YASHIKIのボヤキ
※いでっち51号さん主催「☆STAND UP SPEECH HERO☆」参加作品です。
※マイクは立ちマイク使用です。
「こんばんは、皆もご存知の大物プロデューサーことYASHIKIです。
今夜はこのスピーチヒーローで少し暴れちゃう、みたいな感じだぜ!」
YASHIKIがステージの上で決めポーズをする。
「え?
何でお前がこの「☆STAND UP SPEECH HERO☆」に出場してるんだって?
そりゃあ、確かにオレは世間では大物プロデューサーと言われてるさ。
オレの古いファンならば『HI-GROW』での伝説も知ってるだろうさ。
うむ、自分で言うのもアレだが、
『HI-GROW』時代のオレ、オレ達はマジで輝いていた。
ヴォーカルのTOKI、ギターのPETAとHIDETO、ベースのHEARTH。
そして言うまでもねえ、ドラム&ピアニストの YASHIKI。
自画自賛になるが、あの頃のオレ達は最高にクールだったぜ」
「でも一部のメンバーの脱退や新加入などがあり、
『HI-GROW』も良くも悪くも変わった。
だけどそれは仕方がねえ」
「この世に不滅なものなどないからな!
というように中高年なら、オレの事をよく知っているだろうさ。
まあ若年層には「なんかよく知らないけど、大物プロデューサーらしい」。
というような認知をされてると思う。
だがここでオレはあえて言いたい。
大物プロデューサーのYASHIKIの実態を知る者が一体どれだけ居るのか!?」
YASHIKIが観客席を指さす。
すると観客席が「シーン」と静まりかえる。
そこでYASHIKIが「コホン」と咳払いをする。
「そう、オレの事を大物プロデューサーと呼ぶ奴は多いけど、
ぶっちゃけHI-GROW以外での活動を知らない。
というのが諸君等の忌憚のない意見だろう。
そしてオレ自身思っちゃったよ!
『HI-GROW』の解散と再結成。
その頃には世間やメディアも大いに沸いたが、
それ以外ではちょっとしたスキャンダル以外では、
このオレ――YASHIKIは人々に認知されてない、という事を!」
YASHIKIが再び観客席を指さす。
すると観客席が先程以上に「シーン」と静まりかえった。
「でもでもー、なんというか「何となく凄い人」という勲章が
オレ自身、心地よかったのも事実。
だからオレもあえて「大物プロデューサー」という勲章、称号にぶら下がったよ。
でもな、五十歳過ぎて思ったのよ。
ん? 結局、YASHIKIって『HI-GROW』だけの人。
と思われている世間の印象をここでぶっ壊したい。
それがオレがこの「☆STAND UP SPEECH HERO☆」に参加した本当の理由さ!」
そこでYASHIKIが目を見開き天井をみあげる。
観客は相変わらず黙り込んでいる。
多くの者がどう反応すべきか、困っていた。
だがYASHIKIは観客などお構いなしに喋る、喋り続けた。
「大物プロデューサーが「☆STAND UP SPEECH HERO☆」に参加。
という事自体に疑問を抱く者もたくさん居るだろう。
でもよ、オレはここ数十年自分が背負った称号を投げ捨てて、
これを機に自分の本音をぶちまけたいんだよぉっ!!!」
「まあぶっちゃけ言って、オレは収入面では恵まれている。
主に『HI-GROW』関係や他の印税などな。
そしてこれはオレが数十年に及ぶ音楽活動の結果。
それを捨てる気はさらさらない、というかもっと稼ぎたいかもしれん。
まあ生臭い話はどうでもいいな。
でもオレ自身――この大物プロデューサーの称号と仮面を脱ぎ去りたい。
と言いつつ完全に棄てる事は出来ねえ。
そりゃそうだ、なんだかんだで美味しいポジションだからな。
でもよ、でもよー!」
「ぶっちゃけ後、数十年もすれば、オレも死ぬだろう。
いくら見た目が若くてもオレももう五十過ぎという年齢。
よく言うだろ? 死に神と税金からは逃げられねえと!
あ、納税は米国と日本の二カ国でちゃんとしてますよ?
んな事はどうでもいいな。
兎に角、自分の仮面を脱ぎ捨てて、
オレ――YASHIKIの本当の姿を諸君に知って欲しい!」
観客席が少しどよめく。
だが誰もかもやはり反応に困っている。
だがそれでもYASHIKIは喋る、喋り続ける。
「でも具体的に何が言いたい。
という明確なビジョンがある訳でもねえ。
だけどオレがここ数十年間で溜めたストレスや愚痴をボヤきたいと思う。
んじゃここから容赦のねえ、ぶっちゃけトーク開始っ!」
そしてYASHIKIはマイクを掴んで大声でシャウトする。
「オレ達、『HI-GROW』は結構前に再結成したが、
新加入メンバーのSUGAZOには非常に申し訳ねえが、
オレは今でもHIDETOこと弁財秀人と組んで、
真の『HI-GROW』を再結成したいと思う。
というか実はそのつもりで、
秀人に『HI-GROW』復帰をオファーしたんだ。
だが秀人はオレ等より、『Superiority』を選んだ。
オレはその事が今でも・正直・凄く・不満で・ムカついている!!」
YASHIKIはここで左手を強く強く握りしめた。
「そこはオレだろ? オレ、オレ、オレを選べよ?
と、すんげえ思ったけど、
あえて自分の本音は隠して、大人ぶった態度を取ったよ。
でも内心では秀人を寝取った御堂寺敦司に
スンゲえ嫉妬したぜ、もうぶん殴ってやろうか!
ってぐらいキレてたけど、実は御堂寺にビビってた。
だってアイツなんか怖そうだもん。
でも多分一度でもさしで酒を飲めば、
アイツともきっと仲良くなれると思う。
だから御堂寺敦司、いや御堂寺敦司さん!
一度でいいからオレと一緒に酒飲んでください!
そしてそれが叶えば、オレはアナタにこう願いを申し込みます!」
YASHIKIがマイク前から外れて一回転してマイク前に戻る。
そして大きく息を吸って、マイクに向かって叫んだ。
「たった一度、たった一日で良いから、
弁財秀人をHIDETOに返してください。
オレもHIDETOともう一度ライブしたいんだぁぁぁっ!!!」
予想外の大音声に耳を防ぐ観客も多数いたが、
それ以外の観客はYASHIKIの言葉を小さな拍手で返した。
するとYASHIKIが微笑を浮かべた。
「こんなオレのボヤキを最後まで皆、聞いてくれてありがとう。
まあただ単にオレの愚痴やボヤキを吐き出した感じだけど、
個人的には満足してまっす、いやースッキリしたぁっ!
とりあえずオレからは以上です」
そしてYASHIKIは何回もお客に礼をした。




