第42話 新作快調お仕事快調
お金も入ったし、デジタル文具も手に入れたし、わたしは気分よく新作を書き進めた。
「最近生き生きしてるわねー。彼氏でも出来た?」
同僚に揶揄われるくらいには調子がよい。
もちろんわたしに彼氏はいない。
とてもとても身軽だ。
「ううん。彼氏なんていなーい。ただ快腸なだけ」
「あぁ。彼氏ができるよりも便秘知らずのほうがお肌にもいいもんね」
「いぇ~す」
同僚と軽口を叩きあって軽く笑うと気分よく仕事に取り掛かった。
わたしは小説で専業を目指そうとは思わない。
小説を書いて収入を得たことで、現実を知ったからだ。
あの金額を見たら、毎月の給料の重さをより実感する。
人による、作品によるとはいえ、現実は厳しい。
わたしは今日も何でも屋の事務員として社内を駆け回った。
動けば体調もよくなるし、頭の回りもよくなる。
収入が少なくても残業の少ない職場はいいね。
新作も快調に進められる。
我が社は働きやすいし、キャリアアップのための勉強も推奨されているため、習い事をする人も多い。
働きながら学ぶ人が多いので、夜間学校や通信学校で進学をして、入社時と学歴が変わる人もいる。
同期である佐々木も、入社した時にはわたしと同じ高卒だったはずだが、いつのまにか四年生大学卒になっていたよ。
頭がよくて、要領がよくて、ムカつく。
でもいいもん。
わたしも小説家だもん。
書籍化作家だもん。
新作は快調だ。
執筆のほうはもちろん、読者さんもついてそこそこ読まれている。
読まれているのは気分がいい。
ついでにお小遣いも入ってくる。
いいことづくめだ。
書籍化したものの他人に知られるのはこっばずかしいという複雑な乙女心を抱えたまま、わたしはわたしの仕事に精を出すのだった。




