュス、どれくらい食材は集めることができた?」

「全然だよ。この森、動物あんまりいねぇ」


 その言葉を聞いて、リースは微笑みながら言った。


「別に、動物の肉だけが食料じゃないのよ」

「木の幹とかか?」

「…………山菜とか、キノコとかね」


 一瞬、苦虫を噛み潰したような顔をした気がするが、気のせいだ。


「けど、俺そんな知識ないぞ?」

「大丈夫よ。私も一緒に探してあげる」

「えと、信用していいのか?」

「博士号持ってる」

「すげぇ!」





 二人で山菜やらを探していると、


「あはは! いや、やめて、くすぐったははは!」


 リースの服の中に、リスが数匹入り込み、彼女は悶絶していた。


「シュス、ごめん、これとって」

「…………」


 無言でリスを取り出して、ぽいぽいと放り投げる。

 なぜか知らないが、五匹も入っていた。

 ……なんで?


「ああ、ありがとう……ん?」


 彼女が目を向けた先の茂みから、熊に乗ったレドルノフが出てきた。

 どうやら仲良くなったらしい。


「お、お前らか」

「クマー」

「「…………」」


 目の前のメルヘンチックな出来事に、二人は絶句する。


「熊吉、ありがとな~」

「クマー」


 レドルノフは熊から降りて、手を振って見送った。

 そんな彼に、リースがにこにこ笑いながら訊いた。


「ねぇレドルノフ。あの熊、鍋にしない?」

「熊吉は食わせねぇよ!?」


 レドルノフは辺りを見回してから、訊いてきた。


「ルークだけいねぇな。一緒じゃなかったのか?」

「……あ」


 シュスはこの時、思い出した。

 ルークは今頃、蛇の胃袋の中であろうことを。





 レドルノフとリースは、シュスの案内の下、ルークのいた場所にやってきた。

 そこで彼らが見たものは、お腹がふっくらした蛇。


「ああ、手遅れだった」


 シュスは完全に見捨てるモードで呟いた。

 それを聞いて、レドルノフは慌てる。


「なに見捨てようとしてんだ!? 助けるぞ!」


 走り出そうとする彼の腕をリースが掴んだ。


「いえ、何もしないでおきましょう。蛇の捕食なんて、滅多に見られないわよ?」





 なんてことでしょう!

 みなさんご覧ください。

 私、ルーク・パラシアのお家が、先程までいた森林から変わって、蛇のお腹になりました。

 なんてことでしょう!

 先程までの月明かりだけが頼りだった光源も、今では真っ暗ではありませんか!

 なんてことでしょう!

 先程までの寒さが嘘のように、暖かいではありませんか!

 暖房設備は完璧です!

 なんてことでしょう!

 なんだか段々、肌が痛くなってきたではありませんか!

 消化が始まっちゃのです!



「ふざけんなァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」




 三人は互いの収穫を披露しあっていると、突然、

『うおらァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』


 と、くぐもった声が聞こえた。

 刹那、蛇の体がかっ捌かれて、中からルークが出てきた。


「出てこれたァ!」


 そして、すぐに三人の姿を見つけた。


「てめぇら、完全に俺見捨てようとしやがったな!?」


 文句を言うルークに、シュスが言う。


「食われるお前が悪い」


 なんて性根が腐った野郎だ!


「ゲロ以下の臭いがプンプンするぜ!」


 レドルノフが鼻をつまみながら、突き放すように言った。


「言っておくが、お前の全身からまさしくその臭いが発せられてるからな?」

「ぶっ殺すぞクソマッチョ」


 額に青筋を浮かべるルークに、リースは微笑みながら言った。


「さて、蛇も捕まえることができたし、みんなで食べちゃいましょうか」





 ちなみに、四人が集めてきた食材とは、


 蛇一匹。山菜(もう山盛り)。キノコ十数本。猪一匹(マッチョが熊吉と一緒に捕まえた)。


 大量である。

 もう宴ができちゃうぜェ!(嘘です)

 食材を見てから、レドルノフが立ち上がった。


「よし。それじゃ、俺が作るか」

「あら、あんたが作る料理食べるの久しぶりね」

「ふ、俺の料理に酔いな」

「お酒があるなら酔うけど?」

「ンなモンあると思ってんのか?」


 シュスがルークの肩を叩いて、訊いた。


「レドルノフの料理って美味いのか?」

「ん。かなりな」

「どれくらい?」

「そうだな…………三ツ星レストランのシェフが弟子入りしたがるくらい」

「……なんで軍人やってるんだよ」


 レドルノフが、ゴソゴソと自分のリュックを漁る。

 調味料や器具を探しているのだろう。

 そして、突然。


「あれ?」


 と言って、滝と見紛う程の冷背を流し始めた。

 恐る恐る、ルークが訊く。


「どうした?」

「調味料がない」

「「嘘だ!」」


 味のない料理なんて、蛙の糞にも劣る!

 ルークとシュスが絶望する。

 その時だった。


「大丈夫よ。私、この前忍び込んだ貴族の館で調味料くすねてきたから」


 神が舞い降りた。

 忍び込んだ館とは、恐らく彼女が先日暗殺、というか抹殺を行った館のことだろう。

 リースは懐から調味料を取り出していく。


「貴女は神か」

「そうよ。崇めなさい。ひれ伏しなさい。あはは」


 あれ? でもよく考えてみたら、ただの強盗殺人じゃね?


「ま、いっか」




 その後彼らは、レドルノフの作った料理に舌鼓を打つのだった。

ルークたち仕事してない?

大丈夫、次は仕事するから

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