第2話 昔取った杵柄を再び?
気まずい雰囲気を打ち破るように、前菜が運ばれて来た。
助かった、と思いながら正面に置かれたお洒落で綺麗な食べ物を見る。
「本日の前菜でございます。こちらは……」
給仕の人が、お皿に乗った小さな料理の1つ1つを丁寧に説明してくれるが、わたしにはイマイチ分からない。
こっちはナスを焼いたもので、そっちはグリーンサラダにリンゴが乗っている。
スモークサーモンにペッパーは分かるけど、この赤い粒々は何?
このミニトマトにチーズが挟まっているのは美味しいけど、なぜにこんなことを? 包丁を使う技術のアピール?
などと考えながら説明を聞き流す。
「……では、ごゆっくりお楽しみください」
給仕の人が去っていくのを確認してナイフとフォークを手に取る。
料理はなるべく早く食べたほうが美味しいからね。
わたしはさっそくミニトマトにチーズが挟まった物をナイフで半分に切って上品にいただく。
ん、やっぱり美味しい。
「ホントに明日香は相変わらずよね」
「そうそう」
美香と久美子がこちらを見てコソコソと話している。
感じ悪いぞぉ~。
わたしはちょっと2人を睨んだ。
美香が肩をすくめ、両腕の肘を脇につけながら両手を天に向かって開き、溜息混じりに口を開いた。
「やれば出来る子なのに妙なところで自信がないのよね。明日香も小説を書いたらいいじゃない」
久美子も頷きながら美香に同調する。
「そうよそうよ。私たち、創作仲間じゃないの」
「それはそうだけど……」
わたしは口ごもった。
小説は書いていたが、内容については全く自信がないからだ。
面白がって書いてはいたが、わたしが書いていたものは、どちらかといえばパロディに近い。
「高校卒業後は、同人誌作ったりしたじゃないの」
「ん……部活の延長で書いてたし、そんなに上手くはないから……」
ここまでの話を聞いたわたしたちを知らない人は、高校の時に所属していた部活が文芸部か何かだと思うだろう。
実際には茶道部だ。
しかもわたしはお茶とお茶菓子に惹かれて入部した口なので、腕前はたいしたことがない。
というか、すでにお点前のことなど忘れた。
「あれはあれで面白かったけど、わたしは2人ほど上手に書けないし……」
昔取った杵柄ではあるが、わたしは完全にエンジョイ勢だった。
美香や久美子とは、面構えからして違っていた。
美香や久美子が凛としたシリアス系少女漫画の顔で書いていたのに対し、わたしはギャグ系少年漫画の表情を浮かべてヘラヘラと書いていたのだ。
あれはあれで楽しかったが、使い物になるとは思えない。
わたしがモゴモゴしながら答えると、美香が励ますように言う。
「大丈夫よ。明日香の書く小説、面白いわよ?」
「そうそう。やってみたらいいじゃない。それにweb小説って、お金になるのよ?」
「……え?」
久美子の言葉に、思わずわたしは反応してしまった。
「お金になる?」
「そうよ。実際、私の活動場所ってwebでしょ?」
「そりゃそうだけど。それは久美子が、電子書籍とか、コミカライズとかに使えるレベルの小説を書けるからでしょう? お金にするなら、賞を取ったりとかしないといけないわけだし。わたしの書くものじゃ、そんなの無理」
わたしの言葉に、久美子は首を横に振った。
緩いウエーブのついた長い茶色の髪が揺れる。
「そんなことはないわよ。出版社さんに売れなくても、投稿サイトによってはお金が稼げるの」
「え、そうなの?」
久美子がコクコクと頷いて説明する。
「webの読者さんに読まれればお金がもらえるところもあるから、お小遣い稼ぎに小説を書く人もいるのよ」
「それは……詳しい話を聞かせてもらいましょうか」
わたしはついつい前のめりになって、2人の話に乗っかってしまった。




