第29話 事後相談
わたし、高橋明日香は、超がつくお調子者である。
書籍化しませんか? とお誘いを受けたら、流れるように「お願いします」と書いて返信する程度には行動力もある。
そしてとんでもなく後悔するのだ。
後から悔いると書いて後悔。
とても適切な表現だと思う。
最初から冷静に自分の力量を見極め、正しく行動できていれば必要のない概念だ。
だがわたしには必要だ。
とってもとっても必要だ。
必須といってよい。
「わーん、どうしよー。書籍化だって⁉」
その週末。
毎度おなじみの久美子宅には、わたしの悲鳴にも似た声が響いていた。
「おめでとー明日香」
美香は口元の近くで両手を合わせて小さく拍手した。
「うんうん。よかったね、明日香。おめでとう」
久美子はお祝いの言葉と共に、わたしの頭をグリグリ撫でた。
「えーん。出来る気がしなーい」
わたしはメソメソしながら久美子宅のテーブルへと顔を突っ伏した。
「大げさねぇ、明日香は。オッケーのお返事、出したんでしょ?」
「うん」
美香の質問に短く答え、わたしはまたグズグズ言う。
「だってぇ~、書籍だよぉ? しかも紙アリだよ? 久美子が辿り着くのに何年もかかったのに……わたし、ぽっと出だよ?」
「もう、明日香ってば」
久美子が噴き出すと、つられて美香も笑いだした。
「もう我慢してたのにぃ~」
美香は久美子に文句を言いつつもケラケラ笑っている。
「ごめんねぇ~。だって我慢できなくて……」
ケラケラ笑っている2人を、わたしは睨んだ。
「もう、こっちは真剣に悩んでいるのに」
わたしがブツブツ言うと、久美子が目元を拭いながら口を開いた。
「ごめんごめん。でもおかしくて。だって明日香も私たちと同じくらい執筆歴はあるじゃない」
涙が出るほど笑っていたのかオマエは、と思いつつも、わたしはコクリと頷いた。
「心配しなくても出来るわよ、明日香。私たちが出来てるのだから、あなたもできる」
久美子の横で美香もコクコク頷いて同意を示した。
「明日香が分からないことがあったら遠慮なく相談してね。出来るだけ協力するから」
「そうそう。契約のこととか、不安なことはたくさんあるでしょ? その辺のことは経験者として相談に乗れるからね。1人で抱え込むことはないのよ。相談はいつでも受け付けるわ」
「2人ともありがとぉぉぉ」
わたしは泣きながら2人にお礼を言った。
「あ、でも。守秘義務違反になるような事は、私たちにも言っちゃダメよ?」
美香がしっかりと釘を刺す。
わたしはコクコクと頷きながら、その境界線わからねぇー、と思った。




