第5話 何で書く?
「でも異世界恋愛ファンタジーなんて、わたしに書けるかなぁ?」
わたしが首を傾げると、久美子が口を開いた。
「明日香なら書けるわよ。参考にいくつか紹介してあげる。サイトに上がっている物なら、無料で読める作品もあるから」
「あーそれは助かる~」
便利な時代になったものだ。
うんうんと頷きながら、わたしはふと疑問に思って質問をした。
「投稿するのはいいとして。小説を書く時は何で書くの? 携帯電話?」
美香は顎に右手の人差し指を当てて首を傾げた。
「んー、フリック入力でスマホから書く人もいるって聞いたことがあるけど。私は基本的にパソコンで書いてる」
「私もパソコンよ」
美香が悩みつつ答える横で久美子も答えをくれた。
「あと文章入力専用のガジェットなんかもあるわ。明日香は事務だから、パソコン操作は得意でしょ?」
美香に言われて、わたしは頷いた。
「事務という名の何でも屋だから、パソコン操作も得意だよ。でもパソコンは高いよねぇ~」
わたしの言葉に2人は頷いた。
美香が眉間にシワを寄せて言う。
「んー、そうだねぇ。最近、OSがバージョンアップしたでしょ? アレに対応するパソコン買ったら、ボーナスが半分飛んだ」
「ボーナスの半分っ⁉」
わたしは目を剥いて悲鳴のように叫んだ。
「うえ~ん、高ーい。美香の会社のボーナスで半分なら、わたしのボーナスじゃ全額突っ込んでも無理っ! そんなの買えないっ!」
動揺して騒ぐわたしをなだめるように久美子が言う。
「まーとりあえず、スマホで書けば?」
「でもスマホでポチポチしながら書くの大変では?」
わたしはもはや涙目である。
ちょっとお小遣い稼ぎはしたいけど、その先行投資がウン10万とかかるのでは無理だ。
「なら昔ながらのノートに鉛筆で書いておいてから、ポチポチ入力してはどうだろうか?」
美香に言われて、わたしは大きく頷いた。
「うんっ、そうするっ」
わたしが元気に答えるのを聞いて、美香と久美子が顔を後ろに向けて肩を揺らしている。
明らかに笑っているが、なぜだ?
ちょっとわたしには、分かりませんねぇ~。
わたしたちは、小さなカップに残ったエスプレッソの最後の一口をゴクリと呑み干して、その日の食事会はお開きとなったのだった。




