幹部を呼べ その三
とうとう最後の幹部です。
一番厄介なパターンですね・・・・
アマテラスと案内の青年は最後の幹部のもとへと歩いて行た。
「いつまでくっついてんですか・・・」
アマテラスは自分に後ろから抱きついているラー・アトゥムに離れてほしいなあと言う意味合いを込め聞いてみる。
後ろから抱きついているうえに、体の力を抜いてアマテラスに寄りかかっている姿勢なので、アマテラスとしては非常に歩きづらい。
奇妙なことに、ラー・アトゥムは体の力を抜いていながら、アマテラスに抱きついている腕の力だけは非常に強くて、とてもじゃないが女性のアマテラスがふりほどけるようなものではない。
「うう、・・・・重い・・・」
「アマテラス様、何を言っているのですか!?あともう少しです。頑張ってください。」
今気付いたが、この青年そんなに私に優しくない・・・・いやむしろ私に対していささか気が利かないのではないだろうか、言葉づかいとか偶に失礼な時がある。今だって普通は何かをして助けてくれるのが普通ではないのか、仮にも私はレディだぞ・・・・・・・とふらふらとした頭で考えるアマテラス。
そんなアマテラスとは対照的にすたすたと歩く青年。
「ちょっ・・・・はあ、はあ、・・・そんなに早く歩かないで!!」
「いえ、ダメです早くしないと時間に間に合いません。」
いじめであろうか・・・・・
***
「ぜぇーーー、ぜぇーーー・・・・・」
「大丈夫ですか?アマテラス様。」
「はあ、・・・それより、ほんとにいい加減はなしてください・・・」
息を整えたアマテラスは、後ろにへばりついているラー・アトゥムにはっきりと離れてほしいと伝える。こういう相手ときは気を使うよりもはっきり言わないといつまでも離れてくれない可能性が高い。
しばらくすると、腕の力が抜け、アマテラスは解放される。
服装を直しているアマテラスに青年はこう伝える。
「では私は、アトゥム様とここで待っていますのでアマテラス様がここから先はお一人で・・・・・」
「・・・・ちょっ!!なんで?何で一人なの!?・・・・」
失礼だと言っても、この青年は一応今までは付き添ってくれていたし、色々助けてもくれた。しかしなぜここまできてこんなことを言うのだろうか・・・・
「なんでと言われましても。・・・さすがに・・・・・」
「さすがに?・・・・」
「いえなんでも、さあこの角を曲がったところが幹部のお部屋でございますよ。言ってらっしゃいませ。」
そう言うと青年はアマテラスの背中をドンと押す。
その弾みで、アマテラスは、前につんのめってしまった。
「ちょっと!!なにすんです・・・・か」
いきなり背中を押した青年に文句を言おうとするが・・・・・・
先ほどまで青年とラー・アトゥムが、並んで立っていた場所には、しゃがんでいるラー・アトゥムがいるだけだった。
「え?っちょっと!?あの人はどこ行ったんですか!?」
しゃがんでいるラー・アトゥムに急いで聞いてみるが彼は無言で首を横に振るだけ。
まさかあの青年は逃げたのだろうか、こんな厄介なものを残して・・・・
アマテラスはこの状況にちょっと泣きそうになりながらも、一応仕事を続けることに決める。
こういうときに律儀な性格はほんとに邪魔にしかならない。アマテラスは内心で盛大に溜息を吐いた。
「ちょっと私は用事がありますんで、ここで待っててくださいね。絶対動かないでくださいよ?」
そうラー・アトゥムに言うと、こくりと彼はうなずく。
それを確認したアマテラスは、角を曲がって幹部の部屋に向かった。
・・・・・・・・・・・・
角を曲がってすぐに部屋はあったのだが、今までのそれとは明らかに違う存在があることにアマテラスは驚いた。
部屋の扉の前に、双子の様にそっくりな若い神が立っているのだ。
