第45話 書くしかないが
雨はしとしと降っている。
梅雨の時期なんてそんなものだ。
梅雨があければ夏が来る。
夏といえば夏休みだ。
だが今年のわたしは、それどころではない。
書いても、書いても、終わらない。
「なんだこれは。わたしってば、どこで計算を間違えた?」
今日は週末だ。
しっかり執筆できる。
だが書いても、書いても、終わりが見えない状況にわたしは疲弊していた。
「平日は残業ナシといっても仕事はあるし。でもわたしは家事をあまりしないというか、最近は免除されていて、ご飯も両親が作ってくれるし。週末は出かけもしないで執筆にあてているはずなのに、なぜ終わらない?」
マジックである。
構成から直しが入ったことで、投稿サイトでの連載も止めている。
しっかり書いているわけだが、読者さんから見たら、わたしは何もしていないも同じだ。
そこまでしているというのに、終わりが見えない。
「まぁ、続刊予定だから。続き書くから。仕方ないといえば仕方ないけど……」
一巻目の校正は確認を終え、返送した。
これについては出版社さん側の確認待ちだ。
二巻目はお直しのお直しというか、土台から組みなおしているような形になっている。
「この調子だと、終わるころには夏休みも終わっているね」
わたしの口から乾いた笑いが漏れた。
もともと夏休みは特に予定がなかったからいい。
推しのグッズは予約済みだ。
公演は見に行く予定はないが、映画は新作が公開されるから見に行きたい。
「その頃までには終わりにしたい。終わらせる。終わらせるのだ……」
タイピングを書くという作業とみなせば、結構書いている。
だが気に入らなくて書き直すと作業はゼロどころかマイナスになるのだ。
不思議だね。
「うーむ。これは……わたし、ドハマりという状況では?」
そんなことを思ったりもしているが、進めるしかない。
デジタル文具を前に唸っているだけならいいが、手も動かしているので指が痛い。
肩も痛いし、目も痛い。
ハッキリ言いたくはないが、腰というか尻も痛い気がする。
気のせいということにすればなかったことになるが、痛み止めは必要だ。
久美子たちに相談したところで先には進まないし、いまだと愚痴しか出ない気がして連絡もとっていない。
久美子には家庭があるし、美香はバリキャリなので忙しい。
そして夏休みには、2人とも予定がある。
久美子は旦那さんと国内旅行へ、美香は海外へ一人旅するらしい。
ちなみに両親は日帰りで近所の入浴施設へ行くとはしゃいでいる。
わたしも誘われたが、とてもそんな時間はとれなさそうだ。
「書かないと。終わらないからなぁ……」
わたしはそぼ降る雨の音を聞きながら、デジタル文具の画面を睨んでうーんと唸っていた。




