第8話 プロット提出
頼れる友人は頼るべきである。
真面目にプロットを作ったわたしは、翌週、久美子の部屋を訪れた。
「いらっしゃい」
「お邪魔しまーす」
久美子の旦那さんは土日も出勤のことが多い。
だから土日休みのわたしでも訪問しやすいのだ。
わたしは室内をキョロキョロ見ながら一応、確認する。
「今日も旦那さんは仕事?」
「そうよ。あの人、今週も土曜日は出勤なの。明日は休みだけどね。休みが不規則だと時間が合わせにくくなっちゃうから、私は働きに出ないほうがいいの。いまは自宅でweb小説書いて稼ぐことができるから、無理しなくても仕事ができて楽だわ」
「それは久美子が才能あるから」
わたしは苦笑を浮かべつつ、お洒落なソファに腰を下ろした。
スッキリしているが所々に配されたグリーンや家具にセンスを感じる久美子の部屋は、暮らしやすさとお洒落さが両立している。
このセンスが反映されているような恋愛小説が、久美子は得意だ。
「うふふ。ありがとう。明日香もweb小説家の仲間入りをするんでしょ?」
わたしはコクリと頷いた。
久美子は、テーブルの上に紅茶とお菓子を置いて、わたしの正面に腰を下ろす。
「相談には乗るから、頑張りましょうね」
「うん。で、これ。まずはプロットを書いてみたんだけど……」
わたしはプロットを書いた可愛らしいノートを久美子に差し出した。
「んー、どれどれ……」
久美子はノートを開き、わたしの書いた字を追っている。
わたしは久美子の出してくれた良い香りの紅茶と美味しい手作りクッキーを味わいつつ、ノートを見てもらってプロットの採点を待っていた。
久美子は眉間にしわを寄せて読んでいたノートをテーブルに置いた。
「うーん、これは美香に見てもらったほうがいいかもね。ちょっと待っていて。今日は美香も家にいるはずだから……」
久美子はササッと美香に繋いでオンライン会議が出来る状態を作ってくれた。
「すごーい。個人でこの環境を作れるなんて。あ、美香。おーい。こんにちはー」
わたしは画面越しに美香へ手を振った。
美香も笑顔を浮かべて手を振り返す。
『こんにちは、明日香。久美子、悪いけど明日香のプロット、コピーして送ってくれない?』
「はーい」
美香はわたしのノートをサクサクとスキャンすると美香のところへと送った。
『んー、プロットはまずまずだけど、これは年表も作ったほうがいいかもね。キャラ表は、一人称は口調とは別で決めていったほうがいいかもよ?』
「そうなの?」
『うん。異世界恋愛ファンタジーは一人称でキャラクターを区別しやすいから、みんな【私】にしちゃうと損しちゃう』
わたしの横で久美子が感心したようにコクコク頷いている。
「異世界ファンタジーだと、そんな小技が使えるのね」
『ええ、そうよ。現代恋愛で『朕は』とか『我は』とか使ったら変だけど、異世界ファンタジーは大丈夫だから』
「あー、そっか」
久美子と美香が画面越しに笑い合っている。
わたしは勝手がわからな過ぎて適当に合わせて笑っていた。
その後も幾つかアドバイスを受けたものの、わたしが一番感じたのは、早急に我が家のネット環境を整えねば、ということだった。