一人は少年。もう一人は少女である。
「何をじろじろ見ている・・・・」
少女が、その容姿には似合わないしゃべり方でアマテラスに聞いてくる。
「へっ!?あっすみません。あのこちらの幹部の方がいると伺ってきたのですが・・・」
「それはきっと主様の事だろう。」
今度は少年の方がアマテラスに答える。
「あの~、貴方達は?」
「「何!?我々を知らないだと!!!」」
びっくりしたような顔でみられても、アマテラスはどんな反応したらいいのか分からず困った顔でこの神たちを見る。
あと何気にそろっているのもなんかやめてほしい。
「まあ、しかたないわね。どこの国かは知らないけどどうせ野蛮な国の神でしょう?」
「ふんっ、主様に使える我々を知らぬとは、・・・」
なんだろうか。かなり上から目線の物言いにいらっとする。
「・・・・いや、ですからあなた達は?・・・・・・」
「貴方の様な野蛮な神に教える名前などありません。」
「まあ、そう言うな。知らない愚かな神に我らの尊さを教えてやるのもよいではないか。」
「まあ!!・・・確かにそれは素晴らしい案ね!!」
勝手に内輪で話が進んでいく様子をアマテラスは呆然としながら見ている。
あまりにもひどすぎはしないだろうか?・・・・
愚かな神って・・・・ちょっと泣きそうなアマテラスである。
「感謝するが良いぞ、愚かな神よ。我々は夸蛾氏の二子。全世界の支配者であり最も尊い神、天帝様に使える神なるものだ。」
「・・・・・・・」
「あら、驚きすぎて声も出ないみたいね。」
実際の所アマテラスは反応に困っていた。
名前を聞いたところで、世界情勢に疎いアマテラスが神の名前など知っているわけがない。
この神たちの言い方だととんでもなくエラそうな神様だが・・・・
「で、その天帝様とか言うのはどこにいるんです?」
「馬鹿か!!貴様は!!」
「へぇっ!?」
いきなり予想だにしない返しが来たことで間抜けな声を出してしまったのはしょうがないだろう。
「さっきの話を聞いていなかったのかしら?貴方の様な野蛮な神がお会いして良い相手ではないのよ、さっさとこの場所から立ち去りなさい。」
「そ・・・そんな・・・」
「貴様の様な野蛮な神が、長居すると空気か淀む。天帝様の神聖な場所からさっさと出て行ってもらおうか。」
「・・・でもっ!!・・・」
アマテラスが言い返そうとすると、夸蛾氏と名乗った神の間に真っ白い虎が出現する。
そしてその虎は躊躇することなく、アマテラスに襲いかかろうとする。
「ちょっ!!きゃあ!!」
紙一重で虎の攻撃をかわすが体勢が崩れてしまう。
「ふんっ、さっさと立ち去れば助かったものを。」
にやりと笑みを浮かべて夸蛾氏がアマテラスを見下ろす。
不意に熱いものがこみ上げてくる。
なんでこんな目に合わなくてはいけないのか、雑用を押し付けられ、やりたくもない仕事をしている自分がなぜこんな初めて会ったような神に罵倒されねばならないのか。
私の事など何も知らないくせに・・・・
アマテラスは、息を小さく吸うと、自分の内にある【気】を放出させる。
「む?なんだ!!」
アマテラスの【気】を感じ取ったのか異変に気付く夸蛾氏。
徐々にその【気】は、まぶしいほどの光になってこの空間を照らし出す。
その光を受け、さっきまで荒々しくアマテラスに襲いかかっていた白い虎は今では床に伏せて目を閉じている。
そんな虎を優しくなでながら、アマテラスは夸蛾氏に言い放つ。
「早くその天帝を呼んできなさい。その人に話がある。悪いけどあなたたちじゃ話にならない。」
夸蛾氏・・・・・
聞いたことない人の方が多いと思います。
「愚公山を移す」という話にチョイ役で出てくる神ですが興味がある方は調べてくだしゃんせ。




