第32話 小説で確実にお金を得る方法
新作を書いたからといって読まれるとは限らない。
読まれなければお小遣い稼ぎにならない。
わたしは書籍化作業で疲れた脳みそを抱えたまま、久美子たちに泣きついた。
久美子の家で他人の目はなく、今日も旦那さんはいない。
ここは油断しまくって甘えられる場所である。
わたしはピンチを訴えた。
「やばいです。金欠です。ボーナス時期はまだまだ先だし。書籍化作業によりお金が入ってくるのはまだ先です」
「明日香ぁ~? 落ち着いて」
「そうよぉ~、明日香。大丈夫だから」
泣きつかれた美香と久美子は余裕がある。
少なくともわたしからはそう見えた。
「明日香はお仕事辞めたわけじゃないし、実家住まいでしょ? すぐに困るようなことはないじゃない」
「そうよ、明日香。いずれはお金が入ってくるんだし……」
久美子と美香は大人の対応をしてくる。
すまん。
この中ではわたしだけが子どもだ。
「でもぉ~。ストレスで買い物しすぎた……」
しょぼんとするわたしに、久美子たちは苦笑を浮かべた。
「まぁ、大丈夫よ。明日香は小説が書けるわけだし」
「ん、そうそう。小説でお小遣い稼ぎしよう」
久美子も、美香も簡単に言ってくれる。
「でも新作が読まれない……」
わたしは更にしょぼんとした。
そう問題は新作なのだ。
読まれない。
とことん読まれない。
読まれれば稼げて、換金請求した時にどのくらいのタイミングでお金が入ってくるか分かる。
読まれなければお金が入ってこないから、換金できるタイミングがいつになるか分からない。
「えーん。どうしていいか、わからないよー」
「そんなあなたにはコレだ」
美香がパソコン画面をわたしに向かって見せて、投稿サイトのページを開いてみせた。
「そうそう。webにも雑誌に小説を連載するみたいに、掲載時にお金もらえるサイトがあるのよ」
久美子は笑ってパソコン画面を指さした。
「なんと! それは初耳!」
わたしが驚きの声を上げると、美香が噴出した。
「ははは。明日香はスムーズに書籍化までいっちゃったから、この情報は要らないと思ったんだんだけど。必要だったわね」
「そうね。小説を書いてネットで稼ぐといっても、やり方は色々あるのよ」
美香と久美子の説明によると、投稿サイトによっては審査を通ると連載時にお金のもらえるところがあるらしい。
美香が説明する。
「もちろん審査を通らないといけないから、ある程度のクオリティが必要だけど。明日香は書籍化できるくらいの実力があるわけだから、審査は通ると思うのよね」
「そうそう。審査を通って契約が結べたら、条件をクリアすることで稼げるの」
美香は久美子の言葉にうなずきながら、さらに説明を追加する。
「もちろん契約書の内容はしっかり読まないとダメよ? 条件は色々だもの」
「そうよ、明日香。契約先を間違えると、自由に動けなくなったりして怖いんだから」
久美子に脅されて、わたしは「ひぇぇぇぇぇ」と悲鳴を上げた。
美香は冷静に説明を続けた。
「おすすめは作品ごとに契約を結ぶところね。作品ごとに契約を結ぶところだと、最悪、その作品をあきらめたらいいだけだから」
おい、美香。
いまさらっと怖いことを言わなかったか?
ちょっとビビったわたしの反応を無視して、美香は説明を続けた。
「作品ごとだと連載開始時に毎回、契約を結ぶ必要があるけど。まぁ、お金を稼ぐにはそれなりに面倒なこともあるわ。あと入金のタイミングとか、金額の出し方とか、本当にいろいろなのよ。これはどの取引先でも同じことだけど。まぁ、1回契約してみたらわかるわ」
「あら大胆」
「だって何事もやってみないと分からないじゃない? 明日香の場合は私たち経験者が側にいるから、それなりに安心だけど、慎重さは必要よ」
わたしは何を言われているのかよくわからん、と思いつつも、美香の言葉にコクコクとうなずいた。
久美子が説明を付け加える。
「明日香は作品そのものには執着のないタイプだから、web連載の段階で契約するところでもいいかもね。作品に対して執着があって、自分の好きにしたいというのなら、個人で電子書籍を販売するという方法もあるけど」
「自分で売るの? それだと表紙とかどうするの?」
久美子の説明に、わたしは首を傾げた。
「表紙は自分で描いたり、個人で絵師さんに有償依頼したりと色々ね」
「あー、そっちは明日香には難しいかも。絵師さんにお金を払わないといけないから、金欠の時にはキツイ。それに契約のことをキチンとしないといけないから面倒」
久美子の説明を受けて、美香はわたしに合わないと判断した。
「あー、面倒なのはダメだわ」
わたしは嘆いた。
適切な指摘。
さすがは美香。
わたし以上にわたしのことを理解している親友だけのことはある。
久美子は不思議そうな表情を浮かべて口を開いた。
「でも、明日香って絵師さんも好きでしょ? 憧れの絵師さんに有償依頼して貢ぐのも好きそう」
「あ、それは魅力的」
久美子もわたしのことを理解している。
お金さえあれば、そんなことができちゃうんだ。
お金、なんて素晴らしい。
「それはお金があるときにしましょうか、明日香」
ちょっと身を乗り出したわたしに気付いた美香が制止した。
危ない、危ない。
いまは金欠でピンチだった。
まずは稼がなきゃ。
わたしは今ある原稿を読んでもらいながら、適切な売り込み先を見繕ってもらった。




