幹部を呼べ その二
残る二人の幹部、その一人の正体が明らかになります。
案内役の青年を追いかけて、部屋に入ったアマテラスだったがそんなに時間をおいたわけでもないのに、青年はもう見えなくなってしまっていた。
この部屋は確か、パリにそびえる、現代を象徴するかのようなジャンボビルの一室のはずなのだが、まるでどこか地下の迷宮のような感じを受ける。
暗く冷たく・・・一度入ったら出られないような。
「やっぱり外で待ってればよかったかな・・・・」
アマテラスは太陽を象徴する女神であるため暗闇に慣れていない。
噛み砕いて言うと、・・・暗所恐怖症なのである。
同業者だと油断していたのだが、甘かったようだ。
どうやら太陽神といっても、この部屋の主はアマテラスが思っているようなものではないのだろう。
「どうしよう、戻りたいけど・・・戻るに戻れないな・・・・」
ちょっと進んだだけで入口から入っていたうっすらとした明かりも届かなくなっていて、もうすでにアマテラスは、方向感覚を失っていた。
というか、この中をあの青年はどうやって移動しているのだろうか。
それともアマテラスと同じように動けないでいるのだろうか。
そんなことを考えていると、ガサリと何かの音がする。
「っ!!」
物音を聞いたアマテラスの心臓が飛び跳ねる。
「・・・もうやだ・・・」
彼女の暗所恐怖症は結構重度なのである・・・・
しばらく、暗闇の中をさまよっていたアマテラスはふと気付く。
くらいなら明るくすればいいのではないかと。
仮にも彼女は太陽神だ。暗闇に光をともすことぐらい朝飯前にできる。
彼女は自分の内に溜めた【気】を放出する。
【気】とは、神が神たるゆえんでもある大事なものであり、これを失うと、神は力を使うことができない。この【気】こそが神そのものでもあると言われるほど重要なものだ。
瞬く間のうちに、暗かった部屋は、アマテラスを中心に照らし出されていく。
「はじめからこうすればよかったんじゃない・・・」
部屋が徐々に明るくなり、ホッと胸をなでおろしたアマテラスの視界に映ったのは、
・・・・・・・・目・・・・・・・・・・・・・
それも、紙一重のようなレベルの近さでだ。
「ぎゃあああああああああああ」
アマテラスの視界は暗転した・・・・・・・・
「大丈・・・です・・・・だ・・ぶ・・・ですか?・・・」
「んっ・・・・んん?・・・」
「大丈夫ですか!?アマテラス様?・・・」
誰かに呼ばれる声が聞こえ、うっすらと目を開ける。
アマテラスの放出した、【気】によって、明るく照らされた部屋の中では、その声の正体を確かめるのは容易だった。
「気が付かれましたか?」
そう、案内役の金髪青年である。
「・・・・どこ行ってたの?・・・」
とりあえずアマテラスは、体を起こし青年に質問する。
「お恥ずかしながら・・・迷っておりました。かすかに明かりが見えたので向かっていましたら、貴方の悲鳴が聞こえたというわけです。」
アマテラスは悲鳴をしてしまったこと、それを聞かれてしまったことをひどく後悔したが、今更である。
「それにしても、よく見つけましたね?」
「へっ?」
青年の言うことがいまいちよく理解できないアマテラスは首を傾げる。
「その方が、ラー・アトゥム様でございます。」
アマテラスは青年の視線をたどる。
どうやらその目的の人物は青年の視線からして、自分の後ろにいるのだろう。
くるりと振り返ると、直後
・・・・・・・・・・・目・・・・・・・・・・
すごい近くで二つの大きな目玉がぎょろりとアマテラスを見返してくる。
アマテラスが気絶したのは言うまでもない。
程なくして、アマテラスが目を覚まし、本題に入る。
無論部屋は、アマテラスの【気】によって、明るい。
「あの・・・幹部の方が・・・呼んでいたのですが?・・・早く会場に集まってほしいと・・・」
ラー・アトゥムと向き合って話しているのだが、アマテラスはさっきから続いている目の恐怖でうまく顔を合わせられないが、さっきからすごい強烈な視線を感じる。
「なななななので、早く会場に行ってください!!」
「アマテラス様、日本語で言ってもこの方にはわかりません!!オーディン様の時のようには・・・・」
オーディン?・・・・初めて聞いた名前だ。
「おーでいん?って誰???」
「オーディン様です。さっきあなたが呼びに行った方ですよ。」
アマテラスは記憶の引き出しの中を引っ張りだす。
しばらく中をあさっていると、優しそうな男性の顔が浮かぶ・・・
「もしかしてさっきの?・・・」
「はい・・・多分あなたが今思い浮かべている方がオーディン様で間違いないでしょう。」
「でもっ・・・じゃあどうしたらいいの?」
「私が通訳して差し上げます。」
そう言うと青年は、幹部の目玉が特徴の男に話しかける。
「・・・・・・・・・・」
しかし返事はない。
またも青年は、幹部の男に話しかけ始める。
アマテラスは、そんな幹部の男の様子を何とはなしに観察する。
決して、することが無くて暇だったというわけではない・・・・たぶん
男と言ってもそんなに年を重ねているようには見えないので、青年と呼ぶべきだろうか。
というか今まであってきた幹部の中ではずいぶん若々しく見える。
腕は細く華奢な体つきで、きらびやかな衣装に身を包んでいる。
まあ実際は神は、実年齢と見た目年齢がずいぶんと違う場合があるので、見た目で判断するのは良くないのだが・・・この神は全くしゃべらないので視覚の情報に頼らざる追えない。
しばらく見ていると、アマテラスの視線に気づいたのか、目だけでこちらを見てくる。
はっきり言って、怖い。
「ダメですね・・・全く話になりません。出直しましょう。」
その幹部の目線に困っていると、青年はあきらめたようにその場を後にしようとする。
どうやら話が通じなかったらしい。
「ちょっ!!・・・まって!!・・・」
いくら自分の力で明るくなったとはいえ、ここに置いてかれるのはなんだか怖い。出口に向かって歩いて行ってしまう青年を追いかけるように、歩き出そうとするアマテラス。
・・・・・・・・・・がしっ
しかし、それは叶わなかった。なんと今まで全く微動だにしていなかった幹部のラー・アトゥムがアマテラスの後ろから抱きついてきたのだ。
しかも結構強く。
「なななななななにしてるんですか・・・・・」
いきなり抱きついてこられて、怒ると言うより、何がしたいのかわからなくて怖い。
あわてるアマテラスに答えることもなく、ラー・アトゥムは抱きついたままだ。
「・・・どうしよう・・・・・・・・」
***
結局アマテラスは、抱きついているラー・アトゥムをそのまんまで部屋を出てきた。
「懐かれたようですね、何がともあれいいことです。このまま会場にお連れしましょう。」
「よくない!!全然良くない!!それにこれは懐かれたとかじゃない!!」
「さあ、残りはあと一人でございます!!」
「むっ!!無視するなー!!!・・・・」
次回最後の幹部です。チョー厄介です。




